第10話 潜る

会社に出勤しているのは水に潜るのに似ている。

少なくとも自分はそうだ。

頑張って息を止めていなければならないし、長くいれば苦しい。

だが、そうしなければ食べてゆけない。

だから毎日、毎週、息を止めて会社に行く。


そして、息苦しさと不条理に耐えた僅かばかりの対価をもらう。

生産性?

クソ喰らえだ。

生産性上げようなどすれば、自分が忙しくなり利益は上に吸われるのは分かっている。

従業員おれらは馬鹿じゃない。

ワンマン零細に大きな賃上げなどあり得ないのだから。


経費で良い飯食ってる上級社員と、予算は変わらず物価が上がっているから、だんだん飯が貧しくなっている下級社員。

社員一丸となって頑張る?

寝言は要らないから。

言われた事しか出来ないって?

自主性など自身の火炙りの薪を焚べるだけだろ?


富める者はより豊かに、貧しき者は搾取される。

資本主義には誤りがある。

まぁ、全てがなくなる共産主義よりはマシだが……。

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