第10話 レベルアップ!ベリーで回復してどんどん行こう




「思ったより威力あったな~」


つらいにゃ! これほどまでに弱体化してしまった我が身が辛いにゃー!」


 初めてのモンスター狩りで初撃破を決め、ちょっと気分が高揚していると俺の耳元で、とある嘆きの声が響いてきた。よしよし。大丈夫だってすぐ強くなるよ。


 俺が思わず良い感じに倒してしまったおかげでゼスのショックが計り知れないようだ。しっかり慰めてあげよう。ぽむぽむ。

 おお~! 頭の毛も柔らかい!


「ウキュー!」


「おう。〈ミズタマ〉もよくやったな」


『水鉄砲』のスキルで攻撃し、引きつけてくれた〈ミズタマ〉のことも忘れてはいない。もちろん褒める。こっちの頭も撫でよう。

 しかし「抱っこー」みたいに両手を挙げてくる動作は可愛すぎて尊い!

 俺は頭を撫でるよりも抱っこを優先した。ピトッと胸にくっついてくるんだけど? 可愛すぎじゃない〈ミズタマ〉?


「ウキュー!」


 喜んでいるみたいです。俺も大満足です!


「さて遅くなっちまったが、〈ミズタマ〉とも契約したし。名前を付けようか」


「ウキュ?」


 名付けだな。モンスターとの契約は召喚した段階で交わされる。

 俺のホルダーの紋章と〈ミズタマ〉には確かなパスのようなものが流れているのを感じる。不思議な感覚だ。

 契約が為されれば、もう〈ミズタマ〉は俺のモンスターだ。他の人が〈ミズタマ〉を召喚しようとしてもできない。


 そうなると、名前を付けてあげるのが〈プレモン〉流だな。なにしろ進化する度に名前種類も変わるので〈16進化〉もするとごっちゃになってしまうのだ。


「う~ん、俺がゲーム時代良く付けていた名なんだが、スイリンでどうだ?」


「ウキュ!」


「お、気に入ってくれたか?」


「ウキュー!」


〈ミズタマ〉改めスイリン。

 スイリンは名をもらったからか胸に頭をこすりつけてぐりぐりしだした。

 よほど嬉しかったようだ。俺も思わずニヤけてしまう。


「よろしくにゃスイリン。我はゼス。ヒイロの〈エース〉だにゃ」


「ウキュ!」


 おっと、名付けをしていたらさっきまで嘆いていたゼスが復活して肩に跳び乗ってきた。

 なかなかメンタル強いな。あとジャンプ力たけぇな。さすが猫。

 ゼスもスイリンをお祝いし、挨拶を交わしていた。

 スイリンも人懐っこい様子で手を挙げて挨拶を返している。和む。


 だがいつまでも和んでいてはいられないようだ。


「あ、それとヒイロ、ドロップが落ちてるが、拾わなくていいのかにゃ?」


 そうだった。忘れちゃいけないことがあったな。


「ドロップは……おお! 〈ベリー〉か! 普段はハズレだけど今は助かる」


「なんにゃそれ?」


 スイリンもピトッとくっついたまま首だけ捻ってカードを覗き込んできた。落ちないようにね?

 そのまま説明する。


「これは回復アイテムにもなる素材カード、〈ベリー〉だな。せっかくだからカードから実体化させてみよう――おお~、なんかこれだけでちょっと感動」


 俺がカードを使うよう念じると、イチゴのような見た目の果実が掌に2つ現れた。見た目は完全なオランダイチゴ系だし、触った感触もイチゴだったので、多分イチゴだろう。


「ほらゼス、お食べ」


「食べ物かにゃ あむ」


 おっとゼスったら、俺の手ごといきましたよ? なんか甘くパクリってされた程度だけど。


「うーむ悪くないにゃ。これは悪くないのにゃ」


 うむ。パクリとされるのも悪くないな。


「甘味の中にほんの少しの酸っぱさが絶妙にマッチ。甘味も強すぎるでもなく弱すぎるでもないちょうど良い塩梅だにゃ。美味しさで我の舌を楽しませてくれるにゃ」


 もぐもぐしながらも猫尻尾がうねうね止まりません。なんか解説してるし、なかなか気に入ったようだ。


「ウキュ!」


 あ、しまった。スイリンも食べたかったみたいだ。一応〈ベリー〉は実体化させると2個になるので1個は余っている。しかしこれは貴重な回復アイテム。スイリンのHPは綺麗なマックスだ。欠片も傷は無い。

 さてどうしよう?


「スイリンこれはHPを15回復する素材アイテムでな。加工してポーションにすることも可能だが、そのまま食べてもHPが低いうちは割と良い感じに回復してくれるんだ。だがスイリンはHPが減ってないから……」


「ウキュ!」


「どうしても食べたいか~。そうか~。よし、それじゃあスイリンにあげよう。頑張ってくれたしな」


「ウキュー!」


 結局折れたのは俺だった。

 こんな至近距離で純粋な瞳で見つめられたら勝てないよ。まあ比較的手に入りやすい〈ベリー〉だし、初戦闘の勝利のお祝いということでスイリンの口に運んで食べさせてあげた。


「ウキュー!!」


 とても美味しかったようだ。1個食べたと思ったら「美味しいー」と言わんばかりに両手をほっぺに合わせてもにゅもにゅしてる。

 あかん、俺も頬が緩みそう。


「HPが回復して良い感じにゃ、確かに良い感じにゃん」


 見ればゼスのHPは19まで回復していた。最大値が20なのでその一歩手前まで回復したことになる。


「おっとそうだ、こっちもチェックしておかないと」


「ん? 何をだにゃ?」


「ホルダーのレベルアップだ」


 俺は右手の甲の紋章から自分のステータスを呼び出した。


 ―――――――――――――

 名前:ヒイロ

 LV:0→1

【戦闘力 4→8】(+8)

【召喚枠 2】

《スキル》:無し

《装 備》:〈カヤの木刀〉

 ―――――――――――――


 ようやくレベルが1上がった。

 とは言っても2体モンスターを倒しただけだけどな。

 LVが上がると、【戦闘力】が伸びる。


 ちなみに右に付いている(+8)は〈カヤの木刀〉の数値だ。

 合計で俺の【戦闘力】は計【16】だな。


「次はゼスだな。後1回モンスターを倒せばゼスもレベルアップするはずだ」


「張り切って探すにゃ!」


「ウキュー!」


 士気が高い! どうやら〈ベリー〉のおかげで2人ともやる気になってくれたらしかった。


 再び移動を始めると、今度は鳥型モンスター〈キョウカラ〉が出てきた。

〈今日から〉じゃないぞ? ちゃんと〈キョウカラ〉ちゃんと呼んであげてほしい。

 真っ白いボディに青みがかった翼。顔は白と黒の模様が入っている。小鳥のカラ類がモデルのモンスターだ。


「キョウカラ! キョウカラ!」


「ええいやかましいにゃ! 突撃にゃー!」


「ウキュー!」


「だらっしゃー!」


 なぜか〈キョウカラ〉を見た瞬間ゼスがシャウト。そのまま体当たりしだしたのでスイリンと俺も続く。

 すると一気に倒してしまった。3対1だと楽勝やん。


「キタにゃー! レベルアップだにゃ!」


「おめおめ~」


「ウッキュキュー!」


 ゼスのステータスを見る。


――――――――

名 前:ゼス

種族名:カァニャ

 LV:0→1

進化数:ゼロ進

契約者:ヒイロ


【HP 20/20→25/25】

【MP 15/15→20/20】

【攻魔力 4→5→6】

【防魔力 2→3】

【素早さ 2】

【器用さ 4→5】

【バリア 2→3】

【SP 0→1→0】


〈スキル〉

『招き運』『ニャー』

――――――――


 レベルが上がったことで見てみると、こんな感じにステータスが伸びていた。

 いいね。

 モンスのSPはLV1上昇に対して1Pしか貰えない。しかし、これは進化時に引き継げるため最終的にはとんでもないSPを手に入れることが可能だ。とはいえ限度はあるんだけどな。

 それはともかく、まずはこのSPを振ろう。


 長所を伸ばすなら、やはり【攻魔力】に振るべきだな。

 目標は〈神猫様〉だ。神猫なら【攻魔力】は高くなくてはいけない。

 ということで速攻でSPを攻魔力へ振る。


「いいにゃいいにゃ! 力が湧いてくるにゃ! 今ならあの植物モンスターにも楽勝のはずにゃ!」


 そりゃレベルアップによって攻魔力が1.5倍に増えたのだ。そりゃ力が湧いてくるだろうさ。


〈白い羽〉の素材ドロップを腰にある支給品のホルダーケースに仕舞うと、また歩き始める。今日中にホルダーLV4にはなっておきたいな~と思いながら。


 それから俺たちは森を歩き周りながら狩りをし。

〈シゲムギ〉を7体、〈キョウカラ〉を5体、〈キーリス〉というシマリス型2体を倒した。

 おかげで俺のホルダーLVは4。

 ゼスはLV4、スイリンもLV4となり、今日は帰還したのだった。




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