第8話 契約受理!〈神猫様〉の報酬が可愛い攻めな件!




「もし願いを叶えてくれるのであれば、我が〈神猫様〉になった暁には、報酬として世界の半分の猫をやるにゃ」


「世界の半分の――猫!?」


 そこは世界の半分じゃないんだ!?

 いや、確かに「世界の半分」だけなら魔王のセリフだもんね。

 でも「世界の半分の猫」は神様のセリフとして果たして正しいのだろうか?


 世界の半分の猫。世界の猫かぁ。世界の猫……世界の猫?

 チラッと〈カァニャ〉を見る。埋もれるくらいの〈カァニャ〉? いや、もっと多いかもしれない。

 ……そんなにいらない、かな?


 もらえても1匹2匹でOKだ。

 だがそれだと報酬としてどうなの?? となるよね。規模的な意味で。

 まず〈カァニャ〉を〈神猫様〉にすることについて、これはぶっちゃけ出来る。

 時間は掛かるけどな。

 予習と称してちょっと拝見した最初の〈16進化〉が〈神猫様〉ルートでよかったぜ。

〈神猫様〉までの道のりは把握出来ているからな。


 なるほど、〈カァニャ〉を〈神猫様〉に出来る者、もしくは〈神猫様〉になる幸運をたぐり寄せるか。

〈神猫様〉自体の能力にそんなのあったんだな。スキルまでは見てなかったんだ。


 しかし、幸運系モンスターというのは凄く良い。

 しかも〈16進化〉の超戦力だ! 実は〈プレモン〉では〈16進化〉の幸運持ちというモンスターはほとんどいないのだ。正直〈カァニャ〉の進化先を〈神猫様〉にすることは賛成だったりする。


 なのでもうちょっと交渉してみようと思う。主に報酬の面について。


「いや、世界の半分も猫はいらないかな」


「にゃに!? 可愛い子もいるにゃよ!?」


 いえ、人間から見たら猫はみんな可愛いに入りますから。


 さすがはプレシャスの名が付くゲームだ。まさか可愛いで落としに来るとは……それでこそ〈プレモン〉の世界だ。

 そんな世界で可愛いを拒否した俺を〈カァニャ〉は信じられないものを見る目で見てきた。


「なんと無欲なやつにゃ。これは幸運をもたらすことも意味が無さそうだにゃ」


「そこ、もう少し詳しく」


「にゃ?」


 なぜか世界の半分の猫を断ったら無欲と思われた。

 いや、普通に欲はあるよ? 幸運をもたらす? そこんところもうちょっと詳しく聞きたいな?


「幸運は幸運にゃ、幸運を引き寄せるのにゃ」


「ふむふむ、それで?」


「以上にゃ」


「いや以上って! なんも情報増えてないぞ!? もっとあるだろほら、モンスターカードがドロップしやすくなるとかさ!?」


「それはホルダーの力だにゃ。我はまだ知らんのにゃ」


 ……あっと、そうだった。

 モンスターカード他、野生のモンスターからカードをドロップさせることが出来るのはホルダーのみ、そしてホルダーの召喚モンスが倒した時のみだ。野生のモンスター同士が戦ったとしてもカードはドロップしないし、ホルダーにまだなっていない人が倒しても同様だ。


〈カァニャ〉は元々〈神猫様〉。野生のモンスターだったらしいのでカードとは無縁だったはずだ。


 とはいえ、カードの中に運気を上昇させるカードもあるため、それを参考にすれば良い。〈ハピネス〉や〈カーバンクル〉などのモンスにはカードのドロップ率が上がる能力を持つものがある。〈カァニャ〉の幸運効果だって可能性はある。


「まあいいか。それで、その幸運の引き寄せるのは何レベで覚えるんだ?」


「1つは覚えてるにゃ。『招き運』がそれに該当するにゃ。ちなみにこれは我が〈神猫様〉だったときに覚えていて唯一消さずに済んだスキルにゃ。我がレベルアップしていけばだんだん力を取り戻していき、さらに強力なスキルを覚えていくはずにゃ」


「マジで!? 『招き運』って〈神猫様〉のスキルなの!? それすげぇアドバンテージだな!?」


「まあ、結構弱体化もしているけどにゃ」


 つまりこの〈カァニャ〉は普通のスキルの他に弱体化した〈神猫様〉のスキルも使えると言っているのだ。貴重な幸運持ちの〈16進化〉に進化するし、是非とも育成していきたい。


「よし決めた。〈カァニャ〉の願い聞き届けることにする」


「ほんとかにゃ!!」


「おう。二言は無い!」


「くぅ! ありがとにゃ! ヒイロは男の中の男にゃ!」


「うおっ」


 俺がOKを出すと掌に乗っていた〈カァニャ〉が頭の上に跳び乗ってきた。

 そのまま尻尾をペチペチしてくる。嬉しいとかありがとうの表現か?


「まあ、それくらい喜んでくれるならやりがいがあるってもんさ」


「ヒイロは良いやつにゃ。報酬はまた何か考えておくにゃ」


 正直幸運と通常スキルを持つ破格も良いところな〈カァニャ〉を〈エース〉で手に入れたんだ。正直これが報酬でも良いくらいだったが、他にくれると言うのなら貰っておこう。

 初期の主人公とは色々と物入りなのだ。


「あ、それと我の名は〈カァニャ〉じゃないにゃ。ゼス・ファンニャ・スティックにゃ。覚えておくにゃ」


 器用に尻尾を操り俺のこめかみをツンツン突きながら言う猫。

 なんかかっこいい名前が飛び出してきたよ。えっと、あれ?


「ゼス、ファンタ?? すまん、何か呼びやすい方を教えてもらえるか?」


「……ゼスでいいにゃ」


「了解」


 すまん。さすがにあんな長い名前1度では覚えられん。……あれ? 2度目だったっけ? まあいい。


「じゃ、よろしくなゼス」


「こちらこそにゃ。そなたが我を〈16進化〉にするその時まで力を貸すにゃ」


「おいおい、それじゃあ目的を達成したら解散するってことだろ? さすがにそれは承諾しかねるぞ?」


「……確かにそうにゃ。そなたは我を支え補助し、未だ人類が成し遂げたことの無い〈16進化〉の頂に我を届かせようとする。さすがにそれが終えた途端さよならは虫が良すぎるというものにゃ。わかったにゃ、人の寿命が終わるなんて短いものにゃ。その間我がそなたを支えてやるにゃ」


「ありがとう、〈カァニャ〉。いや――ゼス。これからよろしくな」


「容易いにゃ。これで契約が強固になったにゃ」


「ああ、だな」


 俺は右手の甲を見てそう言う。

 そこにはキラキラと光るホルダーの紋章が輝いていた。

 これはあれだな。仲良し度が上がった証だな。




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