第6話 スタートダッシュ!召喚枠を増やすマジックカード




〈プレモン〉はカードの交換が醍醐味だ。

 モンスターはキャラで有り、カードでもある。


 何しろ倒すとカードが確定ドロップするのだ。

 捕獲したりテイムする必要はなく、カードはどんどん増えていく。

 そのためカード交換やカードを売ったりすることは、〈プレモン〉では当り前だった。

 むしろ交換や購入しないと手に入らないカードが山ほどあったりする。


 モンスターが全て野生で出てくるわけでは無いのだ。


 というわけで、モンスターカードを手に入れるには必ずしも倒す必要がなかったりする。

 俺は受け取ったばかりの〈ミズタマ〉のカードをキラキラした目で見つめてからクレア先生にお礼を言うと、すぐに行動に移した。


 まず学生たちが向かった方向へ行く。すると、たくさんのコテージが建ち並ぶ、村のようなキャンプ場に到着した。

 俺たち修学希望者がまず資質を試される場所、〈始まりのコロニー〉、通称キャンプ場と呼ばれている場所だ。


 この世界ではこういう場所が世界中至る所にある。〈契約の場〉の近くに簡単な居住地を作ったキャンプ場だ。主に学園入学希望者が利用し、自らの資質を高め、学園入学までに力をつける拠点という位置づけになる。


 つまりはここでモンスをゲット、ホルダーとモンスのレベルを上げて学園の入学試験に合格せよ、というのが最初の流れだ。


「えっと、主人公に宛がわれたコテージは、あれか」


 ここでは寮生活が基本。

 いくつか立ち並んだ見た目同じのコテージ寮だが、そのうちの1つになぜか屋根が青く着色されているコテージがある。あれが主人公が使うコテージだ。

 みんな同じ規格で造られているためユーザーが分かりやすいようにという開発陣の配慮だ。

 うむ。分かりやすい。


「やっぱここは俺の知っている〈プレモン〉の世界なんだな。となると、やっぱりスタートダッシュは必要か」


 見たことのある光景にじんわり感動する。だが、あまりのんきにもしてられない。

〈プレモン〉には学生編と卒業編があり、学生で何を為したかによって進路が大きく変わるというスタイルだった。これは第一部と第二部とも言われており、第二部では環境が変わったことでストーリーで登場する野生のモンスターの種類もがっつり変わるために、学園生活ではどこに行きたいかで最初から選択を決めておいた方がいいんだ。


 基本的に高等部を卒業すれば第二部へ移行だが、これには実は時間制限が設けられている。いや、日数制限かな。

 基本は3年で卒業。初等部で1年、中等部で1年、高等部で1年だ。

 正直リアル換算で見たとき少なくない? と思うが、ホルダーとして目覚めたのが18歳、入学が19歳なんて人も居るために、最高でも22歳で卒業できる構造が作られているらしい。


 まあ、その後まだ学園で勉強しようと思えば出来るらしいのだが、なぜかゲームでは出来なかった。うん、まあ「早く進めてね」という開発陣の気遣いだろう。つまりはそういうことだ。うん。


 というわけで時間制限があるという前提で進めるなら、それなりに考えて行動しなくてはいけない。

 3年後、卒業の進路も含めてな。

 え? 帰る手段は探さないのかって?

 …………さ、探すよ? 見つからなければの話だよ? うん。でも見つからない場合も想定しないといけないしね。これは必要なことなのだよ。うん。


 とはいえどう行動するにも大切なことがある。

 それはカードであり、ホルダーの強さだ。実力があればあるほど選択肢は広がる。


 要は難しいことは考えず、とりあえずレベルを上げよう。ということだな!


「そうなると、まずはあそこだな」


 スタートダッシュとなると、俺は1つ身に覚えがあった。

 それはここに来る前のこと、予習として新しいコンテンツの詳細を見ていたとき、確か〈はじめからニューゲーム〉プレイした人用の〈スタートダッシュカード〉なるものが存在すると書かれていた。

 それは新コンテンツから導入されたもので元々の〈プレモン〉には無かった要素だったが。俺はすでに〈カァニャ〉という新コンテンツのモンスターを手に入れている。


 ということはこの世界は新しいコンテンツが導入された世界ということだ。

 つまり〈スタートダッシュカード〉は存在する。


「〈始原の森〉の奥にあるんだよな確か、はぁ、覚えていて良かったぁ」


はじめからニューゲーム〉プレイする気なんか無かったのに、気になってゲット出来る場所を調べていた俺超ナイス。

 少しストーリーを進めないとゲット出来ない位置にあるためまだ手に入らないが、あれがあれば今後の行動がかなり有利に進むだろう。まさにスタートダッシュだ。


 方針は決まったな。


「ということでまずは部屋だ。お邪魔します」


 自分に宛がわれたコテージに入ると、部屋は4つあった。

 4人まで使えるコテージなのだ。

 もちろん男女別。ここは男子寮である。

 今は俺を合わせて3人の住人が住んでいるはずだが、人の気配がしないので出かけているらしい。

 レベル上げだな。良いことだ。


 俺はその部屋のうち、奥の右にある今は誰も使っていない部屋へと入る。

 そしてベッドの下を確認。


「お! あったあった! マジであった!」


 なぜ男子はベッドの下に物を隠すのか、それは永遠の謎。

 そして出てきたのはもちろんお宝だ。とはいえきっとみんなが思っているものとは違う。


 出てきたのは1枚のカード。

 すぐにそれを確認すると、しっかり『召喚枠チップ』と書かれていた。

 実はこれ、【召喚枠】を+1するマジックカードなのである。


 マジックカードを軽く説明すると、その名前の通り、魔法を使うことの出来るカードのことである。

 アイテムカードが物品だとすればマジックカードは現象と思って相違ない。


 つまりだ、今の俺はホルダーLV0で【召喚枠】は1つだが、このマジックカード『召喚枠チップ』を使えばなんと2体までモンスターを召喚できるようになるということだ!


 なんでこれがこんなところに落ちているのかは分からない。

 だが、ゲームでの拾いものは「特に持ち主はいないので勝手に持っていっていいカード」となっている。

 持ち主がいないのであれば、俺が有効に活用しなくてはならないだろう。


「マジックカード使用――『召喚枠チップ』!」


 発動してみるとカードが光って消え、俺の体が一瞬発光したような感じになった。


 ホルダーになるとなんとなくカードの使い方が分かるようになる。

 俺もなんとなくやり方が分かったのでやってみたが、問題無く使えたようだ。


「おし! ステータスは?」


 モンスとは別にホルダーにもLVとステータスがある。

 それがこちらだ。


 ―――――――――――――

 名前:ヒイロ

 LV:0

【戦闘力:4】

【召喚枠:1→2】

《スキル》:無し

《装 備》:無し

 ―――――――――――――


 これがホルダーとしての俺のステータスだ。

 初期値なのでこんなものである。


 そうホルダーにも一応ステータスが備わっている。

 とはいえモンスターよりもかなり簡易的だな。

 変動する数字が【LV】と【戦闘力】と【召喚枠】しかない。


 LVは文字通り、モンスターを倒し経験値を得ることで上昇するあれだ。


【戦闘力】はホルダーの肉体としての力を意味する。LVによって上昇するほか、装備によって変動するぞ。

 ちなみにHPが無いのはモンスターのバリア任せだからだ。バリアが割れれば無防備な人なんてひとたまりもない。

 またMPも無い。スキル覧があるが、使用にはMPは掛からない仕様だった。その代わりスキル使用後はクールタイムがある。


 そして【召喚枠】は先程言ったとおり、召喚するモンスターの枠である。

 正直、これが一番重要だ。


 これはLV10の倍数で+1ずつ増えていく。

 LV0で召喚枠は【1】。

 LV10で【2】。LV20で【3】だ。最大LV100で【11】である。

 割りと気が遠くなるだろう。そこで3回まで『召喚枠チップ』で自らの召喚枠を増やすことが可能なのである。つまりは最大14体まで召喚できるというわけだな。

 先程躊躇無く使ってしまった『召喚枠チップ』がどれほど有用かがわかるだろう。


 装備は、人間用とモンス用に分かれ、ホルダーが装備できるのは人間用だ。

 そう、実は〈プレモン〉はモンスだけではなく、ホルダーも戦闘に加わることが出来る。

 ただ、ホルダーがやられたらゲームオーバーのシステム上、かなり難易度が高いため戦わせるかはユーザーの好みによるところが大きいけどな。


 よし、これで目的は果たした。


 さぁ、次は狩りに行こう。ホルダーのレベルを上げるのだ!




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