衝突という名の亀
むかしむかし、とある海辺の村に、浦島太郎という青年がおりました。なんとなく海に行こうかなと思って海辺まで行くと、亀をいじめているガキンチョ共がいました。
「おい、やめてくれよ~」
亀はとっても良い声で頭を抱えています。ガキンチョ共はそれでも蹴るのを止めようとせず、高らかに笑っています。
浦島、動きます。
「おいお前ら、亀をいじめたらあかんやろがい!」
「うわ、大人や! 逃げろ!」
ガキンチョ共は浦島の姿を認めると、颯爽と逃げていきました。
「おい、大丈夫か?」
「お前たち~、最高だぜ~!」
亀は浦島の質問を無視すると、突然両手を挙げ、うお~! と叫びました。
「……は?」
浦島が困惑していると、亀は納得したような顔をして笑い出します。
「ああ、そうかそうか! 人間はウミガメの挨拶、知らないもんな~! 教えてやるよ~!」
「え、いや、大丈夫ですけど……」
「そう言うなって!」
亀は浦島をヒレでバンバン叩いてから、「君は、なんていう名前なんだい?」と浦島に訊ねました。
「あ、浦島太郎っていいます……」
「『浦島太郎』か~。なかなか渋い名前じゃないか~」
「はぁ、どうも……」
「じゃあ太郎、俺が、『お前たち、最高だぜ~!』って言ったら、両ヒレをあげて、『うお~!』って言うんだ。いいか、いくぞ~!」
亀は大きく息を吸いました。
「お前たち、最高だぜ~!」
「……」
浦島、挨拶しません。
「おい太郎、挨拶してくれよ~」
「めんどくさっ」
「……え?」
なんと浦島、この亀と話すのが面倒くさくなってしまいました。「ちょっと待って」と言う亀をまるきり無視して、彼は家に帰りましたとさ。
めでたしめでたし。
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