友達
甘夏みかん
第1話
私、こと百花(ももか)はふと図書館の窓から外を見た。あ、一花(いちか)だ。クラスの人たちと楽しそうに話している。何を喋っているんだろう。一花と喋っているうちの一人の男の子。いつもおしゃれなので印象的で覚えている。だけど入学して一度も喋ったことがない。彼だけでなく、どの男の子とも喋ったことがない。百花にとって男の子と喋ることはどこかこわいことで。そんな人たちと普通に話せている一花はすごいなあ、と思う。
夏真っ盛りで、今日も外は暑そうだ。だけど、彼女は日差しを浴びて輝いていた。図書館の中は、冷房が効いていて涼しい。去年の夏も私は図書館にいたな、と思い出す。高校の図書館だけど。大学になっても課題をするために通っている。たまに全然関係のない本を読んでみたり、「寄り道」もするけど。きっと来年もここにいるのだろう。再来年も。他に行くところもない。
一花は私の唯一の友達だ。だけど一花には私以外にも友達がたくさんいる。
「今日あっつー」家にきた一花は床にあぐらをかいて座った。「アイスあるよ。」というと、「一個ちょうだい!」といってくる。「良いよー。」と私はいった。「最近サークルが忙しくてさ、もうすぐ夏合宿もあるし。」と一花。「へー。」と私。忙しい、と言いながらも彼女はどこか楽しそうだ。一花はダンスサークルに入っている。私はサークルというものがよく分からない。ので、彼女からきく話でしかそれを知らない。
春にあった新歓コンパに一緒にいった。ダンスサークルの飲み会は賑やかで。私はノリについていけなくて一次会で離脱。一花は初めての飲み会なのに早速先輩と仲良くなって二次会まで行っていた。
同じ時期に入学して同じスタートをきったのに、今ではもうこんなにも差が開いてしまっている。一花はキラキラ大学生活。私は高校と変わらずひとりで図書館に通う毎日。だけど、一花という友達ができただけでも十分私は幸せだ。そう思う。一花のおかげで知らない世界も知ることができるし。
「まじ最悪。飲み会でまた喧嘩してさー。喧嘩っていうか私が一方的にふっかけられたんだけど。」「前言ってた子?増田さんだっけ。」「そうそう。私が野村くんと話したとかで。文句いってきて。でもしょうがなくない!?だって話しかけてきたのは野村くんなんだから。」野村くんというのは増田さんの彼氏らしい。「それはひどいね。」「どうすれば良かったわけ?!無視するわけにもいかないし」「うんうん。」一花の愚痴をききながら一緒にアイスを食べる。ねえ、一花。あなたには大切なものがたくさんある。宝物が。きっと私のこともたくさんある宝物のうちの一つだとか思ってるんでしょう。もちろん私にだって大切なものはある。だけど・・・。「百花は夏休み何するの?」「私は・・・何もしないかな。」そういうと、一花は大げさに「そっかー!」と返事をした。
たまに思う。彼女にはこの世界がどう見えているんだろうって。きっとカラフルで無限の可能性が見えているのだろう。一日だけでも一花になってみたい。
「もう暗くなってきた。」
「ねえ、百花んち泊まって良い?」
「良いけど。」
「やったー!」
布団に入り、電気を消す。
ふと思う。どうして一花はこんな私と仲良くしてくれるんだろう。
暗闇の中で一花がいう。
「ねえ、百花。ずっと友達でいてね。」
「うん。当たり前じゃん。」
「ふふ」
一花は私の唯一の友達だ。きっとこれからも。
友達 甘夏みかん @na_tsumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます