空想暴論

大和鮎

まぁいいやの精神

私の家の近くには、緑が生い茂る大きな公園がある。


行き詰まると、ここのベンチに座り、暫く目を瞑ることが習慣だ。


最近は、仕事でのミス、人との衝突、なぜか悪い事が積み重なる。


全てを放棄してしまいたい。


そんな時、

「あたしね、プリンセスになるの!」

「俺は、サッカー選手!」

草むらで遊ぶ子供たちの声が聞こえた。


そういえば、私の小さい頃の夢って何だったっけ。


スポーツ選手か。芸能人か。

きっと、いかにも子供が夢見そうなものだっただろうが、思い出せない。


夢に期待を膨らませた時が、私にもあったのだろうか。


当時の私が、もがく今の私をみたらどう思うだろう。哀れむだろうか。


と、小さな私でも想像しようと試みたが、できなかった。


世間知らずの過去の私が、今の私を想像するなんて到底無理である。


現実的すぎるだろうか?


でも今の私でさえ、未来の私を想像できないのに、過去の私ができるわけがないだろう。


つい最近の仕事でのミスだって、1ヶ月も経てば忘れているかもしれないし、その頃にはまた別のことで頭を悩ませているかもしれない。


職場の人間関係だって、生涯その人達と一緒に過ごすわけでもない。いっそ、彼らと親友になる未来が来るかもしれない。


先のことなんて誰にもわからない。


まぁいいや。


結局、今日の私は思考を放棄することにした。


そして、軽快な足取りで帰路につく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

空想暴論 大和鮎 @ayuyamato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ