03・バロンドール

 1956年にフランスのサッカー専門誌『フランス・フットボール』が創設した世界年間最優秀選手に贈られる賞です。


 この賞は、初代受賞者である元イングランド代表のスタンリー・マシューズがその輝かしい実績と裏腹にタイトルに恵まれなかったことから、マシューズの功績を称えるために作られたのがきっかけであると言われています。

 設立当初はヨーロッパ国籍の選手のみが選考対象でした。

 1995年からはヨーロッパのリーグでプレーする選手なら国籍は関係なくなり、2007年から全世界のリーグに受賞対象が拡大します。

『Ballon d'Or』はフランス語で『黄金の球』という意味で、受賞者には金色のサッカーボールを模したトロフィーが贈られます。


 初代受賞者・マシューズはその実力と人気の割にはタイトルに恵まれませんでした。

 ときのイングランド代表のセンターフォワードはこう言いました。


「センタリングをあげるのは、マシューズでないと駄目だ!」


 なぜなら、当時のボールは固く、ヘディングをするとボールの縫い目がそのまま頭に残ってしまう。

 マシューズはその縫い目が頭に行かないようにセンタリングをあげてくれる、と。


 マシューズのライバルが現れます。

 トム・フィニー。

 マシューズと同じ右ウイングです。

 どちらがイングランド代表の右ウイングを務めるか、議論になります。

 結果として、職人的なマシューズが右ウイングに残り、左でも同じようにこなせるフィニーが左ウイングへ回ることとなりました。


 マシューズは最終的に50歳まで現役を続け、騎士ナイトの称号『サー』を、サッカー界で初めて受け取ることとなります。


 一方で、現在のイングランド自体ではそれほど知名度がなく、プレミアリーグのゴールデン・シューのほうが話題になるそうです。

 2001年に受賞したマイケル・オーウェンも、受賞するまでその存在を知らなかったと言われています。




 2010年にバロンドールは『FIFAバロンドール』としてリニューアルします。

 それと同時に、それまで記者しか投票資格がなかったのに、各国の代表チームのキャプテンと監督にも投票権が与えられます。


 バロンドールは変質しました。


 2010年には、国内リーグ、国内カップ、ヨーロッパ・チャンピオンズリーグの三冠を獲得し、ワールドカップでも準優勝したオランダ代表、ウェズレイ・スナイデルが本命視されていましたが、リオネル・メッシが受賞します。

 スペイン代表では、メッシのバルセロナでのチームメートであるシャビ、イニエスタがワールドカップ優勝しているにも関わらず、です。

 実際に、今までの記者投票の結果だけでは、スナイデルがバロンドールを獲得していました。


 2013年には当時大活躍していたフランスのフランク・リベリーが受賞を逃し、クリスティアーノ・ロナウドが獲得します。

「まだ、投票していないものが多い」と、投票期間が延びたのです。

 当時、ロナウドが所属していたレアル・マドリーのロビー活動の結果と言われています。


 バロンドールは一種の人気投票と化してしまいました。

 メッシの7回も、クリスティアーノ・ロナウドの5回も異常ですが、そのためと言われています。

 2016年にFIFAとフランス・フットボールはパートナーシップを解消し、また以前のとおりに戻りました。




 サッカーをよくご覧になっている方は知ってらしゃると思いますが『バロンドールの呪い』というものがあります。

 ワールドカップ前年にバロンドール受賞者が所属している国は、優勝できないというジンクスです。

 これはただの一回も破られたことはありません。


 2021年の受賞者、いわゆる『バロンドーラー』はリオネル・メッシ。

 2022年のカタールワールドカップで著名な予想者がアルゼンチンの優勝を100%としました。

 それが、どうなるか。


 メッシ選手の最後となるであろう今回、アルゼンチンがどうなるか、目が離せません。

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