魔法少女の美男悪役にあこがれて本当になった元女児(低音ヒキニート)

霜月二十三

二人が血のつながった実のきょうだいだと知るのは、もう少し先の話。参加用

 女の子は誰でも魔法少女になれる。そんな言葉を聞いたのはいつだったか。

 少なくとも、最初にその言葉が出た当時でないことだけは確かと、リリカは記憶してる。

 あの頃のリリカに、名前と体と制服以外で女の子を名乗れる要素はなかったし、女の子の自覚すら無、多めに見てミリ単位に等しかったろうし。


 じゃなきゃ、今こうして一人の魔法少女の前に美男悪役として立ってないだろう。

 人が、白馬の王子様だとか、オタクに優しいギャルだとかを夢見るように、リリカもクソな現状――本人談――を変えてくれる存在を夢見てた。

 さすがに魔法少女の敵側妖精とは、物心ついてから今日までオタクやってるリリカでも、まあまあ想定外ではあったけど、そこはそれ。



 今、リリカ――否、ここからは本名ではなく、悪役ヴィランネームたるキルシュと呼ぼう――もといキルシュが対峙している魔法少女の名前は、ライミー。

 ライムの如き濃いめの緑の髪と、髪より淡い色の衣装をまとった魔法少女。

 そんなライミーを、真上から見たとき、どんな姿勢でいるのかというと、文字で例えるならXが近い。


 そう、X。両腕はV字状で、両脚もキルシュがいる正面から見ればMだが上からならほぼV。よってX。

 ライミーの屈辱的な表情をよそに、キルシュはライミーのM字開脚に興奮と尊みを覚えていた。


 キルシュことリリカは、童帝、否、童貞処女ながら、ふと思い立って子宮頸がん検診を受けたことがある。

 それで受けてみての感想は、「何もはいてないM字開脚って尊い」。

 同性の医者や看護師の前としても、少し気恥ずかしくなるところを、堂々と見せてくれる。

 それを尊いと言わず何と言うのか――まあ、今、本人の同意なく脚を広げさせてるのに尊いなんて、とんでもない話だと多少思う良心も一応あるが――。


 それはそれとして、と内心呟きながら、ライミーの旧式ドロワーズから覗く女の本懐を前に、口を開けば文字通り垂涎しかねないキルシュ。

 それを一旦飲み込み、ライミーの下の口にこう語りかける。

「どっちがいいかい? 上の口から秘密を吐くのと、下の口からよだれ垂らすの。僕はどちらでも構わないけど……吐くなら早めがおすすめだよ?」

 さらにそこに、ふぅ~とゆっくり温かい息を吹きかけ、ふふっと呼気たっぷりに笑いかけるキルシュ。


 二人が血のつながった実の姉弟もとい姉妹きょうだいだと知るのは、もう少し先の話。

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