年下幼馴染は同級生 ~君の笑顔に溺れてる~
@tumarun
第1話 モーニングコール
髪を編み込んでいると、ドレッサーにおいてあるスマホに着信があった。よく知る人なので
ポチッ。
「はい、琴守です。おはようございます。先生」
「悪いな琴守。新学期の朝一番から、連絡してしまって」
声の主は私の通う高校のクラス担任の千里先生からだ。
「なにか、ありましたか?」
長いようで短かった長期の休みも終わり、新学期が始まる。
今は,久しぶりに着る制服の袖を通して、楽しかったお休みへのノスタルジーと新しく始まる学校生活への期待に浸っていたのですね。
「いやあね、配布物が沢山あってな。これがなかなかで収集がつかなくなりそうなんだ。手伝ってもらえんか?」
なんとなく、机の上に幾つもの紙の山が連なっていて、呆然としている先生のお姿が目に浮かぶ。
クラス委員を仰せつかっている身としては、否はないのだけれど、ないのだけれどねぇ。私は,そっと嘆息する。
「分かりました。早めに支度をして行きますね」
「いやあ、助かる。恩にきるよ」
プツッ
通話が切れた。もう一度、嘆息をしてから、スマホを操作、画面の'よく使うもの'から先頭を選び、相手をコールする。
「はい……」
あっ! すぐに通話にしてくれた。
「お兄ぃ! ごめん! 一緒にいけなくなったぁ。先生に呼ばれたよぉ」
おもわす、相手に泣きを入れてしまった。
「どっ、どうしたんだ! 美鳥。何があったの」
「あのね、先生がね。グスン」
折角、お兄ぃと一緒に学校へ行こうと思ったのに、
「先生って、千里先生がか?」
「そう」
なんか、上手くいかないな。
「先生がどうしたって?」
お兄ぃが心配そうに聞いてきてくれる。気をかけてくれるのがわかって、モヤモヤも晴れてくるのね、
「なんか、朝の配布物が沢山あるから手伝ってくれっていうの」
お兄ぃの雰囲気から緊張が解けるのがわかった。
「先生も大変だね。新学期だからか。俺も手伝ってやりたいけど、まだ寝起きなんだよ。今から用意しても間に合うかな」
「もしかして、寝ているところを起こしちゃったですか?」
「大丈夫。目が覚めて、暫くしてから美鳥から電話きたから」
「よかったあ。でも,お兄ぃ、以外と遅くまで寝ているんだ。私は、もう着替え終わってるよ」
ふふっ、いずれは '起きて♡'って起こしてあげるからね。
今,話をしているのは、風見一孝さん。えへへ。彼氏です。2歳年上だけど、同級生なんだよ。少し前まではお隣さんだったの。私がまだ、保育園の年少組の頃からのお付き合いというか面倒見ててくれたの。
だから
'お兄ぃ'
何かにつけて、一緒にいてくれた大切な人。
それが2年前に大怪我をして治療のために、どこかへ引っ越してしまった。お別れだってできなかったんだよ。寂しいなんてものじゃなかったの。
でも、怪我をする少し前にお兄ぃに言われたんだ。'いい女になれ'って。だから私は、その言葉だけを頼りに頑張ったんだ。
そうして2年間経ち、高校へ進学したら………、彼がいた。
入学式早々に、休んだ生徒がいてプリントを届けたら、モニター越しにだけど、そこに彼がいた。驚きと戸惑いと喜びのごっちゃ煮の中、再会できたんだ。
そこから色々とあって、彼氏彼女のお付き合いをすることになりました。
「偶々だよ。偶々! いつもはもっと早く起きてるって」
ふふっ、なんか慌ててる。
「美鳥の制服姿を久しぶりに見られるかと思ったら寝られなくてなぁ」
ぼっ
それを聞いて私の頬が熱くなるの。
「私も早く会いたかったよぅ」
「まっ、しょうがない、お勤め頑張れ」
「はぁい」
通話を切って待受画面になっているスマホに
♡
誰がが見ているわけではないけどキョロキョロと左右を見てしまいます。
そうして髪の編み込みを終わり、ダイニングへ降りていく。
「あれえ,美鳥ちゃん。頬が赤いけど何かあった? 熱?」
キッチンカウンターにいるママから,早速呼び止められる。
「ううん。大丈夫! 熱なんてないよ」
「そう………。ハハァン! 朝から一孝くんと、いい話してたな?」
したり顔でママが話をしてきた。なかなか鋭いな。
「もう、ママったら! 朝、先生から手伝いを頼まれて、ちょっと愚痴を聞いてもらってたの。一緒に行こうかとおもってたのにって」
「そうだったんだ。朝から♡コールでもしてるのかなって勘ぐっちゃって」
「ママ!」
そうか、それで朝は起こしてあげれば良いんだ。早速,明日からやってみよう。
「なら、美鳥ちゃん。車で送ってあげようか?」
「いいの?」
渡りに船とは,このことなんだね。そうしてママに学校の正門近くまで車で送ってもらいました。
「ありがとう。ママ、大好き!」
「どういたしまして」
帰っていく車を見送った後!正門に入り昇降口へ。
朝の早い時間のせいでしょうか、人の流れが疎です。やはり、学校も,まだ始まったばかり余程のことがない限り,早朝から来るなんてないはずなんですね。
そのよっぽどな事が起きたのが先生で,巻き込まれたのが私ということになります。
「琴守,よく来てくれた。恩に着るよ。もうどうして良いかわからなくなってな。本当に助かるよ」
案の定,途方にくれている先生が職員室にいました。
「じゃあ,サクサクやっていきましょう。まずは?」
「早速だね,流石だね。このプリントと,これを重ねてステップラーで止めるんだ。それを人数分」
「わかりました」
そして作業を始めていく………
ふう
一通りの作業をいくつか終えた。その中から数種類の束を持って,1人先に教室へ向かう。
「ありがとうな,流石に琴守だね」
「お世辞を言っても何も出ませんよ」
先生の笑い声に押されて職員室を出る。
廊下を進み,教室に入ると,数人のクラスメイトが,すでに登校していた。今までは,わたしより早く来ている人たちだったりする。
「「おはよう」」
と挨拶を交わしていく。
持ってきたプリントを教卓に置いて,自分の席に向かったのだけれど,クラスメイトで私の後ろの席に座る歩美がまだ来ていなかった。いつも私と同じ時間帯に来るということは,来るまでもう少しということなんだね。
久しぶりに自分お席に座る。ひとり寂しくも教室の前にあるボードを見ると,学校が始まったなって実感が湧いて来る。
つっ
先ほどまでしていた作業のせいで肩か凝り固まって,痛みのシグナルを発信してきた。そんな肩を解そうと手を組んで頭上へとグゥーと腕を伸ばしていく。
?
確かに私は教室の前の壁を見ているはず何だけれど,ブロンドよりも淡い色の亜麻色の髪を背中に伸ばした女のこが頭上に手を伸ばしている姿もわかるんだ。
この姿は私だ。なんで自分の背中が見えるのだろう。
でも,この感じも懐かしい。あいつと言うのも烏滸がましい彼奴が私を見ているんだ。
しまった,休みの間に彼奴のことなんかすっかりと忘れていたっけ。
振り返るなんてしてあげない。見えるのは私の顔をデフォルメしたフィギュアの彼奴と驚いて目を見開いている私の顔だろう。想像できるからしてあげない。
視線にじっとりとしたものまで感じるから尚更だね。そうして懊悩していると,すぐ側から,
「美鳥,おはよう。珍しく早いね」
ちょっとぶりだけど懐かしい声が聞こえたから振り返り,
「歩美ぃ………」
でも言葉が続かない。だって,だって彼女の,
「髪型を変えたんだ?]
ワンレンショートの綺麗な子が私を見つめていたんだ。
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