神に与する者たち
四之宮依縁
神に与する者
プロローグ
今まで、本当に辛いことばかりだった。
何度も死のうと思った。
でも――死ねなかった。
それを、他でもない自分自身が許さなかったからだ。
地に伏せたまま、朦朧とする視界を前へ向ける。
「やっとだ――待ちくたびれた――ようやくだ――!」
混沌とした空間の中、遠くで男が頭に手を当て、歓喜の声を上げている。
視線を隣に倒れる黒髪の女性へ移した。
――嫌な役を押し付けるようでごめん。
自然と涙がこぼれ落ちる。
女性は苦しげな呼吸を繰り返しながらも、決して目を逸らさずにこちらを見つめ、震える手を差し出していた。
その手に触れる。冷たいが、まだしっかりと力を宿しているその手を、強く握りしめた。
「終わりだ――君は本当によく頑張ったよ。――私のためにね……!」
男の醜悪なまでの顔が、喜悦に歪む。言葉の端々には、長年抑えきれなかった感情が滲み出ていた。
終わり――じゃねぇよ――これまでのことも全部、無駄になるわけじゃない――
その悲しそうな瞳を向ける女性に、微かに笑みを返す。
だから――
「お疲れ様。ゆっくりと、お休み――」
男はそう言いながら、とある名前を口にして、空を裂くように横へ手を振り払った――
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