第7話 天使様とお勉強

本日の授業も終わりいつも通り部活に行くものや帰宅するものが現れ始めている。教室から生徒が居なくなるまでにはまだ暫くかかりそうだなと思った歩は、自販機へ飲み物を買いに行くことにした。廊下にでてみると部活の先輩と立ち話しているものや、他のクラスへ赴き恋人と一緒に帰るためなのか、教室の前でホームルームが終わるのを待っているものなどもいた


「青春してんなぁ」


ゲームばかりして灰色の人生をおくってきた歩からは眩しすぎる光景が廊下には広がっていたが、もう見慣れた光景からなのかあまり羨ましいという感情はわかなかった


無事ジュースを買えた歩は教室に戻ると、窓際で髪をなびかせ待っている天使様がいた


「清水先生、今日からお世話になります。あとこれジュース」


「ふふっ、今日から試験対策頑張りましょうね。ジュースもわざわざありがとうございます」


「おう」


わざわざ席を立ち感謝の意を込め頭を下げてくる。ほんと律儀な子だ


「それじゃあ何からやりましょうか、星川くんどの科目が一番苦手ですか?」


「圧倒的に数学だな、訳わからん数字の羅列にしか見えん。よくみんなあんなの解けるよなぁ」


数学が得意な人もそうなのだが、これを発見証明した過去の偉人達の存在に同じ人間かと疑ってしまうばかりだ


「大丈夫ですよ、基本的な解き方さえ覚えてしまえばあとはそれの応用ですので、星川くんでも解けるよう教えて差し上げますから安心してください」


「清水さん教えるの上手そうだしそこは心配してないよ」


「期待に応えられるように頑張ります」


さぁテスト範囲をやりますよ、わからない所があれば聞いてください!やる気に満ちた彼女はいつもより生き生きしながら教科書とノートを広げているので、歩も微笑ましい気持ちになりながら勉強の準備をすることにした


勉強を始めて五分、歩は早速壁にぶち当たった


「ここ分からないんだけど」


「どれですか?あーこの問題はですねここに書いてある公式を使えば簡単に解けますよ」


教科書をのぞき込むように近づいてきた彼女からは僅かに甘い香りがした (近いしなんかいい匂いがする…)


「どうしました?」


歩が微妙に距離をとったことに気づいてか彼女は首を傾げキョトンとしている


「なんでもないよ、本当だすんなり解けた」


「そのための公式ですから、公式さえ覚えてしまえば大抵の問題は解けますので星川くんはとりあえず公式を覚えるところからですね」


「わかった」


さすが天使様。わからない問題の解説だけじゃなくどこが歩の弱点なのかまで見抜いていた


「明日テスト範囲のものだけですが公式をまとめたノート作ってきますね」


「そこまではさすがに申し訳ないよ」


「遠慮しなくても大丈夫ですよ、私がしたくてしてるんですから」


放課後勉強を見てもらえるだけではなく、プライベートの時間を削ってまで歩のためになるものを作ってくれるというのだ。流石にそこまでしてくれるとは思っていなかったので歩も動揺こそしたが、それならとお礼も兼ねて提案してみることにした


「ありがとう、じゃあ帰りになにか奢るよ」


「え?」


「コンビニで買い食いとかしたことない?」


「はい、というか奢らなくても大丈夫ですよ。見返りを求めてるとかではないので」


なぜそういう思考になるのだ。歩はただのお礼のつもりだったので見返りなんて考え方をされては困ってしまう


「勉強見てくれてるし、あと友達と買い食いして帰るのくらい別に普通だろ」


「はい」


天使様はどこか落ち着かない様子だった。やっぱり女の子を買い食いとかに誘うのは良くなかったか、体型とか気にしてる子もいるしな


「もしかして買い食いとか嫌だった?」


「い、いえ!そんなことないです!ただ少し驚いただけで。星川くんと帰りに遊べるのは楽しみです」


買い食いを遊びと捉えるのは少し違う気がしたが、彼女が嬉しそうに微笑んでいるので言わないでおいた


「そういうことでしたら私も本気でお勉強の手助けさせてもらいますね」


「今でももう十分すぎるよ」


そう言い歩が微笑むと、そうですか?と若干不服そうにこちらを見つめてくる


それから二時間ほど勉強していたが、教室を閉める時間がきてしまったので今日の天使様との勉強会は終わることになった


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