第15話 妖怪筋肉お化け


 「寝付けんのか?」

 「おっ、爺さん。別に…1日くらい寝なくても問題ないってだけ」

 「そうか…ほれ、夜は冷えるスープを持ってきた」

 「いいねぇ、サンキュー」



 蛇肉の出汁たっぷりのスープ、う~ん!

 塩味だけで十分うめぇなぁ。



 「隣に座っても良いかのぅ?」

 「どうぞお好きに」




 ぴゃぁぁ、おいぢぃ。




 「………………。」

 「…なんだよ」

 「エリシアは…どうじゃった?」




 ふ~ん……まぁ、気になるよね。




 「びーびー泣いて大変だったんだぜ?」

 「そうか、そうか…泣いたか」

 「……なんでちょっと嬉しそうなの?」



 爺さんは、ほっとした様子で自分のスープを飲む。




 「……エリシアは昔から泣き虫じゃ。何かあれば直ぐ儂の脚に引っ付いておった」

 「ははっ、想像できる」

 「じゃがの…エリシアが泣くのは家族か親しき者の前だけじゃ」

 「ほぇ〜じゃあ俺も親しき者とやらになったのかな」

 「儂からすれば不本意じゃがな」




 なんだそれ、まぁ…別に悪い気分じゃないかな。

 



 「エリシアから聞いたぜ、国のお姫様の為に来たんだって」

 「そうじゃ…そして、メアリ様が倒れてからエリシアは泣かなくなった」

 「まぁ…幼馴染みだったんだろ?仕方ねぇよ、泣いてる暇も惜しかったんだろ」

 「しかしのぅ…儂には見てられんかった。まるで自分を押し殺してるようでな」




 ふ~ん、あっ、へ〜。




 「そこまで分かってんなら自分で慰めに行けよ。俺に行かせないでよぅ」

 「……で、出来る訳なかろう!?エリシアが泣いたらどうするんじゃ!」

 「あっそ、孫馬鹿な爺さんには無理か」




 別に怒ってる訳じゃ無いけどさぁ〜なんか腑に落ちないよね。

 



 「そもそも何でエリシアが隊長やってんの?」

 「……エリシアは騎士の家系の生まれじゃ、当然…家の事情や世間体というものがある」

 「うわ、面倒臭ぇ…」


 

 エリシアも大変だねぇ…。




 「ほら、爺さんも聞きたいことは聞いただろ。傷治しても体力は戻らねぇからさっさと寝ろ」

 「そうかの?では、お言葉に甘えて少し横にならせてもらうかのぅ」

 「うぃ、おやすみ爺さん」

 「うむ、ヨシトも余り無理をせぬように」

















 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





 そこから普通に夜が明ける。




 「おはよう諸君!もう一度言おう、おはよう諸君!」

 「おはようございます……ふぁ〜…ヨシトしゃん…」

 「うむ!良い挨拶だメルティ、褒美に目を覚まさせてやる」

 「ふぇ?」



 はい、魔法で水を出します。




 「アクル水よ

 「わっぷ!?」




 寝惚けてるメルティの顔に冷たい水をぶっかける。




 「ひゃぁぁぁぁ!?ちゅめたぃぃぃぃ!!?」 

 「あっはっは、目を覚まさんかい!」

 「うぅ…嫌な目覚めですぅ…」




 うむ、いい朝だ…昇り始めた太陽が眩しいぜ。

 転生して最初の朝日は格別だな!




 「おはようございます…」

 「おう!おはよう!エリシアも目覚めの一発どうだ?」

 「わ、私は遠慮しておきます!?……随分、元気ですねヨシト殿」




 お?そうかぁ…?

 元気っちゃ元気だな!

 つーかいつも元気だぞ!




 「あれ?爺さんは…」

 「モゴルは向こうで出発の準備を始めています」

 「あっそ、で…これからの予定は?」

 「え…?あ、はい。もう少し奥に進もうかと」

 「……奥にって、ちなみにさ女神の涙とやらは何処に生えてるか知ってんの?」

 「…………何処に生えてるかは…知りません」




 あちゃー目的地もなく彷徨ってんのかよ。

 もうそれ遭難と変わらなくね?

 あと……エリシア?



 「なんで顔合わせてくれないの?」

 「………あ、合わせてます」

 「いや、ガッツリ目線逸らしてるよね?」

 「……してません」




 ん〜俺なんかしたっけ?

 昨日の話は確かにエリシアにとっては嫌な話だったと思うけど……。

 エリシアの様子的に怒ってるとか嫌悪してる感じじゃ無いし……。




 う~ん…他になんか………………お?




 「あ~ごめんごめん、着替がっつり見ちゃったもんな!」

 「あ、あ、いゃ…その…!?」

 「大丈夫!ちゃんと魅力的だったぞ!」



 俺としたことが…やれやれ…。

 昨日、裸を見られたら相手に普通に接するなんて難しいに決まってるじゃないか。




 あっはっは!




 「あっはっは!」

 「なんの話かのぅ……ヨシトよ?」

 「はっはっ……ん"!?」 

 「儂も最近耳が遠くなったかの…なにやらエリシアの着替えがどうたらと聞こえたんじゃが?詳しく聞かせて欲しいのぅ」



 恐らく朝食を持って来てくれた爺さん。

 それが今は身体中の筋肉がはち切ればかりに膨張してる…。

 待て待て…まだ焦る段階じゃない。



 エリシア、分かってるな!?

 ここは上手いこと話を合わせてぇ……およ?




 「……………きゅ〜」



 

 エリシアは顔を真っ赤にしながら両手で顔を隠してた。

 いや、その反応もう…そうでしたって言ってるもんじゃん。




 「……うむ、ヨシトよ」

 「ハイ」

 「もう、何も言わんで良いぞ」

 「爺さん目が据わってる」

 「なぁに心配は要らん一瞬で潰してやろう」




 ズォ…。





 わー、大きな大剣ですねぇ。

 もう斬るってより叩くじゃないですか?




 「わ、儂のっ…!可愛い可愛いエリシアの…は、裸をっ…許さぁぁぁぁぁぁぁん!!!?」

 「待って!?爺さん待てって!?」

 「潰す!」



 やべぇ!?爺さんガチだ!




 「エリシア!ちょっと爺さんと朝の運動してくる!じゃ!」

 「逃げるな!?この変態がァァァァ!!!」




 逃っげろ〜妖怪筋肉お化けだぁ〜。

 捕まったら叩き潰されるぞ〜





 あっはっは!






 




 



 

 

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