シンドバッドのゆるゆる冒険記

みるとん

冒険の始まり

「何ぞおもろい事でもあれへんやろか。」


 中東の国イラクのバグダッドで商人として働くシンドバッドは豪華な装飾が施されたベッドに横たわりながらそう呟いた。


 しかし商人とはもはや名ばかりで、父が他界してからはろくに働きに出ていないのが現状だ。


 ベッド然り、この部屋に並ぶ煌びやかな家具や装飾品、これらは全て父から譲り受けた物である。


 父は大変な資産家で、彼の死後、シンドバッドの元には莫大な富が舞い込んだのだった。


 しかし大金が手に入った事をいい事に、シンドバッドは働く事をやめ散財の限りを尽くした。最近になってやっと慎ましやかに生きる事を覚えたが、やはりこの国の娯楽を全て体験し尽くしたシンドバッドには何か物足りない。



 ——もっと刺激が欲しい。


 すると彼の頭にある名案が思い浮かぶ。


「そや! 船に乗って世界を旅してみたらええやん!」


 そうと決まればさっそく準備や!


 シンドバッドは父から譲り受けた全てのものを売り払い、仕事で訪れたオマーンのソハール港で船乗りとして集めた商人達と金を出し合って一隻の船を買った。


 船乗りのおっちゃんから値切り倒して買った船は立派とは言えないが、それでも数人の船乗りと、彼らの荷物を詰むくらいの余裕はある。


 シンドバッドは意気揚々と船に乗り込むと船乗り達に向かって叫ぶ。


「出航するでー!」


 目的も信念もない、ただ刺激が欲しいだけ。


 船乗りシンドバッドのゆるい冒険はこうして始まったのである。

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