第9話 Far away
−高校−
高校の校門を、道を挟んで見える歩道にとめられたレム。晃(アキラ)は高校から出入りする人を、ただひたすらながめていた。
「晃(アキラ)さん、やっぱりロリコンだたんですね。」
「だからさ〜。俺達は高額報酬のミッションを引き受けただろ。“霧”のE's使いを見つける事。そして、カフェで集めた情報によると、高校生が霧につつまれて“神隠し”にあっているらしいんだ。だから、高校に来たら何かヒントがあると思ったんだよ。」
普段、短い言葉しか話さない晃(アキラ)が長々と解説したので、さすがの音波(オトハ)も真剣に頭を下げた。
「ごめんなさい。」
『( ˘ω˘)ドヤ:E'sが“霧”なら、きっとそれにまつわる情景が必要なんじゃないかしら。水辺とか…、霧の出やすい時間とか…。でも、何で高校生を連れ去るのかしら…。そいつは、高校生か、やっぱりロリコンかしら。』
「レムさん、素敵! 探偵さんみたい!!」
『(*´σー`)エヘヘ:まぁね。これでも、最先端AI内蔵スーパーオートビークルですから。(ちょっと盛りすぎかしら)』
晃(アキラ)は、少し呆れながらレムと音波(オトハ)をながめていた。
ふと、校門の方から視線を感じ注意して様子をうかがうが、そこにはモブと思われるブレザーをきた男の子が校門から出てきているだけだった。
「(!?)………、まただ…。」
「晃(アキラ)さん、どうしました?」
「あ…。いや、何でも無い。レムの言う通り、このままではらちが明かないな。」
「あの…、河川敷に行ってみませんか。水辺だし、高校生の私がいれば条件がそろいます。それに…。」
モジモジ何かを言いたそうな音波(オトハ)に、レムは合いの手をはさんだ。
『(*´ω`*)モフ:トロンボーンの練習をしたいんでしょ!』
音波(オトハ)は、ニッコリ笑うとペコリとうなずいた。
晃(アキラ)達は、河川敷に向かう為にレムに乗り、ブレザーを着たモブの男の子の側を走り去っていった。
規則正しい動きをするブレザーを着たモブの男の子は、走り去っていく晃(アキラ)達の姿を目で追いかけていた。
−河川敷−
『プップー、プォ〜ン』
音波(オトハ)のトロンボーンは、管楽器らしい音を奏でるようになってきた。
河原で練習をする音波(オトハ)を、河川敷の法面に寝転がりながら晃(アキラ)が見つめている。
側の道端に停められたレムが、ほがらかに晃(アキラ)に話しかけてきた。
『(*´ω`*)ホヘ~:あの子、何でもかんでも一生懸命で、可愛らしいわね〜。』
「ん〜。」
ボケ〜っと見つめ、当たり障りのない返事をする晃(アキラ)。
穏やかな時間が、ゆっくり過ぎていく。
『(・。・)ホヨッ:あら。あの子、誰かしら。お友達かな〜、いいわね〜。青春って…。』
河原でトロンボーンの練習をする音波(オトハ)に、同じくらいの年齢の女の子が話しかけているようだ。
「ねえ。あなた、吹奏楽やってるの? 私も興味あるんだ〜。」
「えっ!? あっ、ハイ!」
突然、声をかけられた音波(オトハ)だったが、自分と同じくらいの年頃の女の子に、警戒もせずにニッコリ返事をする。
その子は、肩までのびたストレートヘアーに、切れ長の一重まぶた、少し落ち着いた雰囲気の女の子だった。
「私の名前は、霞(カスミ)。バーチャルアーティストのμ(ミュー)が好きなんだ〜。」
「私は、音波(オトハ)。μ(ミュー)、超流行ってるよね〜。私も、よく聴くよ〜。」
「じゃあ、カラオケは?」
「歌うの、すっごい好き〜。」
年の近い二人が仲良くなるのに時間はかからなかった。会話が跳ねるように飛び交い、音波(オトハ)と霞(カスミ)はすっかり意気投合し笑顔で会話を続けている。
晃(アキラ)とレムは楽しそうな音波(オトハ)を、遠くから静かに見守っていた。
しばらくすると二人が近づいてきて、音波(オトハ)が話しかけてきた。
「この子、霞(カスミ)っていうの。すっかり仲良くなっちゃって、今からカラオケに行くけど、皆で行かない?」
晃(アキラ)は、そんなタイプの人間じゃない。自分でも分かっている、それに音波(オトハ)の楽しそうな姿を見て邪魔をしたくないと思ったのか、軽く微笑んで返事をした。
「行っておいで。」
「あ…、うん。」
音波(オトハ)は、胸元で手を振り、霞(カスミ)と共に繁華街の方へ歩いていく。
かすかに二人の会話が、風に乗って聴こえてきた。
「もしかして…、彼氏…?」
「…ただの、友達だよ…。」
レムが、小さな声で晃(アキラ)に話しかける。
『(´Д`)ハァ:私なら行くけどな〜。そんな性格ね。』
「ん〜。」
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