殺人未遂事件

Mr.M

プロローグ 未来をミる

第1話

あなたは占いや超能力の類を信じているか?


占い師や超能力者を名乗る人間が

あなたの過去を的中させるのは現実的に可能だ。

何故なら過去は痕跡として残っており、

その気になれば

いくらでも調べることができるからだ。

しかしそれは警察や探偵の仕事であって、

占い師や超能力者の出る幕ではない。


一方で、

未来を語るのは

詐欺師か神の言葉を騙る者達である。

過去を変えることはできないが、

未来は演出できるからだ。


「あなたは明日、

 赤いスカートの女性に出会うでしょう。

 その女性はあなたの運命の人です」

詐欺師はあなたにそう囁く。

詐欺師はあなたの幸せを望んでいるわけではない。

己の食い扶持を稼ぐために囁くのだ。

実際、その翌日。

あなたは赤いスカートの女に出会うだろう。

その運命の女が

結婚詐欺の片棒を担いでいるとも知らずに。


「落とし物に気を付けなさい」

神の言葉を騙る者はあなたにそう忠告する。

彼らはあなたを心配しているからではない。

神という幻想への信心を

より強固なモノにするために忠告するのだ。

しばらくして

あなたは財布を失くすだろう。

しかしそれは

彼らの息のかかった人間が盗んだという事実を

あなたは知らない。


世の中にはありもしない能力を

さも本物であるかのように見せようとする

不届き者は多数存在している。

そして同時に、

そのような者達に騙される人間が

星の数ほどいるのは

愚かで悲しいことである。


断言するが、

私は金に困った詐欺師でもなければ、

信者を増やそうと画策する宗教関係者でもない。


それでも・・。


私は未来をミることができる。


これからそのことを証明しよう。

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