第80話 避ける事が出来ない戦い
――次の日。
「さーてとそれじゃあ行きますか」
全軍を並べ、士気の高い兵士達は、今にもアズーラ城へ攻勢に動き出しそうな雰囲気だ。
「オラオラー! 声だせー!」
「「「おおおおおおおおおお」」」
「もっと!! もっと!!」
「「「おおおおおおおおおお」」」
「もっとだ!! もっと!!」
「「「おおおおおおおおおお」」」
「いい感じだな」
「テディー! 頼むぞー!」
「アイアイサー!」
「ニョッキニョッキニョッキ! ニョッキニョッキニョッキ!」
相変わらず意味の分からないダンスで、ゴーレムを三体生み出す。
そのゴーレム達は、アズーラ城に向かって歩き出す。
アズーラ城と俺達の軍との距離が、丁度中間ぐらいになった時、ゴーレムに異変が起きる。
ドッカーン! ドッカーン! ドッカーン!
ゴーレムが次の一歩。
歩みを進めた瞬間、足元から大きな爆発が起こった。
ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!
アズーラ城から銃撃音が響き渡り、テディが生み出したゴーレムが破壊されていく。
ドゴーン!
城門前に待機されていた戦車と思われる物体が、砲撃した。
「ドクター! 大変だじょー! オイラのゴーレムがあっという間に破壊されてるじょ!」
地雷で足元が崩れ、明らかに銃器と思える攻撃と砲撃によって、胴体が破壊され崩れていく。
その光景を間近で見ていたロア王国軍の雄叫びが、消えた。
「ジャン様……あれは一体何ですか?」
「あれはとんでもねぇ攻撃だぜ? 旦那」
「とんでもねぇのは確かだな。もうちょっと確かめてくるわ」
俺は馬から降りて、一人でアズーラ城へと歩みを進めていく。
地面の死体を踏みつけ、前へと進む。
無造作に倒れている死体の先頭へと辿り着く。恐らくこの先からデッドラインだろう。
「主様! 危ないです!」
「死ぬぞリリア! 来んな! 下がれ! 黙って見てろ!」
俺は集中してデッドラインを越えていく。
二歩進んだ瞬間、アズーラ城の屋上からキラリと、何かが光った。
俺は、敵からの攻撃だと瞬時に察知して避ける。
凄まじい破裂音と共に、俺の居た後ろの地面に何かがぶつかり、
同じようにアズーラ城のあちこちから同じような光が。
すぐさま後ろへと戻る。
俺の居た場所から、砂埃が舞う。
やはりどう考えても現代兵器だ。
しかし、何故テンダール魔法国が?
ファルテラ王国の技術だろうに……。
戦争映画に出てくるような兵器。
地雷、機関銃、戦車にスナイパー。
ここまで来ると、敵の兵士はきっと、銃を持っているだろう。
なるほど、なるほど……そりゃあやられる訳だよ!
(ユウタは、一連の攻撃で何か感じ取ったの?)
「ああ、これは俺が居た世界の技術だよ。何でテンダール魔法国が持っているのか知らねぇけどな……」
(それは……『科学』ってやつだよね。ユウタから見てこの戦い、どう思う?)
「普通に戦ったら多分勝てないだろ。どれだけの技術があるのか知らないが、今見ただけも凄かっただろ? ただの歩兵軍と魔法軍位の差があるんじゃないのか?」
「武術や魔法でどうにかなるレベルじゃない。戻るぞ」
全軍に撤退の命令を下し、今日の戦いを終わらせた。
隊長達とルーク、ゲルテ伯爵も呼んで軍議を開く。
「さっきの攻撃見てたよね? 皆はどう思った?」
「「「……」」」
皆が一様に、口を閉ざした。
ゴーレムが未知の攻撃によって、簡単に倒されたのを見たからか、表情が暗い。
「ドクター! ドクター! オイラはどうだった? 凄い?」
「凄かったぞテディ」
「わーいわーい!」
「ジャン君も見たでしょ今日の攻撃! 初めて見たよ!
ありえないよぉ! 仲間……援軍が来るまで待った方がいいって。僕らだけで戦えないよ〜! あああああああああああ!」
「ルークに聞きたいんだが、魔法国に間者は送り込んでいるのか? 少しでも情報が欲しい」
「何度も試みてはいるんですが、誰一人、帰って来ませんでした」
「警戒心は、かなり強いみたいだね」
「ジャン様、今後、どう戦うつもりなんでしょうか?」
「まず皆に伝えておく事がある。今日の魔法国の攻撃は魔法ではないという事だ」
「「「!?!?!?」」」
「では主様! 一体何なのですか?」
「『科学』と呼ばれる技術だよ。剣とか弓矢のような物と一緒で、誰にでも使える代物。効果と攻撃力は見た通り凄まじい。それに――」
ジャンは、相手が持つ武器の可能性全てを皆に伝えた。
「おいおい。それ本気で言ってるのか旦那」
「本気だよ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁ! 僕達死んじゃうよぉぉぉぉぉぉぉ!」
「主様。なんでそんな技術が、魔法国にあるんですか? 魔法ではないんですよね?」
「これは憶測だけど、同盟を結んだんだと思う。もしくは技術提供、交換という感じでね。『科学』はフォルテラ王国が発展させてきた技術なんだ。だけど魔法には疎い。魔法国は魔法には詳しい、けれど間近で『科学』を見せられたら誰でも興味を持つに違いない。二つの国に友好関係がある事は、まず間違いない」
「エルガルド。軍の食料、後どれ位もつ?」
「三十日。節約して四十五日って所だドクター」
「ルーク達は?」
「同じ位かと……」
「他で戦っている場所が、その日数で終わるとは想定しづらい。援軍が来るまで待つという戦略は取れない」
「つまり、食料が続く日数以内でアズーラ城を落とし、食料を掻っ
「そういう事だシャオ」
(おいおい! 何かいい作戦あんのか?)
(作戦なんて呼べるものじゃない。ユウタの影響かな……人が嫌がる事っていうのは、時に戦争で役に立つって事を知ったよ)
「これから私達がやる事を伝える。決して戦略なんて呼べるものじゃない。だがアウル軍は、そもそもどんな軍だ? 綺麗な戦い方をするような奴らか? 違うだろ! ドロドロになりながら、地べたを這いずり回っても絶対に勝つ! 綺麗事なんていらない! そんな軍だろ!」
「アウル軍だけが出来る方法で乗り越えるぞ!!」
アウル軍にしか不可能な、醜くて臭い戦いが始まる。
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