【完結】チェーンデスマッチ

焼砂ひあり

第1話 経緯①(男の事情)  1/8




 確か今日は四月十四日だ。


 確かそうだった。


 僕は入学式ということで、休みである学校に行くはずもなく、家にいたはずだ。

 そこの所ははっきりとしない。はっきりしてなくてはならないわけじゃないが。


 今私服なのを見るときっとそうだったんだろう。そうに違いない。


 朝起きた記憶がないから、春休みの習慣通り徹夜していたはずで、夜通し誰かと話しをしていたような気がする。

 もしかしたら独り言だったかも。


 そして、夜が明けるのを実感していただろう。鶏の鳴き声を聞いた気もする。


 朝食は寝る前に取るのが習慣だから、それを食べたのだろうか。あまり空腹感を感じていないということは、多分食べたんだろう。


 恐らくはいつものように、インスタントラーメンを自分で作って。

 インスタントラーメンは作るとは言えないか。


 けど世の中にはカップラーメンが得意料理といって憚らない奴が結構いるらしいので、インスタントラーメンは作ると言っても問題ないだろう。


 話が逸れた。


 今日の予定は何だったろうか。一概には言えないが、家にいたらしいことを考えると、寝ていたか、読書でもしていたんではなかろうか。


 そう言えば読みかけていた本が何冊かあった。ホラー小説だったか? 最近はジャンルが微妙なのが多くて良く分からない。

 けどミステリとホラーは紙一重だという意見も存在するし。


 そんな怪奇じみたトリックがホラーでなくて何だ、と、知り合いの某女子高生なら言いそうだ。

 そう言えばあいつ今何してんだろ。どうでもいいけど。


 何の話しだったっけ?


 ああ、そうそう読みかけの本を読んでいたのではないかという、推測だ。

 何か違う気がする。内容がいまいち思い出せないし。


 と、すると寝ていたのか?


 それにしては今現在強烈に眠い。思考が思うようにはかどらないのも、一重にこの眠気のせいだ。


 じゃあ、何をしていたのだろう。

 ああ、そう言えばインターネットで卑猥な画像、じゃなかった。後学のために必要な情報を落としていたような気がする。


 なんだかそのような気がする。


 きょにゅ、じゃなくて大変参考になる内容に満足していたような気がする。そうそう、あくまで後学のためですよ。


 そしてメールが来たんだった。


 人の楽しみを邪魔しやがってと思いつつも――――――――そこからまた記憶が途切れる。


 何だった?


 ただの迷惑メールだったか?

 宛名はそうだ、某女子高生のもので、確か呼び出されたんだよな。


 断っても良かったんだが人間として最低限関係を維持しておくべきだと、不承不承着替えて準備して……着替えて?


 んーと、そう、そうだった。

 何でも買い物に付き合えと言う、頭ごなしな上に突然のメールだったんだ。


 大分思い出してきたぞ。


 それで、別段着飾ると言うほどでもないが、部屋着じゃまずいと思って着替えて向かったんだ。


 何処に?

 しかし、やばいくらいに思考スピードが遅い。


 何でいちいち反芻しないと出てこないんだ。ええっと、買い物に行くというんだから駅あたりで待ち合わせてたんだよな?


 そう言うことにしておくか。思い出せないけど。


 だとすると、出かけていたわけだ。

 まあ、そりゃそうか。


 で、電車に揺られて何処に行ったんだ?

 あいつの買い物に付き合わされたんなら、目的のブツは何だ?


 つーか、意図が見えない。仲が悪いわけじゃないが、特別いいわけでもないし、突然買い物に誘われるような謂われはないんだけどなあ。


 僕がいなくては買えないようなもので、あいつが必要なものってことか?


 まさか彼氏が出来て誕生日に何が欲しいか分かんないから一緒に選んで、とか?

 ありそうで究極なまでにあり得ない想像な気がするが。


 だいたいあいつって男に興味あるのか?


 そっちの方が疑問だし、もし告られでもしたら僕なんか記憶が三日分くらい飛ぶぞ。

 それもあり得ないことではあるけど、取りあえずこの事はいいか。


 人の考えてることなんて分からないし、分かりたくもないし。


 で、買い物に行ったなら、まあ、何買うにしても芳泉町(ほうせんまち)辺りだろう。

 ここいらで若いもんが買い物に訪れるならここだ。


 服にしろ、書籍にしろ、娯楽施設はそんなにないが、ショッピングには最適だ。


 だが本当に行ったのかな。あいつって人混み嫌いそうだけど。


 僕は大っ嫌いだし。満員電車で通学するのがイヤだから、わざわざ早起きする人間。


 まあ、もっとも一週間に三回以上は寝坊して、満員電車を避けるために遅刻するんだが。

 日本広しといえど、年に三桁以上遅刻する高校生はそんなにいないだろう。きっと。


 また話がそれてる。いい加減にしろ。まあ、それで芳泉町に行ったとして、じゃあ、ここは何処なんだって話しだよ。


 僕はその某女子高生と、どこかのいい感じに廃れた工場跡かなんかで、仲良く柱に手錠で繋がれていた。



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