第44話 修正
――王国武闘祭は見事に
授賞式を終えた俺は、シンラをレイミーの元へと連れて行く。
新規雇用の騎士として。
彼女は人間の世界に暫く留まるそうなので、俺の予定を狂わせた責任を取る形でコーガス侯爵家の騎士として働いて貰う事になった。
これで予定通り、大会の一番手と二番手がコーガス侯爵家に所属する事になる。
「お初にお目にかかります。レイミー様」
俺の魔法でエルフの特徴的な耳を隠したシンラが、ブルドッグとしてレイミーに挨拶する。
「あ、初めまして。先程の試合、大変すばらしい物でした。ブルドッグ様はお強いのですね」
「お褒めに預かり光栄です」
礼儀作法はしっかりしたものだ。
この調子なら、色々と教え込む必要は無さそうである。
「彼女は是非ともコーガス侯爵家にお仕えしたいとの事で、僭越ながらお連れしました」
「そ、そうなのですか?」
「はい。サイン殿ほどの好敵手を私は知りません。叶うならば、終生のライバルとして切磋琢磨して行きたいと考えております。ですので、どうか私をコーガス侯爵家へとお加え頂きたい」
強い奴がいきなり落ち目の侯爵家に仕えたいというのは、どう考えても違和感が凄い。
だが自分と互角に戦えるだけの相手と切磋琢磨するという理由なら、力を尊ぶ武人的思考と言えなくもないだろう。
まあ何事も理由付けは必要だ。
レイミーが本体である俺の方を見る。
当主代理である彼女が人前で執事にどうするかを聞く訳にも行かないので、アイコンタクトで訪ねて来たのだ。
当然オッケーなので、俺はその視線には笑顔で頷いて返した。
「こちらとしては断る理由もないので大歓迎です」
「ありがとうございます」
「騎士としての契約や業務内容は、執事である私の方からブルドッグ様に後程説明させていただきます」
執事の俺が笑顔でそう告げると、シンラはどうにも微妙そうな顔をする。
白々しい奴だとでも思っているのだろう。
まあ何にせよ、こうしてシンラはコーガス侯爵家の一員となった訳だ。
これで王都での目的は果たした。
後は帰るだけ……っと、そういや王家主催のパーティーがあったな。
パーティーは武闘祭の翌日に開かれる訳だが、その主役は間違いなくコーガス侯爵家になるだろう。
聖女の一件もそうだが、武闘祭優勝の騎士を抱えている訳だからな。
目立たない訳がない。
レイミーがちゃんと出来るかどうか……
唯一の心配事は、レイミーが対応出来るかどうかだ。
もちろんその手の教育もちゃんと施してはいる。
だが如何せん、彼女にはそういった場の経験がない。
教育していても、本番で失敗するなどよくある事だからな。
俺が代わりに出れば手っ取り早いのだが、それだといつまでたってもレイミーが経験を積む事が出来ないままになってしまう。
まあ余程の大きなやらかしでもしない限りは大丈夫だろうし、信じて見守るとするか。
――保護者目線でそんな事を考えていた俺だが、翌日パーティーが開かれる事はなかった。
――ある事件によって。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます