新しい場所


俺はお母さんの方を見ると汗をダラダラと流していた。何とかバレないように表情には出していないが、その汗がお母さんの心情を表している。

俺は美海みみちゃんにその後のことを聞いてみる。


「そ、そうなんだね。付きまとわれた後って何か聞いたことある?」


「んーとね、近いうちに大量のお菓子とかおもちゃとかとかが届くんだって!美海みみも貰ってみたいな!」


クマのぬいぐるみって盗聴器とか隠しカメラとか隠したい放題だよね…ってことは四六時中監視されるってことになるんだよな?終わったじゃん。


「クマのぬいぐるみって…やば…桜?」


「〜〜〜ッ!!!」


桜は手で口を抑え、悲鳴のようなものをあげていた。その目からは涙が溢れている。あぁ…桜はそれを経験したということか。大丈夫だ、後で俺もいく。


「大変だよね…お母…お母さん?」


お母さんは顔を真っ白にした状態で微動だにしない。おそらく美海みみちゃんの話を聞いて、責任を感じていたのだろう。気を失っている様子だった。お母さんもいったか…。


照史あきとくん、2人はどうしちゃったの?」


春先生は俺にどういう状況か尋ねてくる。

俺は簡潔にだが、説明しておく。


「袋を貰っちゃうと住所を特定された上に大量の贈り物をされちゃうんだよね。で、その中には隠しカメラだの盗聴器だのが入ってるんだって」


「えぇ!?そんな危険な集団なんですか!?…それより、なんで袋なんですかね?」


「気になるところそこなんだね」


俺は春先生の緊張感の無さに呆れてしまう。やる時はやる先生なのだろうが、今はやらない時なのだろう。それはそれでいいと思う。


「で、貰っちゃったのが桜と俺ってわけよ。簡単でしょ?」


「なるほど〜ってえ?貰っちゃったの?」


「そうなんだよ。それで桜は危険を感じて俺たちをどこかへ連れていってるって感じだね」


「へ〜でも、私たちいらなくないですかね?」


うんうんと頷くほかの人たち。確かにいらないのはいらないと思う。ただあるとすれば…。


「何かやらかしそうってことなんじゃない?」


「なるほどですね。で、その袋ってこんなのでした?」


春先生はポケットからある袋を取り出した。他の人たちも同じようにポケットから取り出す。

美海みみちゃんは袋で遊ばないでね?ママさんに当たってるよってそれ俺も貰ったやつ!


「もうやらかしてるじゃん…それ、どこで貰ったの?」


「スーパーで買い物してたら…」

「ゴミを入れようとしたら…」

美海みみがくれまして…」

「テレビの後ろから飛んできたよ!」


「その袋を受け取ったら盗聴器やら来るんだよ?」


「「「「えっ!?どうしよう!?(クマのぬいぐるみどこに置こう!)」」」」


みんなは急に慌て始める。

誰も自分のものとは思ってなかったのか!?

それと美海みみちゃん、クマのぬいぐるみにおじちゃんが買ってあげるからそれで我慢なさい。

今だとお兄さんか?まぁおじちゃんでいいか。

だが、1つおかしいことがある。

ロリっ子大好きクラブはその名の通りロリっ子を狙うはずだ。それなのに大人3人が袋を貰っている。これってどういうことだ?


車内がパニックになっていると車がゆっくりと止まる。それに気づいた桜は正気を取り戻すと大きく咳払いをする。


「んんっ!失礼しましたわ!…さて!ここが私たちの新しい居場所でございますわ!」


桜は窓を開くボタンを押すと窓はゆっくりと下がる。そこにはなんと…大きな警察署があった。

隠れた大きな屋敷とかそういうのじゃないのね。

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