帰宅?
俺たちは家に向かって手を繋いで歩道を歩いているとお母さんが話しかけてくる。お母さんは幼稚園に馴染めそうなのか心配なのだろう。その気持ちは分かる。
「あきちゃん、今日はどうだったの?楽しかった?」
「うん、楽しかったよ!みんな優しかったし」
「そう、それは良かったね〜!お友達もいっぱい出来た?」
「うん、仲良くしてくれる子がいっぱいで良かったよ!」
「なら、あの幼稚園にして良かったね!お母さん、結構迷っちゃったの」
お母さんは俺の言葉を聞いて、ご機嫌さんなのだろう。手を大きく振り始める。恥ずかしいからやめて欲しい。その光景を見ていたおばあさんが俺たちに挨拶をする。
「あらっ元気ね!こんにちは」
「「こんにちは〜」」
「今、お帰りかな?これ、お菓子なんだけど食べる?買ってきたばかりのチョコだけどね」
おばあさんは買い物袋からを取り出す。本当は断りたいところだが、人の好意を無下には出来ない。ありがたく頂戴しよう。
「うん!ありがとう!」
「…あらっいけない!そろそろタイムセールが始まっちゃうわ!それじゃあね!僕!それとお母さんも!」
「「ありがとう(ございます)!それでは!」」
おばあさんは腕時計を見ながら、急いで走っていった。元気なおばあさんだ。長生きしろよ!
俺はもらったチョコを溶けないように持っていると不審者としか思えない服装をしていたお姉さんが袋をくれた。袋はありがたいけど、普通に怖い。
なんだよ、マスク、サングラス、帽子って。漫画の世界でしか見た事ないやつだぞ?
「良かったね!あきちゃん!お菓子と袋もらっちゃったね!」
「う、うん!あとでお母さんにもあげるね!」
「ありがとう!お母さん嬉しい!」
お母さんは嬉しさのあまり俺の手を引っ張り、抱きしめる。抱きしめる力が強い。頬ずりも激しい。つ、強い。歩道の真ん中だから人の視線が痛いんだ!
「や、やめてよぉ…」
「あっ!ごめんなさい!つい!…あらっ?電話ね。あきちゃん、離れずにそばに居てね」
お母さんはポケットから電話を取りだし、首を傾げる。知らない電話番号なのだろう。
「はい、高崎…はい、愛々崎ってあの?…スカウト!?…家はこっちで用意してる!?私の…あっ荷物は移動済み…はい…え?…はい…分かりました」
お母さんは何が起こったのか分からないような様子で、携帯を俺に渡す。代われって言われたのかな?
って、愛ヶ崎って桜のことか!?本当のお嬢様だったのかよ!
「はい、代わり…」
『さっきぶりですわね。簡単に言いますと貴方たちには私の家に住んでもらいますわ』
「はい?」
『お部屋は沢山ありますもの。荷物は勝手に持っていきました。他の方もいますわ。後で車を向かわせますの。その場を動かずに。それでは』
「えっ…ちょ…」
ツーッツーッという音が聞こえ、桜からの電話が切れた。俺はお母さんに携帯を渡すと何やら怒っているような表情をしていた。
「あきちゃん?何したの?」
「う、うちはなんもしてへんで?」
「関西弁なんて喋ってなかったでしょ?今日あったことを1から100まで話してね?1つでも嘘を言っちゃうと…お母さんと赤ちゃんごっこしてもらうからね?しかも外でも!」
(そ、それはまずい!俺の精神的ダメージがスゴすぎる!お母さんは嘘を言って欲しそうな顔をしているが、俺は言わない!未来のために!)
俺はお母さんに今日あったことを話すこととなった。途中、嘘ね!とか言って騙してこようとするが、それに屈せず俺は偽りなく話した。
お母さんは残念そうな表情をしていたが、そんなことは知らない。すると、クラクションが聞こえた。
俺たちはその方向を見るとリムジンがこちらに向かってきており、窓から桜が大きく手を振っていた。
って身を乗り出すんじゃない!危ないぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます