貴女に捧げたい

@kurakusyun

第1話

欧州のとある国。世が世なら女王にすらなれるほどの貴族の末裔のお嬢様がいる。


 光り輝くブロンドのロングヘアー、手を入れなくてもきりりと少し上目に上がった整った眉毛、猫を思わせる大きな瞳、小さく通った鼻筋、ぷっくりとした柔らかく艶のある唇。まさに黄金比。名はサラ・ハルアート。


 時代の移り変わりとともに目減りしていったとはいえ恐ろしいほどの莫大な資産を受け継ぎ、容姿端麗、頭脳明晰、運動神経はインターハイ優勝クラス、十代の頃から自分でも企業をし、孫、曾孫の代どころか何世代に渡っても使いきれない程の資産にまで増やしてしまった程の天才、絶人と言っていい姫だった。




 彼女は全てもを持ち足るがゆえに何物にもあまりに興味を示さなかったが、そんな彼女が恋をした。いや、愛に全てを捧げたといってもいい。


 軽く国内の最高学府の大学に入り、今年で卒業という年。人に優しくはあるものの余りに近寄りがたいオーラと、周り遠巻きにガードする護衛のせいで友達など一人もいなかった。そんなある日、ほんの気まぐれで学食なるもので食事をしてみようと立ち寄った先で出会ったのが日本から来た一人の少女。




「っ!あの、ここ空いているでしょうか?」




 そんな事を聞かなくとも幾人もの人間が笑いかけるだけで席を空けるだろうが、彼女はそれを良しとはしない。くるりと周りを見渡して窓側に空いていた四人掛けに一つに座っていた少女に声を掛けた。トレイに乗っているのはジャパニーズソバヌードルだ。




「へ?ああ、空いていますよー。どうぞ」




 少女の名は遥、一年生。小柄で烏色のショートカットで日本なら読者モデルに誘われそう。それくらいには可愛いがただそれだけ。世界レベルの大学に入っているのだから将来は有望ではあるが、オーラがあるとか何でもできるとかそういう事は無い。大学に入ったばかりでカリキュラムに四苦八苦しているところ。


 サラの事をめちゃくちゃ綺麗な人だなーと思いはしたが、どぎまぎとしながらもその少女はごく普通に眩しい笑顔でそう言った。




「はぅ…、貴女のような方は初めてです。何と可愛らしいのでしょう。私は四年のサラ・ハルアートと申します。宜しければお名前など教えて頂けますでしょうか?」




「あ!先輩でしたか!すみません、私は日本から来た石原遥…あー、とそうか。ファーストネームが遥です。そう呼んでください」




 どきゅんと胸打つ高鳴りはかなり。異邦人であるからか、自分に対して頬を染めつつも明るく素直な好意だけを示してくれている。そして、とても可愛い。とても。とてもだ。




「ハルカ・イシハラ様。ハルカ様。我が家名がお名前に。これもう運命。運命としか言いようがありませんわ。……ハルカ・ハルアート…良いですわ」




「はぁ…。そういえば確かに名前の響きが苗字の響きと似てますね」




 何やら純白の肌を朱に染め、興奮しているサラに遥は呆気に取られながらもそう言った。




「……話は変わりますが、貴女の事とても好き。好きです。お付き合いしてくださらないかしら?」




「は、ぇ」




 新一年生の遥にとって頭の出来は同じでも先輩方はみんな凄そうに見えた。綺麗な人が一杯いてその中でもこの人は一際綺麗だなと思うくらい。オーラもある。そんな人が何か生まれて初めての告白をしてきた。遥はその日フリーズした。




結果として、サラはこの世の全てを手に入れる。ぐいぐいと、ごりごりと、押し囲むようにして最終的にはそうなった。もちろん、遥が嫌がるような事は絶対にしない。細心の注意を払いながら遥が喜ぶ事を膨大な資産を湯水のように使って自然に一緒に楽しんだ。




 ホテルを貸し切り、リムジンで移動し、物は全て一から作るオーダーメイド、時にはレッドカーペット遥と二人で腕を組んで歩いてセレブや映画スターとお喋りをしたりもした。


 遥は当然そんな扱いはいらないと断るが、少し寂しそうに謝罪してくるサラに折れてしまう事になるのだ。




















「遥様、遊びに行きませんか?」




「良いけど…。ていうか様とかいらないってばサラさぁん」




「そういう訳にはまいりません。貴女様は私の運命のそのもの。貴女の為ならこの世界すら手に入れましょう」




 彼女が本気でその気になれば全ては無理でも大陸一つくらいの支配者になれてしまいそうなのが怖い。この現代社会で。怖すぎ。実際世界経済の何パーセントかを動かしているという噂すらある。可愛いし、優しいし、良い子なんだけどなぁ。




「もう…!で、どこに行くの?ふつーでいいからね?普通だよ?」




「今日は金曜日です。遥様は今日はもう講義を取っておりませんし、研究室に用もなし。と、いう訳でこの土日を私と遊びましょう。そろそろ日本のお食事が恋しいのではありませんか?」




「え?お泊りで?うーん、っていうか何この音…」




 もの凄い音が空から聞こえる。気にはならなかったがそういえば目の前にあるラグビー場には人っ子一人としていなかった。サークル活動の時間ではないにしろ、それなりのラグビー強豪校として有名だから時間のある者が練習をしているのが常だ。それがだれ一人としていない。代わりといってはなんだが徐々に爆音が近づいてきている。遥は思わず空を見た。小型ジェット機。いや、あれは違う。




「日本までは十時間少しほど掛かりますが、たまには私も美味しいジャパニーズ刺身を頂きたいですわ。遥様の好物ですものね。チュウトロ?というものは」




「あ、あれってこの間雑誌に載ってたハイブリット次世代型VTOL!?まさかこんな気軽に自家用にするなんて…おーまいがっ…!」




「あらあら、遥様も英語に慣れていらっしゃったようで大変よろしい事」




 カトリックのように驚いてリアクションする遥の様子にサラは嬉しそうにころころと笑った。やはり少し感覚がズレている。ハリアーのように垂直離着陸できる試作機VTOLを大学のグラウンドに降ろす為だけに購入したのだから。


 呆然とする遥の手を恋人繋ぎで握りしめてするすると乗せてしまう。中は当然ファーストクラス以上の設備でサラはシャンパンをやりながら目を剥いて外を眺めている遥を慈愛の表情で眺めた。


 そして、少しアルコールが回った頃爆弾を落とした。当たり前の話だが、物理的にではない遥にとってはの。




「今、海鮮が美味しいと言われるホッカイドウに向かっておりますが、そう言えば日本ではアレはした事がありますのでしょうか?趣味嗜好の件です」




「ん?なんだっけ。サラさん。する?」




「スパンキングの件ですよ。お好きなんですよね」




「すぱ……………………くぁwせdrftgyふじこ」




 サラに冷蔵庫から出してもらったノンアルコールカクテルを石でも飲んだかのように呑み込んで数秒後に発した言葉はそれであった。


 コンピューターがバクを起こしたらこんな顔だろうという顔。そのまま真っ赤に染まっていく。ぱくぱくと何か言い訳をしようとしながらも何も言葉が出なかった。世界レベルのIQが無くては入れない大学に入っておきながらやはりまだ20年弱しか生きていないのだ、人生経験が足りなさ過ぎたのか。


 その辺り、サラは子供の頃から大人と渡り合ってきた経験がある。事に遥の事に関してはやることなすこと好意しかない。たとえ相手が心臓が止まりそうなほど驚き、赤面していても。




「だってお尻を剥き出しにされて真っ赤にされるまで叩かれたくてこの国に来たのしょう?」




 嘲ったようでもなく、ただ不思議そうに首を傾げて事実を述べただけの顔。「昨日ご飯食べた


よね?」とでも言わんばかり口調で。




「え、あ、う、ち、違っ…」




 遥がこの国を選んだのはソレがあるから。未だに子供の躾はお尻を鞭打たれるという事。遥はそれを考えるだけでドキドキと胸が高鳴ってしまう。その手の店も、それが好きな人間も他の国に比べるとかなり多い。もしかしたらそういう人と巡り合えるかもしれない。もちろんそれだけではないがかなりの割合を占めた想いを胸に、この国へとやってきたのだ。


 


「ああ、そうでしたか。まぁ、確かに公然と人に話すような事ではないかもしれません。私の配慮が足りませんでしたね。遥様の事なら何でも知っておりますので当然のように語ってしまいましたが、性的嗜好を他人に知られているというのは恥ずかしいものかもしれません。私は遥様にどんな事を知られても構いませんが」




「だ、で、でも…どうして、それを…」




 ほんの三カ月ほどの付き合い。それでも遥はサラを誰よりも信用してもいいと思うほどにはなっていた。だから口をついて出てきたのは否定ではなく「何故知っているのか」という疑問だけ。




「何故、何故ですか。目の動き、リアクション、お尻という言葉やそういうスパンキングにつながる事柄が聞こえたり、見たりした時の顔。とかでしょうか?あ、大変申し訳ありませんが、一瞬だけスマホの履歴が見えた事があります。私、これでも動体視力が凄いらしくて…」




 機内の二人がいる場所は完全なる密室。機内に機長やメイドはいるが呼ばない限りは二人の空間には入ってはこない。


 そこで遥はサラから目を逸らし、ぶつぶつと呟きながら俯いて浅い呼吸を繰り返す。すぐに否定せずにそうやっているだけで肯定しているようなものだが、彼女は頷きも首を横に振りもしなかった。




「ふむふむ。分かりましたではこうしましょう。この国にも日本の職人はいます。魚も日本で取れるものと遜色ないものがとれる場所がありますから、今日は我が家にご招待してそこで日本式の海鮮を楽しむとしましょう」


 遥が呆然としている内にサラはてきぱきと機長に内線で連絡し、数十分と立たない内に引き返した。その理由を「見た」遥が倒れんばかりになるのは一時間ほど後の事。 














「この別宅にご招待したのは初めてでしたね。広さは本宅程ではありませんが、技術的には陳腐ですが「未来的な」と言っていいと思います」




 自分のスパンキング趣味を知られていた事が発覚してから一時間後。もにょもにょとではあるが、自分はお尻を叩かれたいという願望があると自らの口で告白した。それも暴力ではなく、叱られながら叩かれ、お尻が真っ赤に腫れ上がり、ズキズキとした痛みで座れなくなるほどのものを。同人小説を書き、購入し、動画や画像を見ているとも。




「はい、存じておりました。ですのでいずれ、その望みをかなえて差し上げたいと思いましたので「造って」みました」




「うわぁあああああああああ!」




 映画でしか見た事のないような世界最高峰クラスの家。音声認識AIが全てを管理しているそこの地下室を大改造して作られた部屋の数々。全てはサラが遥の為だけに無尽蔵の金を着きこんで造らせたもの。もちろん、それこそがサラの悦びだからだ。




「とりあえず色々な部屋を作ってみました。遥様の嗜好は分かっておりますが、どういうのがお好みまでは分かりませんでしたので。どうも、この手の事が好きな方は細かいベクトルをお持ちのようですし」




 廊下はふかふかの真っ赤な絨毯を敷き詰めた豪華なホテルのようだが、目に見える本来部屋のルームナンバーが書いてある場所には日本語で文字が書いてあった。




「え、家庭のお仕置き…学校のお仕置き…?カトリック学園系ちょ、懲罰室ぅ!?」




 他にもメイドのお仕置き、お仕置き風俗店、パートナー関係、恋人(オススメ♡)等々。


 家庭用のお仕置き部屋の中をちらりと覗いてみれば、どうもさらに3LDKの部屋が日本風、欧州風と奥へと分かれて扉で仕切られているようだし、学校の部屋も中で日本風、欧州風に分かれている。メイド部屋に至っては中世ロココ調に整えられてあってコスプレではないどうみても職人が作ったメイド服が用意してある途方もない念の入れようだった。




「さぁさぁ、お好きなものをお選びくださいませ。おススメは恋人同士の甘いお仕置きプレイですが、遥様的にはこう、母娘か学校でしょうか?」




 もう話の展開と状況については行けていないが、とりあえず自分はどうやらお尻を叩かれるらしい。自分の望み通りに。


 分からない。分からないが、サラは遥の事をすごく気に入っていて何でも望み叶えてくれるらしい事はこの三カ月ほどで理解していた。日本人らしく遠慮はするし、何でかんでも貰うのは違う気がする。だけど、これはこの状況だけは…。




「あの、これ、本当に…してもらえるんだよね…おしおき」




「はい、遥様のお望みのままに。そうしたくて造りましたので使わないともったいないですわ」




 遥はごくりの生唾を飲み込む。体が熱い。胸が苦しい。怖い。そして、興奮していた。


 どれもこれも魅力的だが、遥はやがて一つの部屋を指差した。




「じゃ、じゃあ、その、あの部屋お願いします…」




「はい。家庭のお仕置きですね。母が娘を叱りつけてそれはもうたっぷりとお尻を叩くシチュエーション?姉が妹の悪戯を見つけてお尻が真っ赤になるまで叩く方?」




「さ、最初だし、一回普段優しいのに怒ると怖いママにお仕置きされるって漫画や小説何度も読んだ…そういうの…で」




 遥が選んだのは家庭のお仕置き。日本の部屋も良かったが、80年代くらいの少し古めの欧州風の部屋にした。何もかもが木で出来ているような部屋。














「それでは、イメージさせて頂きます。今日は平手のみにしておきましょうか」




 え、サラが母親役するんだと遥は思ったがサラが遥の素肌を他の人間に見せる事を良しとするわけがなかった。


 なにせお尻を剥き出しにして叩くのだから、少し間違えば女子の大事な部分は全て見えてしまう。遥も少ししか年が違わないのにと思ったが、サラ以外にお尻を見せるのはそれはそれでためらう気もしたので黙っていた。




「ふー……、では参ります。……遥。自分が何やったか分かっているの?」




 サラにしては珍しく少し緊張しているのか深呼吸を一つ。きりりと眉を上げると威厳のある声で遥の名を呼んだ。


 遥は初めて呼び捨てにされてどきりとしたのか、思わず後ろに下がりそうになった。目を見開いて止まりそうな頭をフル回転させた。




(あ、これ演技って事だよね。あーっと、えーっと、わ、わわわわ)




「ご、ごめんなさい。ママ…」




「ダメです。今日という今日はお仕置きをします。さぁ、来なさい」




 そう述べたサラの佇まいはその辺の母親というには出来過ぎていた。ピンと伸びた背筋。引き締まった口元。命令する事に慣れた上流階級の末裔。


 うっ、と言葉に詰まり本気で怯えてしまう遥。それくらいのオーラが全身から溢れ出ていた。


 想像は何度でもした。実際イスやテーブルに腹ばいになって自分で自分のお尻を叩いた事も何回もある。その時の恥ずかしさの比ではなかった。


 彼女、サラの膝の上のお腹を乗せてお尻を突き出すという事は。




「ま、待って…うぅ…めちゃくちゃ恥ずかしいよ、これ。やば…ってちょ、きゃあ!」




 両手を伸ばしてサラの膝の上に腹ばいになろうと少しずつ近づいていた遥の手をサラが急に引っ張って自分の膝の上に押さえつける。遥は望んでいながら現実の状態に恥ずかしくて迷っていたがサラは完全に母親になりきっていた。




「早くしなさい。何をしているのまったく」




「ま、まままま待って!待ってぇ!心構えがぁ…!」




 言う間にジーンズのボタンを外し、力任せに掴んで一気に引き下ろした。ジタバタと両手両足を暴れさせる遥を無視して。


 そして、そのまま白いショーツの中に指を差し込みするりと膝まで一気に引き下ろして、遥の丸く小ぶりなお尻を剥き出しにしてしまう。


 丸出しになったお尻を突き出した格好にされているので後ろから見ればお尻の穴も恥ずかしい女性部分も丸見えになっている事だろう。


 もちろん他の誰に見られるわけではないのだが、遥は人生で一番の羞恥と期待に顔を紅く染めた。




「やだ…これ、恥ず、恥ずかしいよ…」




「ママは今日は鬼になりますからね。大事な子だから怒るのよ?」




 人の膝の上で腹ばいにされてお尻を出されている。あれだけ望み抜いた事が現実に起きていた。そして、どれだけ痛くてもお仕置きが終わるまでは下りられない。




「これからお尻百叩ですからね。しっかりと我慢なさい」




「ひゃ、ひゃく……たたき…」




 心臓が煩い。百叩きという言葉に全身が熱くなった。恥ずかしい。怖い。でも許さないで。ぐちゃぐちゃになっていく思考の中に遥はどっぷりと浸かっていった。 




「いきますよ」




 パンッ!




「痛っ!」




 一つ。丸い右尻にサラのしなやかな平手が叩きつけられた。二つ。左尻にさらに力強く平手を落とす。三つ、四つ。次々と平手を落としていくサラ。痛い事は痛いがまだ耐えられないほどではない。


 遥はサラの膝の上でひぃひぃと呻いたが、それよりもまだ恥ずかしさやお仕置きをされているという状況に興奮していた。




 パァンッ!パァンッ!パァンッ!




「いっ…!ちょ、ちょっ!すとっぷっ!痛ぁっ!」




 三十を超えると流石に痛みが強くなってきて、思わず待って欲しいと懇願してしまった。サラの腕と手の平は細い分だけ速く、鞭のようにしなった。ジムでアスリート並みのトレーニングも積んでいる為相当痛いはずだ。




 バチンッ!バチンッ!バチンッ!




「きゃあっ!ま、待って、…痛ぁっ…ひっ!?」




 痛くて痛くて、恥ずかしくてしょうがない。余りの痛さに声がはっきりと出せなくなってきた。とにかく頭が痛みに支配されて思考をまとめる事も出来なかった。ただお尻に与えられる痛みに身体は素直に反応した。


 丸い右尻が打たれると顔を顰めて呻く。。腫れ上がった左尻を弾かれると歯を食いしばりくぐもった呻き声が出た。お尻の割れ目にスナップの効いた一打を落とされると背を弓なりにしならせて両手をジタバタと藻掻かせた。




 サラは渾身の力を込めて平手を振るいながら本気で怒った母親がどういう風に娘を叱るかを思考した。膝の上の悪い子がお尻の痛みから涙ながらに声を上げるのを怖い顔を作って叱りつける。


 容赦なく振り下ろした平手が遥のお尻で弾ける度に遥のびくりびくりと体を藻掻かせるが意にも介さない…ように演技している。




「悪い事をしたらお説教をしているでしょう?それでも反省できないのでしたらお仕置きをするしかないわ。ほら、まだまだです」




バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!




「やぁっ!ちょ、すとっぷぅっ!無理っ!痛いぃ痛ぁいっ!サラさん一回すとっぷしてぇっ!」




「サラとは何です?ママでしょう?そんな子に育てた覚えはありません!」




「あーん、サラ…ママごめんなさいっ!痛いぃっ…ごめんなさぁいっ!」 




 サラは自分の膝の上で身を捩り、身悶えしたながら痛みから逃れようとお尻をくねらせる遥の腰をしっかりと押さえつける。遥はお尻が腫れあがってくるにつれ、両足を跳ね上げ、踏みつけ、太腿を擦り合わせだした。




「お尻百叩きといったら百叩きです。終わるまで膝の上でしっかりと反省するのよ?」




 バッチィンッ!バッチィンッ!バッチィンッ!バッチィンッ!




「んぅっ!ひゃあっ!だ、だって…あっ!ああっ!いたいいたいぃっ!」




 もうお尻全体が腫れ上がり痛い。遥の丸く可愛い小ぶりな双丘は見る影もなく真っ赤に腫れ上がり、ジンジンとしだしていた。痛いと思った次の瞬間にまた次の痛み。遥は本気で痛みから叫んでいた。




 バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!バチィンッ!




「ごめんなさぃっ!ままっ!ごめんなさぁいっ!」




 ごめんなさい。ゆるして。


 お尻を庇おうと手を伸ばせば背中へと捻り上げられ、お尻を下げたり横へ逃がしたりしようとすればあっさりと辛いお仕置きの場に戻されるだけ。


 その全てが遥の心を揺さぶる。痛みも恥ずかしさも言葉も身体の熱さも。


  


「もうゆるしてぇーっ!」




 遥がサラの膝の上で剥き出しのお尻を晒しながら許しを乞う言葉だけを繰り返す。お尻全体を満遍なく覆うヒリヒリとした灼けつく痛み。ああ、これが本当のお仕置きなんだ。


 痛いと藻掻く遥の声に答えることなく次の平手が左の尻肉の下を弾く。淡々と太腿の近いところに平手を重ねる。遥の身体が苦痛に歪み悶える。


 まだ白いお尻の下の部分を打つのだが、そこは柔らかく痛みが酷いこともサラは知識として知っていた。つまりお仕置きの仕上げとしてはおあつらえ向きの場所だった。




「ほら、お仕置きだから痛いのですよ。終わるまで許しません」




 ビシッ!ビシッ!ビシッ!ビシッ!




「あっ!あっ!もうむりぃっ!」




 びりびりとした痛みに襲われるが暴れすぎて力なく掠れた声を発する遥。ぎゅっと手を握りしめて耐えるのみだった。




「あと十回!もっと痛くします」 




「あーん、やだぁっ!」






















「はぁ…はぁ…うっうっ…」




 遥は百回のお仕置きの間息を詰めて我慢したせいでお仕置きが終わったあとも荒い息をしながら、気づけば訳も分からずしゃくり上げていた。紅く染まったお尻を晒したまま。


 真っ赤に腫れ上がったお尻の熱もあるが、下腹部が熱くてしょうがなかった。辛くて痛くて恥ずかし過ぎたというのに、だ。




「MITと協力して触感完全再現型VRシステムの開発もしてみようかとは思ったのですが、それをしますと遥様を私がお仕置きする必要が無くなってしまうかもしれませんし没にしました」




 遥は部屋の隅で壁に向かってパンツを膝まで下ろしたまま真っ赤に腫れ上がったお尻は丸出しで立たされている。両手は頭の上。反省の時間コーナータイム中。サラは完璧にスパンキングというものを学んで、遥が心の底ではどうされたいと思っているのかを完全に読み取っていた。




「……それはいらない。サラがその、してくれたら…」




 遥は蚊の鳴くような小さな声で顔は動かさずにそう言った。


 お尻が熱くて痛くて恥ずかしい。だというのに下半身が疼いてしょうがなかった。あんなに痛くて止めて欲しいと思っていたのにこの状況が嫌とはまったく思わない。望みの全てが叶ったとしか思わなかった。




「……っ!まぁ!まぁまぁまぁ!終了です!プレイ終了!ハグしましょう!早く!」




「え、ちょ、ま、ままってぇ!お尻しまわせてっていうか、前、前が!!!」 






相当仲が良くなった自覚はあったが、サラとしては愛を押しつける気もなかった。もちろん、遥を手に入れる方法なんて無限に思いつくしそれを実行する資金もいくらでもある。その中から遥がただただ喜びそうな事を少しずつ実行していった。好きだからこそそうしたい。それだけの事。


 それが今前進した。かなり前に。愛を手に入れたわけではないが、パートナーとして受けれ入れてくれた事は間違いがなかった。


 サラはソファから立ち上がると足早に遥に近づくと、唐突に現実に戻されて恥ずかしさの頂点で右手で真っ赤なお尻を左手で隠しきれない恥毛が見えてしまっている前を押さえて慌てている遥に抱き着くのだった。

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