お仕置きの思い出
@kurakusyun
第1話
「そうなのぉ、ほんのちょっとさぁ、門限に遅れたりするじゃん?そしたらさぁ、もう大変。膝の上に無理やり乗せられてぇ、スカート捲ってパンツもしっかり膝まで下ろされて…お尻丸出しだよ?後はもう泣こうが喚こうがお説教されながら百回はペンペン。ていうか、あれはお尻バチンバチンだよぉ?」
私は人を駄目にするソファに身体を沈めながら、呂律が怪しい舌をどうにか回転させながらお尻叩きのお仕置きがどれだけ痛いかを力説していた。
「めっちゃ怖っ。ウチはほっぺ叩かれたりはしたけどお尻は叩かれなかったなぁ」
「本当にママが怒ったら道具でお仕置きされるから楓なんて死んじゃうね」
「うわぁ…」
もう社会人二年目になっているけど、お仕置きされていたのはほんの数年前までの話。
ぶっちゃけ大学を卒業するまで私は英国生まれのママからお尻ペンペンのお仕置きを受けていた。門限破りくらいなら平手で済んだけど、無断外泊レベルのやつはケインが登場する。あれは、はっきりいってデーモンズアイテムだ。
ゆっくりとお説教をされながら打たれる分には泣き叫びつつも謝れる。まだ、喋れる。だが一度だけ、何回叱られても懲りない私に怒り狂ったママがお尻にケインの連打を当ててきた時は、息も出来ずに崩れ落ちて必死にママの足に縋りついて謝った。
さすがにやり過ぎたとママも思ったのだろう、その後は膝の上でお尻ペンペンにしてくれたけどそれでも蚯蚓腫れの上からの平手に、私はごめんなさいごめんなさいと何度も何度も泣き喚きながら謝った。
しかし、いくら素面じゃないとはいえこんな恐怖と恥ずかしい思い出しかない話をしてしまうとは。コンビニでしこたま仕入れてきたストロングでゼロな缶をもう一つ取りだして開けると、氷の入ったグラスに無造作にどぼどぼと注ぐ。
いつもの楓との二人きりの女子会。成人したいい大人の女二人だったが、どうせ二人だけだと部屋着代わりのTシャツとショートパンツで寛いでいた。
私は酔っ払いだすと変なテンションになり昔の話を良くする。楓はその話を楽しそうに聞いてくれるのだ。お尻ペンペンの話をしたのはさすがに初めてだけど。
溶けにくい綺麗な氷をカラカラと鳴らしながらおつまみを一口。ふむ、夜に食べるコンビニのたこ焼きは妙に美味い。得難い知見だ。
「小学生くらいまではパパにもぶたれてけどさぁ、パパの平手もやばかったなぁ。鍛えてるから平手でぶたれてもお尻真っ赤に腫れるの。もうね、すっごく痛いよ?」
「厳しかったんだね、エリカのご両親。あんなに優しそうなのにねぇ」
ちびちびとワインを飲みながら、四人掛けのソファの肘掛けに身体をほとんど預けている楓。アルコールが回り、頬を朱に染めているのが大人の艶っぽさ醸し出しているが投げ出した足や手が子供みたいだ。
「う〜ん、まぁ、私が言いつけ守らないのが悪いんだけど。確かに、怒られる時は泣いて謝ってもお仕置きが終わるまでは許してくれなかったけどぉ、お仕置きされた後は絶対ぎゅう〜ってしてくれてぇ、よしよしってしてくれるんだよ?それが何かあー、大事にされてるんだなぁって思えてぇ、反省できるし心がすっきりするんだぁ…」
私は完全に酔っていたけど、そんな心の内まで話しことにとても恥ずかしくなってしまった。駄目だ、顔が違う意味で熱くなってきた。私はママ譲りの自慢の長い黒髪で火照った顔を隠すようにして覆うときゃーと奇声を発する。
「エリカ、深夜にあんまり大声出さないの。それにしても…ぎゅう〜のよしよしってしてもらってすっきりかぁ…」
楓が奇妙な顔をしている。ワイグラスを傾けているが呑んでいない。視線が私と紅い液体を行ったり来たりしている。
「あのね……エリカさぁ、ちょっとだけ。ちょ〜っとだけよ?私のお尻叩いてみてくれない?」
いきなりそう言った楓は答えを聞くのが怖いのか、片手で顔を覆うようにして、くしくしと擦っている。小さく可愛らしい顔と相まってほとんどハムスターだ。
「はぁ?何、楓?アンタ何悪さしたのよ?反省したいことがあるの?」
私がそう言うと楓はずるずると軟体動物の如くソファから滑り降りて、私の膝にしなだれかかるようにしてきた。伏せている顔に掛かっているショートボブの髪の奥から可愛い上目づかいで愛想笑いをしている。コイツ…怪しい。
「ふぅん、何かあるんだ。楓さぁ…言わないと怒るよ?」
「いや、まぁ、う〜ん…えへへ」
自分から言っておきながら最後の一言を言わない。どうも私が怒るようなことをしたようだ。私が怒ると怖い事は重々承知しているはずだ。
何かと妹のように私に甘えてくる楓を私は良く叱りつけていて、正座でお説教くらいはいつもの事だった。
社会人になってから出来た大好きで可愛い妹のような愛しい親友。お互いに隠し事はせずに相談しあえるある意味伴侶を越えた存在だった。
その私に隠し事とはいい度胸だ。
「ちょ、やだぁ、顔怖いぃ。怒んないでよ〜。ごめん〜、言うから怖い顔無し!」
「したくてしてんじゃないわよ…ほら」
隠し事をする楓の様子に私の酔いは少し醒めてきたようで口調もしっかりとなった気がする。だからそのまま足元で縮こまっている楓に向かって低い声で先を促した。
「早く言う。はい、10~、9~、8、7…654321…ゼr…」
「ちょっ、早っ、わかっ、わかったって!ごめんなさい!エリカのスマホの画面踏み潰したのは実は私でした!」
「……はぁっ!?」
前回の女子会の時、当然のように楓は私の部屋に泊まった。その次の朝起きると私の足元でスマホの画面がそりゃもう綺麗なクモの巣状に割れていた。私ははなかり酔ったままソファで寝てしまったので、当然足元のスマホは自分が割ったのだと思った。
お気に入りなので保護シートも貼って大事にしていたのだけど。
まぁ、それよりも楓が踏んで怪我などしなかった事に安堵した。その楓が私が落ち込んでいるのを見かねてスマホの修理ショップへ連れて行ってくれた。そこそこの金額だったが私の為にと楓が交換費用を出してくれる言ってくれたのが凄く嬉しかった。お金の話じゃなく、私の為にと言ってくれたことが、だ。
しかし、まさかそれが罪悪感から来たものだったとは思いもよらなかった。なんてことだ。
「待って、待って!寝ぼけて踏んじゃったんだけど、エリカが色も形も気に入って大事にしてたし、言い出せなくて…ごめん…ね?えへへ…」
必死に両手を合わせて謝りながらも、笑ってごまかそうとする楓。正座しているのがせめてもの反省の態度だろうか。
「楓ぇ…?私に怒られるのが嫌で黙ってたんだ?嘘ついてさ?修理代はプレゼントだよとか言って…アンタ」
私はそう言いながら言っている言葉が怒りに変換されて体中に渦巻いていく気がした。エネルギーを貯めるような小さく低い声が吐き出される。。楓は私の怒りに染まった顔を見るのが怖いのか薄目で顔を背けながら身を竦めて、ごめんごめんと何度も念仏のように呟く。マンションの最上階の角部屋でお隣は現在空き部屋だ。私は腹筋に力を入れて、目を見開き、楓を叱りつけた。
「楓っ!私がそういうの嫌いなの知ってるよねっ!どうしてそういう事するのアンタって子はっ!」
私が余計なことをしがちな楓を怒るときのパターンだ。楓は怒号から逃れるようにさらに身を小さくしている。自分が悪い事は良く分かっているらしいが、まだその表情には余裕がありそうだった。ほう?
「エリカ〜、ほんっとにごめんね?もうしません。許して?あ、保護シートも一番良いやつ買ってあげる!」
「物のことを言ってるじゃないでしょっ!!私に嘘ついて、隠し事してっ!分かったもういい…楓、アンタさっきお尻叩いて欲しいって言ったわよね?…望み通りたぁっぷりとお尻ペンペンしあげる!お尻を出しなさい!」
私は久しぶりに本気で怒っていた。怒鳴った勢いで立ち上がると腰に手を当てて楓を睨みつける。
私が本気で怒ったのが分かったのか楓はびくりと身を震わせると恐々と仁王立ちの私を見上げながら聞いてくる。
「あ、あのね、エリカ?許してくれるならと思って言ったけど…マジでするの?な、何回くらい?私痛いの苦手…なんだけど…きゃあっ!?」
足元に正座していた楓が言い訳しながら後ずさりしようとする。
私はその手首を掴むと大きい方のソファに連行して、そのままソファに座る勢いで楓の私より小さな身体を膝の上の腹ばいにした。
ショートパンツに包まれた楓の形のいい丸い大人のお尻が突き出される形になる。私がママに良くされていたお尻ペンペンのスタンダードなポーズ。
「や、やだっ!これなんか恥ずかしいって!エリカ、優しくね!?痛くしないでね!?」
私は楓のそんな言葉には答えず無言でショートパンツごと、その下の白い可愛いリボンのついたショーツも膝まで引き降ろした。
随分飲んだ酒気のせいか羞恥のせいか、楓の小さいながらも肉付きの良いぷりんとしたお尻は既に薄紅色に色づいて艶のある色香を発揮している。
普段なら目を奪われかねないくらい滑らかな白桃のようなお尻だったが、生憎と今このお尻はお仕置きが必要な悪いお尻だった。
私は気にせず腰の位置を調整していよいよお仕置きの準備を完了した。
「エリカぁ!?は、恥ずかしいよ!やだぁ、生のお尻出すの!?」
「…悪い子のお尻は剥き出しにして叩くのが当たり前なの!だいたい楓のお尻なんてお風呂で何回も見てるし、恥ずかしくないでしょ?さてと、私めちゃめちゃ本気で怒ってるから…覚悟してね。お尻ペンペン百回だからね!」
私は冷たく突き放すようにお仕置きを宣言すると右手を思いっきり振り上げた。そのまま弧を描くようにして楓の無防備に晒されているお尻に叩きつける。
パァンッ!
「いっ…」
パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「あっ…!うっ!ちょ、エリカ!ひっ…!ま、まってよぉ…痛っ…!」
初めて受ける痛みに楓は私の膝の上で身を固まらせて戸惑っているようだった。膝の上で無理やりにお尻を突き出させて痛みを受け続ける。私が子供の頃から受けてきたお仕置きを今、楓に対してしていると思うと怒りとは別にどうにも奇妙な感覚に陥る。お仕置きをする側の視線は初めてのこと。私もこうやってお尻をぶたれながら叱られている恐怖に身を縮めていたのだろう。
パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!パァンッ!
「んんっ…いたっ!痛ぁ!あっ…!やぁっ!きゃあっ!もういいじゃん、やめてよぉっ!痛いってばぁっ!」
私が右のお尻、左のお尻、割れ目と平手を叩きつける度に楓の背中が跳ねるようにびくびくと痛みに反応している。
「ダメ!悪い子だね、楓はっ!反省してないからそういう事言うんだよ!ほら、ごめんなさいは!?」
それほど背が高いわけでもないが小、中、高とバレー部所属の私の平手はさぞ痛いことだろう。それに全く嬉しくないけど、お仕置きされることに関しては私はエキスパートだ。
同じ場所を連続で打たれること、柔らかいお尻と太腿の境目を打たれることの二つが辛いことはよく知っている。それを混ぜながらお尻を叩くと楓は本気で痛がり出した。
最も手加減せずに打っているおかげで、私の手も楓のお尻同様に真っ赤に腫れ上がりだしている。
ママの手もこんなに痛かったのかと思うと叱られる事ばかりでごめんなさいと思った。後でメッセージを送っておこう…。
バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!バチンッ!
真っ赤に腫れ上がり出した楓のお尻にさらに手加減無しの平手を重ねる。ふと気づけば、楓は子供のように両足をバタつかせ、手で私の膝を掴んで膝から逃れようとしていた。
この位置からは見えないがもう少しお尻を上げてやれば楓の成熟した茂みや女性部分が丸見えになるだろう。それを忘れる程度にはお尻叩きが効いてきている。
「痛ぁいって!痛いよぉっ!もうやだぁっ!すとっぷ!もう終わりにしてぇ!」
生れて初めてのお尻ペンペンのお仕置き。しかもされるのが良く叱っているとはいえ親友の私だ。痛くて耐えられなくなったこともあるだろうけど、恥ずかしさと甘えがまだ勝っているようだった。
「膝から逃げたらお仕置きやりなおしにするよ?仕方がないからもっと厳しくしようね、良く反省できるように!」
「やだやだっ!ごめんなさいエリカ!もう嘘つかないからぁっ!」
私は自分の手の痛みも忘れて楓のお尻を徹底的に叩く。厳しい平手打ちに楓のお尻は紅く染まり、白い肌との境目がくっきりと分かる程になっていた。
楓は私の膝の上で痛みといつまでも許されない恐怖から子供のように泣き喚き始めた。その気持ちが私は文字通り痛いほどよくわかった。必死にお仕置きから逃れようと身を捩り、お尻を右へ左へとくねらせている。
ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!ビシィッ!
「いたいいたいぃっ!わたしがわるかったよぉっ!ごめんなさぁいっ!ごめんなさぁいっ!うわーんっ!」
「後、二十回だよ楓。忘れないように厳しくしとこうね」
私がそう言うと楓かぶりを振っていやいやをしながら髪を振り乱し、我慢していた涙を零した。
私の手の痛みも酷くて尋常では無かったが、それでも平手の強さは緩めない。中途半端にしてはお仕置きの効果が無い事は子供の頃からお仕置きを受けてきた私自身がそれこそ骨身に染みて分かっている。
どれだけ嫌だと言ってもお尻叩きを止めてくれないママを昔は鬼だと思ったものだ。今は私が心を鬼にする番。
バッチィンッ!バッチィンッ!バッチィンッ!
「はぁはぁ…ごめ…えりか…ごめんなさい…はぁはぁ…ぐすっ…いたいぃ…」
きっちり百を数えた後に、逃げようとした罰をお尻の下に五回だけ追加した。
ようやく手を止めると初めての厳しいお仕置きを受けた楓は痛みを我慢していたせいで荒い息をしている。熱い楓のお腹が私の膝の上で上下する。それが今はとても愛おしい気がした。
「もういいんだよ楓。お仕置きはおしまい」
真っ赤に腫れ上がったお尻を晒したまま、それでも謝り続ける姿に思わず苦笑した。
優しく抱き起こして、さっき話していた通りにぎゅうっと強く抱きしめてやると、楓はしゃくりあげながら子供のようにしっかりと私の首に縋りついて首筋にぐりぐりと鼻先を埋めた。
「ちゃんと謝れたね、楓。ほら、よしよし」
「うぅ〜、いたいよぉ…酷いよエリカぁ…お尻ペンペンてこんなにいたいのぉ…?」
「そりゃもう嫌だってなるくらいじゃなくちゃお仕置きにならないじゃない。でも、どう?ちょっとはすっきりした?」
涙を指先で拭ってやると私は楓の額に自分の額をくっつけた聞いてみた。私のの怒りはとうにどこかに消え失せて、楓に対する愛おしさしかなかった。それは楓も同様で表情からは怯えや罪悪感は消えていた。
「う…ん。どうかな。めちゃくちゃお尻痛かった…今もお尻凄くヒリヒリしてるし、ぶたれてる時は恥ずかしいし辛かったけど…そうだね、エリカにちゃんと許してもらえたと思うと何か気持はすっきりした?かも…」
「アハハ、そりゃ良かった。楓は可愛いなぁ…じゃあ、これからも楓が悪い子だったら私がお尻ペンペンして良い子にして上げるからね」
「ちょ、ちょっと待ってよ、エリカ〜」
お仕置きされて熱を持ったお尻を擦っている楓に私は悪戯っぽくそう言った。そんな私に楓は情けない声で文句を言ってきたが、楓の表情は本当に嫌がっているようには見えない。お仕置きの効果は絶大だ。
私の手の平の激痛と楓のお尻のじんじんとした灼けつく痛み。それらは私達の新しい絆になったみたい。実家に取りに帰る勇気はないけれど、楓の為に壊れない値段の張るヘアブラシをプレゼントするのも悪くないともう私は考え始めていた。
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