喫煙所にて

Danzig

第1話


(スーパーの業務員休憩所)


ユカ:お疲れ様でーす。

ユカ:あ、山本さん、今日売り出しのカップ麺、少なくなってたんで、奥から出しておきました。

ユカ:・・・はい、あぁ、あとカルボナーラソースも


ユカ:あ、哲さん、お疲れ様です。

ユカ:今休憩ですか?


哲:あぁ、ユカちゃんも、今休憩?


ユカ:はい


哲:そう、お疲れ。


(ユカが椅子に座る)


ユカ:ふぅ


哲:そういえば、ユカちゃんって、今年受験だろ?


ユカ:ええ


哲:それにしては、結構シフト入れてるみたいだけど、アルバイトなんてしてて大丈夫なの?


ユカ:・・・・ええ・・・まぁ・・・


哲:夏休みって忙しいんじゃないの?

哲:それか、もう大学決まったとか?


ユカ:いえ、そういう訳じゃ・・・


哲:・・・あ、ごめんね、変な事聞いちゃったかな


ユカ:いえ、大丈夫ですよ


哲:そっか、ならいいけど


ユカ:・・・・


(少し気まずい雰囲気)


哲:えっと・・・あ、俺ちょっと外でタバコ吸ってくるよ


ユカ:あの・・・私も一緒に行っていいですか?


哲:それはいいけど、喫煙所だよ?

哲:外だけど、近くにいるとタバコの匂いとか服に着いちゃうんじゃない?


ユカ:いいんです、もう少し哲さんと話したいし


哲:・・・そう?

哲:んじゃぁ、行こうか


ユカ:はい


(二人で、屋外の喫煙所へ向かう)


哲:外はやっぱり暑いな


ユカ:そうですね、外に出るとお店の中は涼しかったんだなぁって感じますね


哲:そうだね


(喫煙所)


哲:ユカちゃん、何か飲む? 折角だから奢るよ


ユカ:有難うございます。


哲:コーラとウーロン茶、どっちがいい?


ユカ:じゃぁ、コーラで


哲:そういうと思った、ユカちゃん休憩室でよくコーラ飲んでるもんね。


ユカ:やっぱり知ってたんですね、私コーラ好きなんですよ。


哲:まぁ、一緒の職場だしね

哲:でも、ここコーラないんだわ


ユカ:じゃぁどうして聞いたんですか! もう・・・

ユカ:なら、ウーロン茶で


哲:あ、ウーロン茶もない


ユカ:どっちも無いんですか!

ユカ:じゃぁ、何があるんですか


哲:「なっちゃん」ならある


ユカ:そうですか・・・じゃあ、「なっちゃん」で


哲:ほい、

哲:ユカちゃんが、なっちゃん・・・


ユカ:何か、無理やり面白い事言おうと思ってますよね?


哲:・・・いや・・


(自販機にお金をいれる)


哲:はい、押して


ユカ:はい、有難うございます


(自販機から飲み物を取り出すユカ)


哲:じゃぁ、俺は午後の紅茶のロイヤルミルクティーで・・・


ユカ:哲さん、そういうの飲むんですね。


哲:そうなんだよ、俺甘いの苦手だからさ


ユカ:それ、十分甘いですよね?


哲:ははは、そうだね


ユカ:別に無理してボケようとしなくても・・・


哲:そっか・・・


ユカ:まぁ、別にいいですけど・・・


哲:ユカちゃんは、ちゃんと突っ込んでくれるから


ユカ:仕方ないじゃないですか・・・


哲:ははは


(飲み物をもって、簡易的な椅子のある場所に移動する)


哲:さて・・どっこいしょ・・・ユカちゃんも座ったら?


ユカ:はい


(煙草に火をつける)


哲:ふぅー・・・

哲:で? ユカちゃん、何かあったの?


ユカ:・・・ええ・・・まぁ・・・


哲:仕事の事?


ユカ:いえ・・・


哲:そう・・じゃぁ、学校の事?


ユカ:・・・ええ


哲:そっか・・・俺、勉強は教えてあげられないよ?

哲:あ、保健体育とかなら、なんとか・・・


ユカ:そういうボケはいいですって


哲:そっか・・・まぁ、俺で良かったら話聞くけど


ユカ:ありがとうございます。


哲:ってか、俺でいいの?


ユカ:ええ、哲さんいつも話かけてくれるし、私も哲さんなら気軽に話せそうな気がして・・・


哲:ふーん・・・で、どうしたの?


ユカ:・・・うん・・・でも、やっぱりなんだか・・・


哲:話したら楽になるかもよ

哲:俺も話聞くくらいしか出来ないけど・・・いや、ボケる事なら・・・


ユカ:もう・・・


哲:ごめんごめん

哲:二人してあんまり深刻だとさ、かえって話し辛いかなぁっと思って


ユカ:哲さんには、聞いて貰うだけでいいですから

ユカ:でも、哲さんのそういう所が話しやすいんですけどね・・・


哲:そう? よかった

哲:じゃぁ話してごらん


ユカ:ええ・・・


哲:・・・・


ユカ:・・・・


哲:どうしたの?


ユカ:ううん・・・私って・・・


哲:うん


ユカ:・・・私って、ブスじゃないですか


哲:そうだね


ユカ:ひっどい!


哲:え?


ユカ:哲さん、ひどいじゃないですか!


哲:いや、悩み事を聞く時は共感しなきゃと思って・・・


ユカ:そういう事は共感とかじゃなくて、「そんな事無いってぇ」って言って下さいよ


哲:そっか・・

哲:(ユカの言い方を真似て)「そんな事ないってぇ」


ユカ:そうですよ、そう言ってもらないと、私が可哀想じゃないですか


哲:「そんな事ないって」


ユカ:そこはいいんです!


哲:そっか・・・それで?


ユカ:それで・・・私、いつも学校の友達に酷い事言われてるんです。


哲:イジメ?


ユカ:イジメと言えば、まぁイジメかもですけど、ちょっと違くって

ユカ:「ブス」とか、「お前を見てると気持ち悪くなる」とか

ユカ:「おえぇ」とか、吐くまねされたり・・・・


哲:それ、立派なイジメじゃん


ユカ:でも別に叩かれるとか、物を隠(かく)されるとか、そういうのは無くて


哲:それでもユカちゃんが傷ついてるならイジメでしょ


ユカ:じゃぁ、そうなんでしょうけど・・・今はそこじゃなくて


哲:あぁ、ごめんごめん・・・それで?


ユカ:そういうのが、小学校の頃からあったんですけど、中学になってから酷くなって、高校に入ってからも変わらなくて・・・


哲:ふーん・・・


ユカ:ずっと、ブス、ブスって言われ続けて

ユカ:それでも、ずっと我慢してて・・・・高校3年間も、ずっと我慢して

ユカ:それで、ようやく「もうすぐ卒業」ってとこまで来たんですけど・・・


哲:大変だったね。

哲:でも、もうすぐ終わるんなら、何よりじゃないの?


ユカ:そうなんですけどね・・・

ユカ:今度は大学に入ってもそうなのかなぁって思うようになっちゃって・・・・


哲:それって、そのイジメてる奴らと志望校が同じとか?


ユカ:そうなんです・・・それを知ってから・・・


哲:だったら、志望校を変えてみるとか?


ユカ:ええ、それも考えたんですけど・・・


哲:けど?


ユカ:今の高校の友達とは違う大学に行ったとしても、今度は、大学で知り合う、新しい人たちにも、同じ事言われたらどうしようって思っちゃって・・・

ユカ:なんだか、そんな想いまでして大学に行くのってどうなんだろうって・・・


哲:そうだったのか・・・


ユカ:ええ・・・・


哲:うーん・・・


ユカ:なんか、考えちゃいますよね。


哲:そうだね、やっぱり今日中にソフト麺の発注出しておかなきゃいけないかなぁ・・・

哲:4箱にするか、3箱にしておくか・・・・


ユカ:え?


哲:ん?


ユカ:私の話は?


哲:聞いてたよ


ユカ:じゃぁ何か言って下さいよ、私、勇気出して言ったんですから


哲:いや、聞くだけでいいっていうから・・・


ユカ:そういう意味じゃないですよ

ユカ:何も言ってもらえないと、勇気出して話した私が馬鹿みたいじゃないですか


哲:「そんな事ないってぇ」


ユカ:それはもういいんです


哲:そう・・・

哲:今みたいな、ちょっと怒った感じのユカちゃんって、可愛いと思うよ


ユカ:え?


哲:男も女も、若いうちってのは見る目がないからなぁ、仕方ないんだよ

哲:大人になればさ、うーん・・・例えば、サザエさんでいえば「花沢さん」が一番いいって事に気づくんだけど、若い時はそれが分からないから、「かおりちゃん」がよく見えちゃうんだよ


ユカ:私、サザエさん知らないんです


哲:え? マジ?


ユカ:ええ・・・勿論、名前は知ってますけど、人物とか詳しくは知らなくて・・・


哲:ショックだわぁ


ユカ:それって「ちびまる子ちゃん」で言えば誰ですか?


哲:俺、ちびまる子ちゃん見てないんだわ


ユカ:ウソでしょ?


哲:ホント


ユカ:あぁ・・・じゃぁ何か別ので


哲:うーん・・・まぁ、つまり、デビルマンの牧村美樹(まきむら みき)は、辞めておけって事だよ


ユカ:デビルマンって何ですか?


哲:そうか・・・サザエさん知らないなら、デビルマンも知らないよなぁ・・・

哲:まぁデビルマンっていうのは、悪と戦う正義のヒーローだよ


ユカ:知らないですね。


哲:やっぱりショックだわぁ・・・サザエさんほどじゃないけど・・・


ユカ:正義のヒーローだと、セーラームーンでいうとやっぱり、マーキュリーよりもジュピターって感じって事ですか?


哲:セーラームーン知らないしな・・・


ユカ:そうですか・・・


哲:うーん・・・じゃぁ、ガンダムは知ってる?


ユカ:ええ、ガンダムなら分かります。


哲:よかった、やっと共通の話題が見つかったな


ユカ:ええ、よかったです。


哲:まぁつまり、いい女ってのは、決してセイラさんじゃないよって事さ


ユカ:セイラさんって誰ですか?


哲:セイラさんは、セイラさんでしょ! ユカちゃん、今、ガンダム知ってるって言ったじゃない


ユカ:私の知ってるガンダムって「ユニコーン」ですけど・・・


哲:あぁ・・・全くの別物だね・・・


ユカ:・・・・あ!エヴァンゲリオンなら知ってますけど、哲さんは?


哲:おお!、エヴァなら分かるか

哲:やっと話が合わせられ・・・る・・・けど


ユカ:どうしたんですか?


哲:いや、確かにエヴァは二人とも知ってるんだけど・・・


ユカ:けど?


哲:あれにはいい女っていないんだよな


ユカ:えーー! そうなんですか?


哲:うん、面倒なのばっかりで・・・でも、まぁモブでいいならヒカリちゃんかなぁ


ユカ:ヒカリちゃん?


哲:ほら、学級委員長の


ユカ:あぁ、そういえば居ましたね


哲:歳をとると、そういう子の良さが見えて来るんだよ


ユカ:そうなんですか?

ユカ:でもそれって、単なる哲さんの好みってだけじゃないんですか?


哲:そうだよ?


ユカ:そうだよって・・・


哲:そりゃそうさ、俺が日本のいい女の基準を決めてる訳じゃないんだし


ユカ:そんな・・・


哲:でも、それでいいんだよ


ユカ:それでいいって、どういう事ですか?


哲:人にはそれぞれ好みがあって、世の中にはいろんな人がいるから、いろんな好みがあって、沢山の男がいるから、それだけ沢山の女が誰かの「いい女」になるのさ。


ユカ:そっかぁ、だから、ブスが好きな人もいるって事ですね。


哲:そういう人はいないかなぁ・・・


ユカ:そんなぁ、酷いじゃないですか、今の流れだったら、ブスが好きな人もいるって話にならないと・・・


哲:だって、ブスってのは欠点でしかないだろ。

哲:可愛い子が苦手っていう人はいても、ブスほどいいって言う人は聞いた事がない


ユカ:そんな言い方酷いじゃないですか

ユカ:さっきの、なんかいい話ぽかったから、哲さんの事見直しかけたのに


哲:いや、だからさ、人には欠点があったっていいんだよ、欠点のない人なんていないんだから。

哲:欠点以上の魅力があればいいんだよ、だから「ユカちゃんがいい」っていう人も出て来るって


ユカ:そんな人がいるとは思えないんですけど・・・


哲:まぁ、気持ちはわかる


ユカ:もう・・・そこは共感しなくていいんです!


哲:さっきも言ったけどさ、、若いうちは見る目がないから、表面的な「顔」だとか「オッパイ」だとか、そういう分かりやすい所にしか目がいかないんだよ。

哲:だから、若い子達って「可愛い」とか「美人」だとか「巨乳」って事しか言わないだろ?


ユカ:まぁ、確かにそうですね・・・でも私、胸もそんなに大きくないし・・・


哲:うん、それは残念


ユカ:もう、哲さん最低!


哲:ははは、でもさ、人生をいろいろ経験すると、人をいろんな角度からみられるようになれて、

哲:そういう風になって、ようやく人の魅力に気づくって事もあるんじゃないの?


ユカ:うーん、そうかもしれないけど

ユカ:でも実際、私は今が辛いんですよ、ずっと先の事なんて考えられないし・・・


哲:まぁ、気持ちは分かるけど・・・


ユカ:それに、私、ブス、ブスって言われて気持ちが塞いじゃって、クラスの友達ともあんまり上手に接しれないし・・・


哲:上手く接しられないのは、そいつらとは友達じゃないからだよ

哲:それに上手くやる必要なんてないって、学校なんて、それなりに過ごしていればいいのさ


ユカ:でも・・・やっぱり友達って思いたいじゃないですか


哲:そりゃ、気持ちはわかるけど、実際、うまく行かないんだろ?


ユカ:ええ・・・


哲:学校ってのはさ、社会の縮図みたいなもんで、いろんな奴がいるんだよ

哲:意地悪な奴、何かあると直ぐにケチを付ける奴、

哲:素直じゃない奴、マウントを取りたがる奴、

哲:人を当てにする奴、なんでも暴力で解決しようとする奴、

哲:泣けば解決すると思ってる奴、親の力を自分の力だと思ってる奴・・・

哲:そんな奴らが、ただ「同じ年に生まれた」ってだけで、一カ所に集められてるんだよ、そんな奴らとは上手く行かなくて普通だって。


ユカ:そうか・・・

ユカ:哲さんって、意外といい事言うんですね


哲:って、ロックミュージシャンが言ってたなぁ・・・


ユカ:台無し・・・黙ってれば恰好よかったのに

ユカ:まぁ、そりゃ、そう言われればそうかもしれないけど・・・・


哲:学校ってのはさ、そういう奴らとも、それなりに過ごして行く訓練をする場所なんだよ

哲:だから、同じクラスだからって、別に友達なんかじゃないんだって。


ユカ:って、ロックミュージシャンが?


哲:うん、言ってた


ユカ:・・・もう・・・


哲:まぁ、それはさておきさ

哲:そりゃ、上手く行く方がいいに決まってるさ、友達だって沢山出来た方が楽しいかもしれないけどさ

哲:だけど、上手く行かないからって、そんなに気にする事もないんじゃないかな


ユカ:それは分かりましたけど

ユカ:やっぱり、私は自分がブスってのにコンプレックスがあるし、若いうちだけだって言われても、やっぱり顔がいいのは羨ましいし・・・


哲:別に顔なんて、金をかけりゃ、幾らだって綺麗に作り変えられるじゃない


ユカ:そりゃそうですけど、高校生にそんなお金がある訳ないじゃないですか


哲:いや、整形手術とまではいかなくたって、化粧だけで見栄えのする顔になれるよ

哲:俺は男だから、化粧品代が幾らかかるかは知らないけど、ネット動画で、ひでぇブスが美人に変身する化粧動画が出回ってるから検索してみればいい


ユカ:ひでぇブスって・・・・失礼過ぎますよ


哲:なんなら、ユカちゃんだって、化粧して、いい顔になれば、ユカちゃんをブスだって言った奴らが後悔するかもしれないし

哲:ひょっとしたら、ユカちゃんに惚れるかもしれないよ


ユカ:それいいかもしれないですね、ちょっと挑戦してみようかな


哲:まぁ、それならそれでもいいけど・・・でも、本当にそれでいいの?


ユカ:え? どういう事ですか?


哲:化粧が悪いって言うつもりはないけどさ

哲:顔で人を判断しているような奴らに媚びるような事したって、仕方ないんじゃないの?

哲:それに、化粧したって元の顔は変わらないし、余計に化粧を落とした顔を人に見せられなくなるんじゃないの?


ユカ:でも、だってそれは・・・


哲:ユカちゃん、

哲:社会にはね、本当に沢山の人がいるんだよ。

哲:どんな人が魅力的で、どんな人が醜(みにく)いのか、そういう事がわかる人なんて沢山いるんだよ。

哲:うちの店の中だってそうさ、ユカちゃんをブスだって言ったり、避けたりする人間がいるか?


ユカ:いや、いませんけど・・・


哲:それはね、この店で一生懸命働くユカちゃんが魅力的だからなんだよ。

哲:お客さんに笑顔で挨拶するユカちゃんが可愛く見えてるんだよ。

哲:化粧なんかしなくたって、この店で働くユカちゃんが魅力的だってみんな思えてるんだよ。

哲:この店だけじゃなくても、世の中にはそう思う人間が沢山いるんだよ。

哲:だから、ユカちゃんの学校にいるようなガキ連中だけが人間だなんて思わない方がいい。


ユカ:哲さん・・・・


哲:って、昔、深夜ラジオで言ってた


ユカ:・・・もう・・・ホント台無し・・・


哲:ははは

哲:そういえば、うちに斉藤さんっているだろ?


ユカ:ええ、お惣菜売り場の方ですよね?


哲:そうそう


ユカ:斉藤さんがどうかしたんですか?


哲:あの人、美人か?


ユカ:・・・それは・・・


哲:な?

哲:ユカちゃんに負けず劣らずのブ


ユカ:哲さん!


哲:あぁ、ごめんごめん


ユカ:哲さん、ホント失礼ですよね

ユカ:さっき、ちょっと涙が出かけたけど、引っ込んじゃったじゃないですか・・・もう・・・


哲:ははは、まぁまぁ


ユカ:で、斎藤さんがどうしたんですか?


哲:あの人だって、旦那さんもいれば、お子さんもいる。


ユカ:あの人だってって・・・・まぁ、そういえば、確かにそうですよね。


哲:オマケに、彼氏までいる


ユカ:え! それホントなんですか? 旦那さん以外に?


哲:あ、ごめんごめん、今の無し・・・


ユカ:えー


哲:・・・・・・


ユカ:あれ? 哲さん・・・どうしたんですか?


哲:あの人だって、旦那さんもいれば、お子さんもいる。


ユカ:いや、それはさっき・・・


哲:今、編集点作ってたの、こっからが続き


ユカ:そんな、バラエティ番組じゃないんですから、もう遅いですよ。


哲:ははは、そうだね。

哲:でも、今の内緒にしてね。


ユカ:もう・・・


哲:あの人、意外とモテるんだよ


ユカ:そうなんですね、「意外と」って言うのが、凄く失礼ですけど・・・


哲:まぁ、まぁ

哲:とにかくさ、人間は顔じゃないって事だよ


ユカ:哲さん、いい事言ってるのに、全部台無しですよね。


哲:ははは


ユカ:・・・はぁ・・・


哲:まぁまぁ・・・


ユカ:でも・・・男の人にとって、斎藤さんの魅力ってどういう所なんですかね。

ユカ:やっぱり笑顔とかなんですか?


哲:あの人は、オッパイが大きい


ユカ:もう最低!

ユカ:ちなみに私は大きくないんですけど!


哲:・・・・


ユカ:今、私の胸見たでしょ!


哲:ははは


ユカ:哲さん、ホント最低!

ユカ:男の人って、やっぱり胸なんですね。

ユカ:じゃぁ、私はやっぱりダメなんじゃないですか


哲:違うよ


ユカ:何が違うんですか


哲:斉藤さんの魅力は、斎藤さんに魅力を感じた人じゃなきゃ分からないんだよ。

哲:人には、それぞれ好みってもんがあるし、それは決して顔だけじゃないって事。

哲:特に結婚するならね。


ユカ:・・・


哲:さっきも言ったけど、顔で判断するのって、若いうちだけだし、

哲:逆に言えば、歳を取っても「顔だ」って言っている奴は、それ程幸せにはなれないんじゃないかなって思うんだよ


ユカ:そうなんですか?


哲:あぁ、俺はそう思ってるよ。


ユカ:どうしてですか?


哲:顔なんて歳をとれば、どんな人だって、シワくちゃになるだろ?

哲:そうなると、当然、顔だけなら若い子の方がよく見えるじゃない。


ユカ:確かに、そうですね・・・


哲:惚れた相手が歳を取ったってだけで、魅力を感じなくなるって幸せか?


ユカ:それは・・・


哲:顔で判断している奴って、結局、相手からも顔で判断されてるんだよ。

哲:それでも、若いうちはいいさ、でも自分が歳をとったら、相手は自分よりも若い子の方に魅力を感じちゃうって事さ。


ユカ:まぁ、確かに。


哲:やっぱり、いつまでも、惚れたり、惚れられたりしてる事って幸せだし

哲:人の内面に惚れるって事は、いつまで経っても変わらないって事じゃないのかなって思うよ。


ユカ:なるほど・・・いい話ですね。

ユカ:で、それは誰が言ってたんですか?


哲:うーん・・・今度は誰にしよう・・・


ユカ:哲さん! 今までのって、嘘だったんですか!


哲:どうだろう・・・


ユカ:もう・・・なんだぁ、私真剣だったのに・・・これじゃ何が嘘で、何が本当か分からないじゃないですか


哲:嘘か本当かなんて、どっちでもいいんじゃないの?

哲:ユカちゃんが考える切欠になれば


ユカ:でも・・・


哲:世の中には沢山の人がいるってのは本当だし、いろいろ経験すれば、それだけ色んな角度から物が見られる事も本当。

哲:ユカちゃんが社会人になれば、ユカちゃんの悩みってのが、若いうちだけのものだって分かるよ、多分


ユカ:哲さん・・・


哲:だから、もう暫くは悩むかもしれないけど、大学には行った方がいいよ


ユカ:そうですね、分かりました。

ユカ:もうちょっと前向きに考えてみます。


哲:うん、それがいいんじゃないかな


ユカ:ところで、さっきの斎藤さんの話って本当なんですか?


哲:何が?


ユカ:旦那さんの他にも彼氏がいるって・・・


哲:本人に聞いてみれば?


ユカ:できませんよ、そんな事


哲:だよね、俺も出来ないよ


ユカ:・・・もう・・・嘘なんじゃないですか・・・


哲:他の人の事なんて、どうだっていいんじゃない?


ユカ:まぁそうですね・・・

ユカ:私、今日話せて、少し楽になった気がします、やっぱり哲さんに話してよかったです。

ユカ:ジュースご馳走様でした。


哲:これくらい安いもんだよ


ユカ:なんだかんだ言って、哲さんっていい人ですよね


哲:「そんな事ないってぇ」


ユカ:それはもういいんです!


哲:ははは、じゃぁ、そろそろ仕事に戻ろうか


ユカ:はい!


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喫煙所にて Danzig @Danzig999

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