※※※


ピュオーピュオー ヒュオオンヒュオオン

風は遠くへの憧れを吹き込んだよ

人の夢に 獣の夢に

草木の夢に 卵の夢に

埋もれてまどろむ死者の夢にさえ


世界に閉じ込められたものたちは誰も風より遠くへ行けない

ただ世界の内側をうろうろとふらふらと

風は世界をかき混ぜる

閉じられたままのドアはこじ開ける

死者の息を盗んでは、赤子の口に押し込んで

時にはその逆も楽しんでぐるぐると

世界を混ぜてお前たちを迷子にさせる

飽きたら次の玩具を探しに行こう



「あらまあ」

醜い姫は顔を不格好にひきつらせて笑った。

「本当に全身赤いわ、なんて醜いこと」

ひっ、はっ、ひっ、と喉元をよじらせ、体をねじくれさせて笑う。

国の内外から集められた醜い侍女たちがそれに唱和して、アハハ、イヒヒ、と笑った。

黒い宮殿に響く嘲笑。

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