ベターチョイス
@7576
転生小学生から始める現代ダンジョン生活
「選択せよ、選択せよ、己の進化を選択せよ……選択せよ、選択せよ」
そんなおどろおどろしい骸骨が喋るような男の声がひたすら聞こえてくる。
思ったよりうるさいなこの水晶。
喋るとは授業で事前説明されてたけども。
そんなふうに小学生になった俺はこの暗くて狭苦しい部屋で思った。
時は平成、西暦20xx年、大ダンジョン時代。
この喋る水晶を見た瞬間にこの世界に俺は第二の生を授かったことに気づいた。
気づいてないだけかもしれないが転生前に白い世界で神様と話すとかチートとかはない。
俺には前世の知識と人格だけは残っていた。
前世はしがないゲーム配信者だった。
今世は7歳の小学一年生。
妙に大人びていて、学んだことないことを知っているし、ませている自分の事には違和感を抱えてはいた。
頭がいいのかもしれないと自惚れかけていたけれど流石に自分がそこまで頭がいいとは子供ながらに思えなかった。
なかなか小学校には馴染めず1人近くの図書館に行きスキル一覧をただひたすら見ているそんな小学生一年生だったわけなのだが。
そんなモヤモヤがこの水晶をみて解消された。
はっきりと過去を思い出したのだ。
前世は田舎の安い狭いアパートで暮らしながらゲーム配信でなんとかギリギリ生計を立てていた男だった。
チャンネル登録者数2万を超えて上げた動画の視聴者も少ない時でも5000人はいたんだ。
ゲームの耐久配信をしてたら体を壊して死んだ本当にしょうもない配信者だったようだ。
ゲーム好きとしては本望な死に方ではあったかもしれないとも俺は思うので後悔はない。そんな男だったのだ。
うん、今世では体に気をつけよう。
「選択せよ、己を選択せよ」
そしてこの今世である。
目の前にはしゃべる水晶。
周囲は暗く狭い部屋。
占い師がもつような丸い水晶は小学校机の上にあり俺は椅子に座って、その水晶をみていた。
時は平成、大ダンジョン時代。
これはどこの小学校でもやってる、はじめてのスキル選択の時間というやつだった。
暗くて狭い部屋は小学校の一室を臨時で選択場にしてるから。
水晶が喋っているが裏で大人がスキルを使って喋っているのかもしれないし本当にこの水晶が喋っているのかもしれない。
この世界にはダンジョンや魔法や魔物、スキルがある。けれどそれは生まれながらに授かるものでも誰かに与えられるものではなく、人々は自分自身でどのような力を得るか選択する。
スキルを選択し、そのスキルを磨く。
そういう世界だった。
そしてこの平成の日本においては義務教育終了の中学校卒業までは最低毎年1つのスキル習得を行うことになっているのだ。
その選択は各個人に任されている。当然あらかじめスキルに関して色々な事を教わっている。
でも何せ小学一年生だ。
俺の記憶にある限り授業では基本的なスキルしか教わってはいない。それは『剣術』とか『斧術』とか……いやこれはダンジョン冒険者に憧れる小学生的なイメージに引っ張られているな。
現代的なスキルである『運転(自動車)』とか『銃術』といった何かを扱う技能系スキルだったり、筋力や敏捷上昇といった各種能力補正を受けられるパッシブスキルだったり、炎術や土術と言った基本的な四大属性魔法だったり、色々だ。
ちなみに運転全体が普通に上手くなって運転中疲れづらくなるスキル『運転』もあれば特定のタイプの運転だけがとても疲れづらく上手くなるスキル『運転(⚪︎⚪︎)』といったようにあり、無数のスキルがこの世界に存在しているようだ。
小学校一年の少しの授業で教わったスキルの数だけでも前世のゲームの比にならない数であり、その中から一つを子供に選べというのは酷と思えるほどだった。
将来何になりたいか考えて親や先生と相談してしっかり選びましょうとは授業で言っていたが。
「選択せよ……」
俺は考えている間もずっと元気にしゃべる水晶に向かって声を出す。
「ステータスオープン」
そう唱えると水晶は黙り、水晶から文字が浮かび上がる。
賢木・守(サカキ・マモル)
7歳
レベル0
能力補正
筋力0
敏捷 0
耐久 0
精神 0
魔力 0
神力 0
割り振り可能ポイント無し。
スキル
無し。一つ選択可能。
ー選択してくださいー
このようなステータスが表示された。
能力補正に関してはゲーマーの俺としては一般的なものだ。ただ最後の三つに関しては学校で習った事を思い出すに、精神は超能力系のスキルに影響し、魔力は魔法、神力は神術に影響するらしい。威力や成功率や耐性にも影響するとかで、さらに最後の三つは筋力があれば重たいものが持てるのと同じように1ポイントでも補正がつくとテッシュを揺らす程度の簡単な術が使えるようになるんだとか。
これ以上は小学一年生向けの説明だったからさらに詳しいことはわからない。
能力補正割り振りポイントはレベルアップやスキルで得られる形となってるそうだ。
レベルアップは魔物を倒すと倒した魔物から力が手に入るとのことだった。
全て学校の授業で言っていたことで、前世の記憶を完全に思い出した今は半信半疑ではある。
さて前世の記憶を思い出した今、俺は何を選ぼうか。
無数にある選択肢、習ったこの世界の仕組みとしては次のスキル習得は小学二年生、つまりは来年となるはずだ。ちょっとずつスキルに慣れていく方針になっているらしい。昔は暴走した子が多くて大変らしかった。
この後スキルを習得した小学生達は授業で己のスキルの磨き方を学びながらも実際に魔物と戦うことになる。まぁ本当に弱い魔物とらしいのだが……それを考えると戦闘に有利なものを取りたい気持ちもあるが、はじめてのスキルは長い目で見て選びたいところだ。
前世の記憶を思い出した俺は今世ではどのような人間になりたいかそれをいま一度考える必要があるだろう。
ちなみに前世を思い出す前は神力を上げるようなスキルをとろうとしていた。
なぜなら今世の俺は前世の神社のような場所で育ったからだ。
ただ実の親は冒険者であったが既に亡くなっており親代わりの守り神的な存在に育てられたようだ。
ここは現代ファンタジー世界……土地に根付く鎮守神のような存在がふつうにいるらしく記憶にあるのは青い人の形の優しく喋る霊体だ。
どこかのペンションで殺人事件に巻き込まれてそうだなと何故かずっと思っていたがいまはその理由がわかる。
ノベルゲームのキャラクターみたいな見た目の霊体だったからだ。
まぁこんな変な子供をずっと育ててくれている親代わりのそう言った存在に育てられた子供としては確かに神力をあげたいのもわかるというものだ。
神術は回復とかの他にそういう神とか霊体とかの存在に対してプラスの影響を与えられる魔法が多いらしい。
正確には神術とか言われてるらしいがまぁ前世感覚としては超能力も神術も全部魔法と呼んでいいだろう。
だがせっかくの2度目の人生の選択がそれでいいのだろうか。
俺はしっかり考えた。
この体は冷静だ。前世の俺はこんなにも冷静ではいられなかったはずだ。
転生に気づいていきなりこんな事になっていたら前世の俺ならストレスで手汗が出たり動悸や息切れがおきたりしていてもおかしくないはずだ。一度死んでるわけだし……。
おそらく前世の記憶を持ちながら生まれた分、2人分の精神があるに違いない。精神的に強い体になっているようだ。
チートとはいえない程度の転生特典というやつだろうか。
足の速さとかもあればよかったのだが長所に気づけたので良しとしよう。
前世では俺はゲームが好きだった。
特に上手いわけではなかったかもしれないが多少はそこらの人よりかはゲームをしていたし上手かったとは思う。
こういったステータスがあって魔法やスキルがあるゲームもあった。
そこから考えるに神力を上げようと、能力値をあげるようなスキルを取ることは間違っていない気もする。
熟練度というものが多分スキルにはある。
使えば使うほどスキルの効果が上昇するというアレだ。
スキル熟練度上げ……ゲームでは何回も無意味に剣を素振りしたり、アイテムを生産しまくったり、盗みまくったりしたあれだ。
熟練度をあげる事を考えると幼い頃に取るべきスキルというものは決まってくる。
熟練度をあげるのが難しいスキルを取るべきなのだ。
上げるのが難しいスキルは任意発動で何回も好きな時に使えるスキルではない。任意に発動できれば上げるのは苦行ではあるがやればやるだけ熟練度が上がる分簡単だ。
取るべきはやれないスキルなのだ。
それはつまり常時発動型スキル、つまりパッシブスキルを習得すべきだという事だ。
とあるゲームだと各種パッシプ耐性スキルを上げるためにあえて火に炙られ続けたり毒をがぶ飲みしたりとした記憶もあるがパッシブスキルは上げるのにとにかく時間がかかった記憶が脳裏をよぎる。
そこまでストイックにリアルで生きたくはないが参考にはなるだろう。
あとは当然魔法のある世界に転生したのだから魔法を使えるようにはなりたい。
神力だけではなく、魔力、精神をあげて全種類の魔法を覚えたいものだ。
もちろんそんなことは不可能だと頭ではわかっているが……いや、まだこの世界について俺は全然知らないのだから断言はできないか。
ネットもそこまで普及してないこの時代の小学一年生の観測できる世界などミジンコ並だ。
「そういえば能力補正目当てならばちょうどいいのがあるな。それにこの人生の選択を先延ばしにできる。地味だがベターな選択だな」
そうして俺がとったスキルは『体操』だった。
このスキルは授業でもおすすめされていたし俺が読んだスキル大全という本に書いてあった。
その内容を思い出した。
ースキル大全ー
『体操』
名前の通り体を操るスキル。
分類は超能力系とも言われる精神の能力補正を受ける常時発動型スキルである。
その効果は自身の体を意のままに動かすことができるようになるスキルである。
半身不随患者が事実上完治した事例やこのスキルを極めた場合、心臓を失っても生命活動を保った事例も確認されている。
また副次効果としてスキル成長の過程で能力補正ポイントを得る事ができることがわかっている。
各国の初等教育機関で習得が推奨されているスキルの一つである。
とのことで将来は心臓が無くなっても死なない不死身の男を目指すぜ。
なお普通に栄養取らないといけないし、痛覚耐性とかもないし他の重要な臓器がなくなったら死ぬ模様。
どっちかというと目当てはポイントの方だ。
これでスキルが伸びたら魔法関係の能力を伸ばせるという目論見だ。
この世界の定番スキルなら問題もないだろう。
そうして俺のスキル選択は終わった。
「これが汝である……これが汝である……」
ちょっと寂しげに喋り出した水晶
はじめはちょっと怖かったけれどなんだかちょっと可愛く思えてきた。
「いまなんじってきいてるの?」
ちょっと小学生風にふざけてみた。
「これがおまえ……これがおまえ……」
ちょっと変えてきたよ。この水晶、話通じるのかな。それとも理解されなかったと判断して少し伝える言葉を変える機能がついてるのか。令和の時代だと小学生にお前呼びはやばいとか話に聞いた気もするがここは平成だし、というかまぁどうでもいいか。
「ありがとうございました。また来年よろしくお願いします」
話が通じているとなれば、真面目に感謝を述べる。
ただ、特に返事はなかった。残念。
入学して数ヶ月たっても友達もできていない浮いている俺はスキルは勝手に使わないようにだとかもらったスキル登録証は無くさないようにだとか諸注意も含めた授業が終わって誰と話すこともなくそのまま帰宅した。
周りでは子供同士、何のスキルにしたか楽しそうに話していたよ。
俺のクラスは派手なアクティブスキルが人気みたいだな。さっき使うなって言われてたのにさっそく魔法を使ってる子もいた。
気持ちはわかるぜ。
だが俺はそのノリに混じれる気がしない。
前世の記憶を思い出した今、ずっと抱えていたモヤモヤは解消されたけれど、ちょっとだけ悲しくなった。
2週目の人生で子供になってもまた普通の子供と同じように過ごすなんて器用なことは俺にはできないな。
もう俺はすれちまった汚い大人なのさ……。
なんてその悲しさを持て余していた。
その悲しさも学校を出て歩き出すころには忘れ去った。
体の感覚が変わっていることに気づいたからだ。
『体操』スキルを選択したことで俺の体は今俺の意思でしっかりと動いているのだ。
本来人間の体は思ったように動かせていると思っていてもそのイメージとはズレがあるものだ。無意識に力をセーブしていることもある。
それがなくなったら?
スキルによって俺は体の動きと脳内のイメージが一致した状態となっているのだ。
これはすごい感覚だった。
何といったらいいか、
「理想的だ。力が溢れてくるような感覚……」
あまりに感動して学校を出てすぐに結構大きな声で呟いてしまった。
通りすがりの主婦に聞かれてちょっと暖かい目で見られた気がした。
男はなかなか子供にはなれないが厨二病には簡単になれるのだろう。
体が思い通りに動くので駆け足で家に帰った。
思い通りに動く体、少しずつ体の動きを変えていくことで徐々に走りやすくなりスピードが上がっていった。
家は少し遠い、住宅街を抜けてちょっとした山の上にある。
道はコンクリートとはいえ山道を登るから歩くと30分ぐらいの距離はある。
何気に小学生一年生とはいえ重いランドセルを背負ってこの距離を走れるとはすごい体力があるものだ。
前世の俺が体力無さすぎただけではあるか。
ただもしかするとこれは筋肉痛になるかもしれないな。
スキルによって思い通りに動かした反動はありそうだ。
「ただいま〜」
「おかえりなさい」
前世の神社風の家が我が家だった。
山道から階段を登った先にある家だ。
返事をしてくれたのはノベルゲームのキャラクターみたいな青い霊体でここに祀られている存在だ。
名前は忘れ去られてしまったのだとか。
地元の人もよく参拝にはくるけれどただ神様だとか守り神だとかで祈られている。
亡くなった両親とは両親が幼い時からの深い関係だったらしく僕の面倒を見てくれている。
パパともママとも言える存在なためまぁなんと呼んでいいかはずっと悩んでいる。
神様と一応よんでいるけれど親だとも思っているのだから親としても呼びたい気持ちがあったのだった。
「選択はどうだった?」
神様はスキル選択についてさっそく聞いてきた。
「悩んだけれど『体操』にしたよ。神力に関してはまだ少し先にすることにした」
「それはよかった。いい選択だと思うよ。神力を学ばなくてもいいんだし、なにもこの家に縛られる必要はないんだ。私は神様なんだからね」
そう優しく言ってくれた。
前世の記憶を思い出す前の俺は親代わりのこの存在、いやこの人に恩返しをしたいと神力を取ろうとしていたのだ。
ただ、この人はそんな必要はない、自分の好きな将来を目指すんだと常々言ってくれていたのだ。
「あのね、神様、僕、いや俺には前世の記憶があるみたいなんだ。ずっとモヤモヤしていたんだけれど、あの水晶を見た時、思い出したんだ」
この人にだけは伝えたかった。
嘘偽りなく。
「そっか、思い出せてよかったよ」
そう優しく言うのだった。
「知ってたの?」
「なんとなくね。ただそのまま思い出さないままの人が大半だからね。教えるわけにもいかなかったんだ。どこの世界のどんな存在だったとしてもこの世界で生まれたキミは前世の記憶があってもキミ自身だから変わらないよ。賢木守として好きに生きていいんだよ。記憶を持って生まれてくるならそれが世の流れってものだからね」
これが神様か。
「そっか、そういうものなんだ。ありがとうざいます。本当に。俺の前世には神様とこうして話すことなんてなかったし、魔法もなかったみたいなんだ。俺はここでこの世界で魔法を使いたい! あ、神術とか超能力も俺からしたら魔法で、だから全部興味があります!」
あまりにも優しくされたために俺は泣きながらそう叫んだ。子供の体に引っ張られているのだろうか。それは俺が賢木守に他ならないことの証左でもあった。
「ああ、そういうことなら神力に関しては私も手伝えると思うよ。気にすることはない。さぁ、長々話しててもしょうがない。それに走って帰ってきたようだね。汗だくだろう。さぁ家に入ってシャワーを浴びてくるんだ」
俺は汗と涙をシャワーで洗い流したのだった。
決めた。
俺は前世にはなかったこの世界だけの要素を満喫すること、それを俺の第二の人生の目的にする。俺は好きに自由に生きるよ。
シャワーを浴びた後は体操してからよく眠った。
子供の回復力ゆえか筋肉痛にはならずにすみそうだ。思えば毎日この山道を往復してる子供だった。体力や筋力は自然とついてるようだ。
体の柔軟性を高めるのは大事だ。
前世のゲームばっかしてた体に比べて子供のこの体は柔らかい。
前屈で足に手が届くのに感動した。
これは前世の俺の体が硬すぎなだけではある。
思い出すほど前世の俺がどんどん情けなくなってくるよ。
今世ではせめてもう少しマシな人間になれるように頑張ろう。
「いってきまーす!」
さて今日は記憶を思い出してはじめての休日だが少し出かけることにした。
昨日の決意、前世では無かった要素を満喫しにいくのだ。
ダンジョンにさっそくいくことにした。
ダンジョン、異界へのゲート。
紀元前より存在する異空間。
ある日突然現れ、消し去る事叶わず。
なんて感じのものだ。カッコよく3行でまとめたけれど、最近は研究が進んで入り口のちょっとした移動はできるようになってきたらしいし、消し去る方法もわかってきたけれど未だ未知の存在だ。
中の魔物を狩っておかないとスタンビートと呼ばれる現象が起きて中の魔物が飛び出してくることもわかっている。
たくさんあるダンジョン、その中には小学生が入れるダンジョンもある。
自然とそういうダンジョンの近くに小学校ができるもので家からはそう遠くない場所にある。
現代日本で子供が入ることが許されるダンジョンというものは、ほとんどお金にならず命に関わらないダンジョンがそれだ。
1日ダンジョンに潜ってようやく千円とかで現実的にはまぁ大体1日100円とかの世界の報酬になるダンジョンだ。魔物の魔石はいくらでも需要があるとか。
大人は誰もやりたがらないが子供にとっては100円も大金なのでやる子供もいると言う事で、まぁもっと言うなら子供や病人、老人などの戦えない人用のレベリング用ダンジョンとして開放されてるダンジョンというものだな。
子供が魔物と戦う。
この世界のどこの国も大なり小なりやっていることだった。
とは言っても出てくる魔物は可愛いものばかりだ。
今回行く1番近いダンジョンに出てくるのはカラースライムと呼ばれる魔物だ。
スライム、色の着いた不定形の粘液で構成されていて魔石を中心に動くだけの魔物。
スライムの中でも最弱と言われている魔物で、臆病で視界に移っている間は逃げるだけだが見ていないと這い寄ってきてそのまま気付かずに近くに来させてしまうと爆発する。爆発してもただただ粘液を飛び散らかして体を汚してくるだけの魔物だ。
カラーと名のついている通り、赤だったり青だったり全身単色ではあるがいろんな色をしている。
粘液自体は弱アルカリ性で目に入ると染みる程度のもので危険性は低い。倒すと稀に落とすドロップアイテムで手に入る粘液は洗濯用洗剤の素材に使われているらしい。
前世より人体や環境にやさしい洗剤として前世で見たような他の洗剤に混じって売られている。
「と、このダンジョンに出てくるカラースライムと呼ばれる魔物はこんな生態をしているんだ。だから戦う時は注意してほしい。あとゴーグルとレインコートと警棒はレンタルできるからしっかり装備してから向かうこと。いいね?」
現代のダンジョンには当然役人がいる。
現代日本ではほとんどのダンジョンは建物に囲われていて入る際は登録証を提出して検査をされてから入ることになる。
小学生の俺はその場にいるお兄さんから簡単なレクチャーをうけてから入ることになったのだった。
他の子供も来るのか説明は慣れている様子だった。
一応スキルを覚えている人はダンジョンに入場資格があるとされている。
当然ダンジョンによっては小学生や中学生なんかの未成年や実績次第では入場を許されない場合もあるが今回は許されたのだ。
現代様々で子供用のゴーグルにちょっとスライムのいろんな色で汚れている透明なレインコート、子供でも使いやすい警棒もレンタルされているのだった。
空間に四角く切り取られたような黒い空間がダンジョンの入り口だった。
そこに足を踏み入れると石畳の通路だった。
壁は灰色の煉瓦でできているようにみえる。
ダンジョンの内装は場所によって異なる。
ここはそういうダンジョンだった。
「古き良きダンジョンだな。出てくるのは優しい魔物だが」
古典的な通路と部屋で構成されたダンジョンに俺はそう思ったのだった。
ベターチョイス @7576
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