青春の一ページに謎

@Aoihimawari333

第1話

朝のひんやりとした空気が体に染み渡る。このまま布団の中にいたいけれど、この前はそれで遅刻をしてしまったので、やむなく起き上がった。枕元に置いてあった時計を見ると風情も何もないデジタル時計は7時10分と表示していた。ベッドから飛び上がり、「なんで起こしてくれなかったの。」といつも通りお父さんに文句を言った。お母さんは仕事でいつも早めに家を出るから、お父さんが毎朝私を起こしてくれる。階下のリビングへ降りると、「いくら呼びかけても起きないのはそっちでしょ。」キッチンにいたお父さんはトースターからパンを取り出しながら膨れっ面をした。小鳥の囀りが一日の始まりを教えてくれる。私は朝の日差しが大好きだ。お昼時の太陽は燦々と照りつけるけど、朝の太陽は私と同じでまだ目を覚ましていないみたいに優しく照らしてくれるから。私はリビングのカーテンを開いて、眼下の東通りを見渡した。まだ人の流れはまばらだった。家を出る頃にはスーツに身を包んだ男の人や女の人、私と同じ紺のブレザーに身を包んだ学生が人の流れを作り始めていた。最寄りの駅から15分電車に揺られた先に、私の高校、露薪つゆまき高校は校舎を構えている。中学校の時に通っていた塾では露薪高校に受かったことを報告すると、進路の相談に乗ってくれていたチューターの先生は泣いて喜んだ。数学を受け持ってくれていた先生は驚きのあまり口をあんぐりと開けていた。それほど、私には似つかわない、レベルの高い高校なのである。自分でいうのは悲しいけれど。

「おはよう。」石畳の構内に足を踏み入れると、後ろから耳障りのいい声がした。「おはよう。」クラスの誰よりも短い髪に、切れ長の目、まるっとした鼻に薄い唇。声の主、間宮あさひは寒そうに両手をダッフルコートのポケットに突っ込んでいる。

「今日の宿題やった?」隣に並び、あさひはポッケに隠し持っていたカイロを両手で摩っている。

「うん。英語でしょ?」「国語もあるじゃん。」「そうだっけ!?」そういえばそうだった。なんで忘れていたのだろう。そうだ、スマホのリマインダーに追加しようとした時に体育係の用事を頼まれたんだった。

「はあ、昼休みにやらないと。ご飯の時間が削られるの嫌だなあ。」「自分が忘れてたんだから仕方ないさ。」すかさずあさひは正論の矢を飛ばしてくる。助けてもらおうとは思ってないけれど、少しぐらい励ましてくれたっていいじゃないか。私は理不尽に拗ね、あさひのカイロを奪い逃走した。

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