第二十五話 隙あらば自分語りを内心で始めましょ
あらあら、目の前の神様はイキリ散らしているけれど。
どの程度のものかしら? ちゃんと実力に見合っている?
さて……本格的にやりあう前に、私達だけの特別な空間にしましょう。
「ほほいのほい」
「何!?」
「ようこそ、私の領域へ」
わぁ、久しぶりに痛い事言っちゃった、あ~でもこれ中二病なのかしら?
実際に私は魔法が使えるし……あら? 神様が何か驚いている?
「どうしたのかしら? 私に有利なフィールドにご招待しただけよ?」
「何故我を別空間に移動できる、ありえん」
えぇ……そんな事ある? なんなのこの神様。
普通の人間みたく驚かないでよ、大げさに驚いてはいないんだけどさ。
はぁ……所詮はこの程度の神様か。
ま、遊んであげましょう。
「ほらほら、私は調子に乗ってるわよ? さっさと跪かせれば?」
ふむ……この神様はハズレね、あーでも――
これは私がこの神様より強いからこそ、持てる感想よね?
確かに強者はイキリ散らしを許されると思う。
本当に圧倒的な力が有ればね、でも限度があるのよ。
だって、反逆してくる奴らが居るから面白い。
それこそ死ねと言われて喜んで死ぬ奴を見て何が楽しいのか。
ああ……それを楽しいと思う奴もいるのか。
ふーむ……あら? 神様がさっきから何かしているわね?
何をしているのかしら? 分からなかったら聞いてみる、大事ね。
「あらあら神様? 何をしているのかしら?」
「な、何故だ! 何故我の攻撃が効かぬ!」
ああ、さっきからなんかバチクソにうるさいと思ったら……
攻撃してたのね? ご苦労様です、頑張って私をころしましょうね?
じゃないと貴方はここから出られないから。
あ、ちなみに私の領域……ダメだ、なんか痛い。
さっきも言ったけど、これわかってくれる人いるのかしら?
私、元の時代ではつつましく普通の一般人なのよ。
やっぱりほら、こう良くも悪くも一般人の感覚って大切。
ほら、宝くじで高額当選して破滅した人みたいな?
そうはなりたくないじゃない? だから必要なのよ。
そうそう、ここも久しぶりに来たわね。
夜の草原に満天の星空、きれいな月。
……ああ、私にもこういうキレイキレイな心があったわ。
はぁ……大人になるって大変ね、こう……薄汚なくなるっていうの?
仕方のない事なんだけど、少し寂しい月の夜ってね。
さ、神様がさっきから何かしているけど……大丈夫?
今まで自分のしてきた事がわかった?
どうせ貴方は自分の力で好き勝手してきたんでしょ?
ああ、それは私もか……ま、人間らしい矛盾は今は置いときましょ。
さ、これから神様はどうやって私を殺してくれるのかしら?
「さっきから色々と頑張っているけど、そろそろ諦めたら?」
「諦める? 誰に向かって物を言っている」
「はぁ……何でこういう奴ってずっと偉そうなの?」
まあ他の世界も神様もこんな感じだっ――
いや、ここまで酷くなかったよな?
ふーむ、色々な世界を巡ってきた。
しかし、ここまでとは……
「その目を止めろ」
「あらあら失明させる魔法? ふーん、ちちんぷいぷい」
「ぐっ! き、貴様!」
「はいはい、おめめ治してあげるわね」
ほほいのほいと、私は失明を治してあげた。
いや……この時点でというか、もう何回も攻撃しているんだけどさ。
私、まったく怪我してないのよ、そうねぇ、例えて言うなら……
いや例えじゃないか、事実を語っていくけども。
あ、ゲーム感覚で語っていきましょう。
本当に数字とかゲーム表現て分かりやすいわよね。
ステータスオープンとかやって――
いやいや気持ち悪いさね、いい歳した乙女がそんな事いえるかと。
いや~創作物とか、異世界召喚された奴ってよく言えるさね。
ふーむ何故なんだろうか? 創作物ならそういう様式美もわかるんだけどさ。
現実だよ、リアルだよ? あ~アレだ何かアレっぽい!
誰が決めたか、よくわからないマナーみたいな?
ふっ、異世界召喚されたらステータスオープンといいましょう!
……ぶっは! 危ない危ない、吹きそうになったよ。
流石に戦闘中に笑うのは失礼さね、てかこの神様も飽きないね~無駄なのに。
そろそろ可哀想だから、始末してあげようかな?
私の防御魔法を突破出来ない時点でお察しだけども。
いやいや、付き合ってあげましょう、自分の弱さを認識しなゃ。
でも一言言ってやろうかしら?
「神様、もういい加減に諦めたら? さっさと認めた方がいいわよ? 私より弱いって」
「ふざけるな! 人間如きが!」
あらあら、困った子供ね? そりゃそうか。
他人に怒られた事ないんだから、神様だしね。
あ~もしかしてさ、イキリ散らし転生者とか転移者って……
類は友を呼ぶってやつ? さ、そろそろ相手をしてあげようかな。
「ふふふ、神様? ウォーミングアップはいいわよね? そろそろ私も攻撃していいかしら?」
「ふん! 防御ま――」
「あらあら大丈夫? 腕が吹き飛びましたけど?」
ちちんぷいぷいほほいのほいさね。
ご丁寧に詠唱なんてしないし、どうやったかなんて説明もしない。
これは授業じゃないんだ、殺し合いだろ?
「そうね、謝るなら命までとらないけど?」
「ふざけ――」
「……いや、もう無理だ」
私はほほいのほいと切り刻んでやった。
ま、どうせ神だから死なないんだろうけど。
ダメだ……内心でも我慢していたけど……無理だ!
「げはははははははははは! 馬鹿かお前は!? 異世界召喚された奴の方がまだ理解力がある!」
少なくともこの世界で出会った奴らは理解力があった。
神様がこの程度じゃ……いや、下っ端はこの程度か?
下っ端じゃなくとも、お粗末な神様だ。
さて、私が飽きたから……頭だけ持ち帰るか。
「ほほいのほい」
「き! 貴様! 何を!?」
「ん? 頭だけにした、んでお前の力を奪った」
「なっ! そんな――」
「はいはい、んじゃ元の場所に戻りましょうね~」
ふ、戻ったに第七魔法研究所の皆様は驚くかしら?
ああ、醜い残骸も消しましょう、ちちんぷいぷい。
それじゃ、帰りましょうか。
特に何も得られなかったわね、ま、これが当たり前よ。
私に勝てる奴なんて居ないんだし。
「あら? 暴れないで? 動かないでよ」
「愚か者め!その程度は神の我に勝ったつもりか!」
「……何もおきないけど?」
あらあら無駄な威勢はよしてちょうだい?
力奪ったんだから何も出来ないでしょう?
ああ……金持ちの坊ちゃんが貧乏になった感じ?
とりあえずどちらにしても、ウザイ。
「どうするの? 今の貴方には何も出来ないけど?」
「我はまだ負けてはいない! ウラル様が――」
「いや、それアンタが強いわけじゃないでしょ? はぁ……」
「ふはははは! そんな余裕を見せて居られるのは今のうちだ!」
「ふむふむ、どうして?」
「ウラル様が貴様を葬ってくださるからだ」
「なるほどなるほど、そうなるといいわね?」
「なる! 絶対に! 貴様は今日ここで死ぬ!」
「あらあら大変ね、で、当たり前の質問なのだけど、力を失った貴方をその神様が仇をとってくれるの?」
「何を期待している! 当たり前だ! 私ほどウラル様に忠誠を誓った神は居ない! そしてあの人間! イワンというこの国の王の兄弟が手足となってくれよう!」
いや……多分そのイワンはウラルって神を崇めていて、アンタの――
ふむ、面白いからやはりこのまま持っていくか、私が殺すよりも面白いだろう。
さ、今度こそ帰ろうかな、第七魔法研究所へ戻りましょう。
……たまにはこの場所も手入れしなきゃね、落ち着いたらしましょうか。
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