18話 宴と感謝?


 「二人共、本当にありがとう。最悪村が全滅していたかもしれん」


 そう言って頭を下げる村長。

 眩しくて辛い。

 夕日が照らす村長の頭は、光り輝いていた。


 「うっ、頭を上げてくれ。礼なら彼女に」

 

 思わず眩しくて声を上げてしまい、誤魔化すようにローラの話を出す。俺達から少し離れた場所で村の女性陣達と料理をしている彼女に視線を移す。

 元々、ローラが言い出したことだ。俺は少しだけ手伝いをしただけに過ぎない。


 やっと村長が深く下げた頭を上げ、帽子をかぶり眩しさが収まった。もうそれって視力阻害のスキルじゃないのか?


 是ともお礼にと、今夜村で宴を開き、俺達をもてなしてくれる事になったからな。別にそこまで急ぐ旅でもないので、お言葉に甘えることにした。

ローラがかなり乗り気だったとも言う……

 それに急ぐなら、俺がローラを抱え飛行魔法をとばせば半日でついてしまうのだから。


「しかし、美しいお仲間ですな。恋人か奥様ですかな?」


「いや、目的にが同じだから道中臨時で一緒にいるだけだ」


「ほほう……」

――ジーーーーー


「あまり邪推されると困るな」


 おい、エロジジイ。その関係を探るような、イヤらしい視線で俺と彼女を交互に見るのはやめろ。

 低めの声で一言そういって睨むと、ヒィッ、と叫び声を上げて去って行った。

 いくら娯楽がないからと、話のネタにされては困る。


「どうしたの?」


「なんでもない。それよりローラは良かったのか?」


「まぁ、急いではいるけど、エルフの時間感覚はあなた達とは違うから問題ないわよ。それにせっかくのお招きだし、みんな嬉しそうじゃない?ねぇ〜ホルスちゃん」


「キュイ」


 村に戻ってからホルスの世話をしていたが、ローラが預かりたいというので、今ではローラの胸元に挟まって返事をしてきた。


 お前、羨ましいな……


 俺は彼女の胸元から視線をそらし尋ねる。変態扱いされたくない。


「そういうものか?」


「そういうものよ♪それより良かったの?ファイアグリズリーのお肉を一ブロックだけ取って残りを全部村に上げちゃって」


「問題無いさ」


「それに毛皮や爪に牙も、家畜をヤラれた家族に譲るなんて」


「これから何かと物入りになるだろうし、このままだとあの家族は飢え死にしそうだったしな」


「だからって、家畜より何倍も価値があるのに……」


「魔石とこの肉で十分さ。それより宴が始まるらしいぞ」


 準備が終わったらしく、村の子供達がローラを呼びに駆け寄ってくる。無邪気で可愛いな。それに大量の肉が食える事にはしゃいでいる。

 しかし、俺には何故かおっさん達がジョッキ片手に呼びに来た。なんだろう、この敗北感……


 宴が始まり、皆とても楽しそうだ。焼かれた肉を頬張り波々に注がれたエールを煽る。男達は騒ぎすぎて女性陣に注意され、男の子達は駆け回り冒険者ごっこをし、女の子達はローラの下に集まって旅の話でも聞いているのだろう。

 しかし俺はというと、


「いやぁ〜〜 ヒック その顔からの想像通り強いな、アンタ ヒック」


「あ、ああ……」


「なに食って、ヒック どう鍛えたら、そんな締まった身体になれるんだ? ヒック」


「お、おう……」


 ガリでノッポのおっさんに、チビでデブのおっさん二人に挾まれ色々と聞かれるが、なぜ顔を撫でる?なぜ太腿をさする?


「お前達やめんか!恩人まで食べようとするでない」


 先程悲鳴を上げて去って行った村長が戻ってきて、二人を注意してくれて助かった。そそくさと俺から離れ宴の輪に混じっていく。


「助かったよ村長」


 あのままでは実力行使で排除するところだった。


「それで、フウガ殿。今日はローマ殿と同じ部屋で寝床を用意いたしましょうか?ヒッヒッヒッ」


 感謝したことを後悔する。

 女子共達だけ護衛して逃げちまえば良かったかな……




 ローラとは別部屋を用意してもらい、宴も終わり休んだ翌朝、村人総出で見送られ俺達は村を後にした。


「昨日は楽しかったわね?」


「そうだな……」


「フフフフフ♪」


「ローラ、知ってて聞いてるだろ!」


「なんのことかわからないなぁ〜」


「キュイ」


「絶対わかってて聞いてるよな……」

 

 しかし、随分と彼女との距離が縮まった気がする。こんな軽口を言ってくるなんて今迄無かったからな。

 吊り橋効果では無いにしろ、一緒に依頼をこなした

事が大きいんだろう。

 しかしホルスよ、お前は俺の従魔だよな?昨日預けてからずっとローラと一緒だけど……


「キュイキュイ?」


「またお腹すいたのかな?はい、たくさん食べてね」


「キュイ♪」


 そう言ってローラは魔法袋から解体したファイアグリズリーの肉の切れ端を数枚与える。その双球の間がが巣となり、普通の雛鳥のように、これでもかと口を開けて肉をねだる仕草。

 ローラが上からそっと、その口元に肉を下げるとパクパク食べて満足すると毛玉となってまた眠りについた。


 あのさぁ、俺もそんな生活がしたいんだけど変わってくれませんか?ホルス先生……


(ゲプッ) 




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