17話 同行者は規格外(ローラ視点)


 ローラ視点



 出会いは、王都の商店の前だった。


 私が店主に騙され、質の悪い小麦を掴まされたことに気づき苦情を言いに戻り、返品もしくは交換させようと言い争っていた時、突然現れたヒューマンの男。



「まぁまぁまぁまぁ」



 私も店主も口論に熱くなり、周りが見えて無かった。そんな時余裕の笑みで止めに入ってきた。


 そして店主へと話を通し、店先で最初に見た上等な小麦に交換させてくれた。もちろん私も注意を受けだけど、あの時は引き下がったけど納得はしてなかったわ。騙す奴が悪いのよ。




 次に冒険者ギルドで会った。


 朝に掲示板から剥がした依頼票。


 依頼主


 冒険者ギルド

 対象ランク

 上級以上

 依頼

 グリーンウルフの討伐

 報酬

 一匹 一万B(銀貨一枚)

 詳細

 最近王都西の草原で、グリーンウルフを群れで目撃したと複数の報告があった。

 初級から中級の狩り場につき、早急に対応してほしい。グリーンウルフを捜索、発見次第討伐を頼む。


 この依頼を受け草原に出て、数匹逃がしたけど群れの半数を討伐し、夕方冒険者ギルドに戻ってくると

 併設された酒場のカウンターで座っていたのをたまたま見かけた。

 一応昨日のお礼を伝えなきゃと思って声をかけた。


「あっ、あの時のヒューマン!」


 すると、また美人と言ってくる。恥ずかしいからやめてほしい。でもナンパな感じゃなくて素直な感想を言う雰囲気。それに食事とか誘ってこなかったし。


「となりいいかしら?」


 了承を取って隣に座る。冒険者時代から知っている顔馴染みのドムにエールを注文し喉を潤すと、


「おう。しかし、まさかローラの姐さんと顔見知りだったなんて、フウガも隅に置けないな」


 へぇ~フウガって言うんだ。ドムの姐さん呼びを叱り、いつものやり取りをしてると、また美人と言われ顔が熱くなるのを感じたわ。


「その……呼び方……止めて、ローラよ。上級……」


 褒められ慣れてない。これ以上美人と言われないように自己紹介をした。恥ずかしさで、しどろもどろになってしまったけど、


「新人のフウガだ。改めてよろしくなローラさん」


 えっ!この気配にこの魔力、それに装備を見ても新人だなんて思えなかった。


「キュイ♪」

(ゲップ)


 そして、とっても可愛いウインドファルコンの雛が懐いていて驚いた。

 でも従魔になっているなんて、長年生きてきたけど今迄見たこと無かったもの。




 そして突然のゴブリンによるスタンピード。


 その時の作戦はフウガがギルマスに提案したって聞いて驚いたわ。

 これでも上級冒険者。上級範囲魔法で力を見せたけど、ギルドの鑑定士も頑張ってたけど、フウガの放ったあの魔法は何なの!左右でそれぞれ魔法を発動するなんて、杏奈の規格外よ。宮廷魔法騎士団の団長だって無理無理無理。一体あのヒューマンは何なのかしら……



 故郷に頼まれた物が、ゴブリン共のせいで王都への流通が停まっちゃったから取りに行くことにしたら、


「おはようローラ」


 突然後ろからあいさつされて驚いたわ。だって彼がいたんだもの。


 しかも偶然同じ東の港町に行くって知って、同行しないかと誘ったら、あっさり了承してくれて嬉しかったのは内緒ね。


 底が見えないほどの恐ろしい強さを持ってるけど、他の男達とは違う感じ。嫌じゃないけど落ち着かないこの気持ちって何なの?

 道中何事も無かったのに、村に泊まった翌朝騒ぎが起きていて、聞いて調べてみるとレッドグリズリーが家畜を襲ったのがわかった。

 迷ったけど、時間の無駄となにより私より下の冒険者達だと被害が拡大する未来しか無い。

 だから、一人で村から依頼を受けようと思ったけど、フウガも一緒に受けてくれるなんて……


 巣穴まで血の跡をたどっていて、風上と注意したら見事な魔力操作で匂いを消してくれて助かったわ。それにこの防御魔法の使い方。発想が豊かね。


 でも念話のマジックアイテムを持っていて、気軽に渡してくるなんて…… しかもお揃いだなんて…… 

 このカフス、一体どれだけの価値があるか知ってるの?

 丁度巣穴を見つけて、これからって時に、


(ローラ、前衛は俺がやる。それは譲れない)


 そう強く主張彼の言葉。

 普段なら同格の男性冒険者に言われたらムキになってしまってたけど、何故か素直にうれしかったなぁ。

 私を守るって気持ちが伝わってきたから。


 それからはあっという間にレッドグリズリーを始末したけど、こんなに安心安全に狩れるなんて。

 

 もしかして私、凄い人と同行してるのかも……


 

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