フェイタルフェイト2/31
自然保護団体『レッドドワーフ』の歓迎会が始まる。
会場は宿泊施設の大フロア。
立食形式のパーティーだ。
アマテラスが観光船時代だったころの名残でこういった施設は現役バリバリである。
いつぞやの戦艦スサノオとの戦いで、シャンデリアとかいろんなものがぶっ壊れたが、サンバ君のおかげで元通りである。
……そう言えばストライキとかあったな。
なんやかんやで文句は言っても元通りにしてくれるから未来のお掃除ロボットは凄いと思った。
おっと、今は目の前の問題に対処しないとだ。
そう、ギラギラした顔つきの男たちが殺意のある目で俺を睨んでいるのだ。
「ごほん、えー、あー、私は福祉船アマテラスの船長のイチロー・スズキです。短い間ですが皆さまを安全に送迎するのが俺達の役目ですが……」
しかし、本当に目つきが鋭い連中ばかりだ。正直怖い。
……分かっている、長い挨拶よりも早く飲ませろってことだろう。
もの凄いプレッシャーだ……。くそっ、せっかくミシェルさんが挨拶の原稿を書いてくれたというのに……。
頑張れ俺! 練習だってしたんだ!
「……では、挨拶はこの辺にしましょうか……お話は後でゆっくり伺うとして。ではカンパーイ!」
すまんミシェルさん。俺には無理だった。
だが君の功績はしっかりとレポートに書くよ……。
だって早く飲ませろと言う圧が凄いんだもの……。
まあしょうがないだろう。だってゴロツキ……いや、情熱的な人たちなのだから……。
「うふふ、イチローったら情けないわね。ああいうのはガツンと言ってやらないとだわ」
「マリーさん勘弁してくれよ。腕っぷしでは絶対勝てないんだ。それに外見からくる威圧感。おそらくは肩書は関係なしに殴ってくるタイプだろ?」
「そうだぞマリー。ああいう輩は手を出してから考えるタイプの人間だからな」
ちなみに今回の仕事にはマードックさんとマリーさんに護衛をお願いしている。
なんせ船内にはミシェルさんがいる。
トラブルが発生したときに俺だけだと何もできないだろう。
そう、若い女性を守るためだ。決して俺の保身だけではないのだ。
それに真面目な話、彼等は武器だって持っている。
もちろんアマテラスの居住区への持ち込みは禁止しているが、彼等の用意した揚陸用舟艇にはこれでもかというほどの武器が収納されているのだ。
一応、彼らは世間からも認知されている公認の団体なのでテロリストではない。
だが機嫌を損ねるようなことはしたくはない、俺は平和主義なのである。
穏便に話を進めるには、こちらにもそれなりの戦力が必要なのは当然の理屈だ。
マードックさん達が居るからこそ、かろうじで俺の言う事を素直に聞いていると思うのだ。
特にマリーさんを一目見たときの彼らの反応は分かりやすかった。
その筋の人達からは軍用アンドロイドであるアサシンドールのマリーはかなり有名なのだ。
……もっとも、マードックさん達が居なくても俺の言うことは聞いてくれるかもしれない。
あまり人を外見で判断したくはない、案外いい人かもしれないのだ………が、以前からの付き合いがあるわけではない。
やはり外見で判断するしかないだろう。
何せスキンヘッドに眼帯、ギザギザノースリーブだからな……。
「いやー、失礼したな。
俺らは酒を目の前にすると人が変わっちまうんでな。
プレッシャーを掛けちまったようで悪いことをしたよ」
スキンヘッドの団長さんは後頭部をかきながら俺に謝罪する。実は話してみれば案外普通の人かもしれない。
「いえいえ、俺も乾杯の挨拶が長いのは嫌いなんで。
ところで団長さん。アースイレブンってどんな惑星なんですか?」
そう、今回の俺達の任務は彼等をアースイレブンに送り届けることだ。
団長さん曰く。
アースイレブンは惑星自体が自然保護区になっている。
特別な生態系故に人間の手を加えずに保護することになっているのだ。
だが、どうやらアースイレブンで密猟者が現れたらしい。
密猟者に対する罰則は厳しく、裁判なく現場の判断で射殺が許されるほどだ。
「なるほど、だから今回『レッドドワーフ』さん達が出向くことになったんですね」
「おうよ、自然を破壊する奴は俺達が許さねぇ」
団長さんはたくましい上腕二頭筋を見せながら俺に向けてニカッっと笑う。
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