シンドローム3/27
【ヘルゲートアヴァロンへようこそ!】
デデーンと壮大なBGMと共にオープニングムービーがはじまる。
【1999年7月、世界は核の炎に包まれた。
愚かな人類は互いに憎しみあった。
争いの歴史は人類の常だが、その日は違った。
その美しき憎悪の感情に惹きつけられた悪魔の軍団が地上に出現したのだ。恐怖の大魔王の降臨……】
あー、なるほど。あれかノストラダムスの大予言がこのゲームの元ネタってとこか。
しかし、あれはメディア含めて出版業界全体がやらかした壮大な詐欺事件だろ?
テレビ局とか出版社とか反省しろよって思うんだよなー、間接的な被害者が結構いたと思うんだ。実際、当時は遊び人が結構増えたって聞いたことがあるし。
おっと、そんなことはどうでもいいか。
ふむふむ、ゲームシナリオとしては面白い、なるほど。それでなんやかんやで地獄と地球が繋がったので悪魔との戦いの歴史が始まると。
で、人間側には聖人をトップとする、教会勢力の騎士団、テンプラーにプリースト。
教会とは敵対関係にあった裏社会を牛耳る魔術師協会のソーサラーにローグのギルドが同盟を結ぶ。
さらには第三の勢力としての科学者サイド、機械工学の集大成であるマシーンとバイオテクノロジーにより誕生したモンスターといったところか。
プレイヤーはこれらの職業を選択して悪魔の理想郷『ヘルゲートアヴァロン』を打倒しろってのがこのゲームの目的みたいだな。
まあ、ネットゲーあるあるで今現在は物語は完結していないらしい。
一応現パッチでは地獄の遊撃隊ルシファーの討伐が最新のストーリーのようだが、倒しても意味深な言葉を残して消えるってのが攻略サイトに書いてあった。
次の大型アップデートにご期待下さいってところか。
それでも最新クエストはレアアイテムのドロップ率がいいので、攻略周回パーティーの募集がひっきりなしのようだ。
ま、俺としてそこまで興味は無いし、完結してない話を追ってもしょうがないか……俺は初見であるがムービーはスキップした。
だって今回の仕事が終わったら続きはやるつもりはないのだ、俺的にはMMOは麻薬と一緒だと思っている。俺の同級生も病院送りだったしな。
【おめでとうございます。ミスター・イチロー・スズキ。プレミアムアカウントの認証完了しました】
当然、これは仕事で遊びじゃないから課金バリバリでやらせてもらう。経費で落ちるしな。
さてと、早速キャラメイキングの画面に移る。
職業選択はマシーン。
名前は……まあ適当で……。
名前:レイザー・スズキ
職業:マシーン
レベル:0
HP:100
力:10
素早さ:10
防御:10
魔力:0
よわっ! ……俺にだって分かる。ステータスがしょぼすぎだ。
まあ装備が無いんだからしょうがないか。
ちなみにマシーンはレベルが上がらないので0は固定だが、武器を装備することでステータスは上がる。
まずは武器屋で装備を調達しないとだな。
おっと、その前にアイちゃん達と合流しないといけない。
始まりの街、ここは地下都市のようだ。
天井はビル十階ほどの高さにあり、照明はあるものの薄暗い。
なるほど、人類は悪魔の侵攻で地上を奪われているということだろう。
人間は何人かいる。NPCとプレイヤーはキャラの上に表示されている名前でなんとなくわかる。
街の散策は後、俺は約束通りに街の中央ポータル前にむかう。
そこには見目麗しいエルフの様な少女にオオカミの様なモンスター。
そしてターバンを巻いた如何にも盗賊風のおっちゃんがいた。
姿形は違えど何となく分かる。アイちゃんとミシェルンにサンバだ。
向こうも俺に気付いたようだ。
「マスターですか? うふふ。まったく、マシーンになったというのに相変わらずきょどきょどと、仕草がマスターそのものでしたのすぐに分かりましたよ?」
「お、おう。悪かったな。そういえば今の俺は機械の身体なんだっけ」
俺は視線を傾け自分の身体を見る。
外見は二足歩行ロボットそのものだ、見た目はガン〇ムとアイアン〇ンの中間のデザインって感じだな。
うーん。いまいちしっくりこないな。違和感がある。身長が違うからだろうか。
「船長さん。機械の先輩であるサンバがアドバイスをしますよ? おっと今はローグのサンバDEルンバと呼んで下さいっす」
「うふふー、船長さんも機械の身体だなんて。リスペクト嬉しいですー。ああ、今の私はモンスター、ワーウルフのミシェラン★★★だったですー」
相変わらずだな。それに案外楽しんでもらえてるようで何よりだ。
「よし、なら早速パーティーを組むとしよう。それと同時にフレンド登録。お互いのステータスが確認できるようになるらしいしな」
名前:アイ・アマテラス☀
職業:ソーサラー
レベル:69
HP:899
力:184
素早さ:514
防御:563
魔力:1919
「つよっ! アイちゃん……なんでこんなに強いんだよ! さては結構やってたな?」
「ええ、もちろんです。我々のようなサポートAIは一応、お仕えするマスターが好きそうな娯楽に関しての履修が推奨されています。
何事も知ったかぶりは良くありませんし。ちなみにこのゲームは銀河規模でヒットしているタイトルですので。ほどほどにはやりましたね。
まあ中堅プレイヤーといった程度ではありますが。必要な知識は持っておりますのでマスターをサポートすることは可能です。
ちなみに、サンバやミシェルンは商業用ロボットのカテゴリーですので、ゲームは未経験です。
さて、当面の課題はレベリングをしながら犯人に接触するまでプレイヤーとして一生懸命ゲームを楽しむといったところですか」
「お、おう。さすがだぜ……。じゃあサンバにミシェルン、君達のステータスを見せてもらうよ?」
名前:サンバDEルンバ
職業:ローグ
レベル:1
HP:40
力:21
素早さ:50
防御:11
魔力:22
名前:ミシェラン★★★
職業:モンスター
レベル:1
種族:ワーウルフ
HP:60
力:34
素早さ:41
防御:30
魔力:10
弱い。安心した……。
いやいや。安心してどうする。相手は廃ゲーマーなのだ。
対等に会話できるレベルまで上げないと話にならないだろう。
……なるほど、理解した。エリートのネゴシエーターが簡易的に高レベルのキャラをメーカー側に作らせてもボロがでるな。
都合よく廃ゲーマーのネゴシエーターなんて見つかるとも思えないしな。
なんとなく、この仕事が俺に回ってきたのも理解できる。
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