第26話 一悶着

 ……


 パプテトロン郊外ゲートに向って、俺たち三人は歩いていると……町の出入り口と成るゲートが見えてくる。

 ゲートには、王国の衛兵二人が門番をしている。


 町の出入り口と成るゲートは幾つか有って、俺たちは今回『P1』ゲートに来た。

 俺たち三人がゲートに近付くと、ゲート右側に立っている衛兵が、上から目線で話し掛けてくる。


「貴様ら……見慣れない姿をしているが……我が王国軍の者か?」


「……はい。王国軍のスズヤと言う者です!」

「後ろに居る二人の女性は、リンとアスで有り俺の仲間です!!」


「……そうか!」

「所で……今回の目的は何だ?」


 俺が真面目な表情で衛兵に答えた後。衛兵は威圧的な態度で質問をしてくる!

 何処の世界でも居るのだよな……こんな奴。


 ちなみに今回の件は、コハルは知っているがの王で有る、ナポレン王の耳には直接入っていないだろう?

 今回の目的は魔王討伐では無く、動物でも新しい仲間を加える旅で有るから。


 なので、王やコハルからの伝達も各ゲートには伝わっていないのだろう。

 俺は澄ました表情で、衛兵に話し始める。


「今回の目的は……バリックペペンです」

「バリックペペンに所用が有りまして……」


「ふむ……バリックペペンか!」

「渡航危険情報の伝達も特に来ていないし、王国軍所属なら我々が止める権限は無いからな!」


 衛兵は小難しい表情で俺に話す。

 権限が無いのなら、目的なんか聞くなよと言いたい気分だ!


 しかし、衛兵は目を細めながら、俺たち三人に向けて話し始める。


「……一応。身分だけは確認させて貰おうか?」

「こちらも、業務だからね!」


「勿論持っているだろ?」

「身分証…!」


『……スッ』


 衛兵の言葉の後。俺はふところから、王国から発行された身分証を取り出して衛兵に見せる。

 だが、衛兵は俺の身分証を……まじまじと見始める!?


「名は……スズヤか」

「貴様は……純粋な王国民で無く、特例難民か!」←スズヤはモノアメット公国の難民設定


「……はい。そうです!」

「俺は元。モノアメット公国民です!!」


 俺は真面目な表情で衛兵に話す。

 俺は嘘でも、難民からの王国民で有るから、身分証にもその様に記載されている。


 けど、衛兵は不敵な笑みを含ませんがら、俺に言い始める!


「……これは面白いな!」

「モノアメット公国の難民が……不思議と王国軍に所属か!!」


「それも一兵卒で無く……戦士だからな。本当に貴様は難民で有ったのか!?」

「難民が王国軍の戦士に為れるなんて、普通は有り得ないからな!!」


「…………」


(うわぁ……この衛兵めちゃ鬱陶うっとうしい!)

(これだったら、書簡等を王国から発行させて貰っておくべきだったな!///)


「……(怒)」


『……スッ』


 俺が心の中で感じていると……リンが怒った表情で急に俺の前に出て来て、その表情で衛兵に言い始める!?


「衛兵さん! その言葉は、少し言いすぎでは無いですか!!」

「スズヤは難民でも立派な王国民で有り、王国軍の兵士ですよ!!」


「むっ……貴様! 衛兵に向って、その口の聞き方は何だ!?」

「白魔法使いといえども、衛兵にとは良い度胸しているな!!」


 リンの言葉で、衛兵は怒りを表しながらリンに話す。

 そして衛兵は怒りを増長させながら、リンに言い始める!


「……貴様。名を名乗れ!(怒)」

「衛兵に楯を突きやがって!!」


「これが下級白魔法使いで有ったら、容赦はしないからな!!」←白・黒魔法使いでも下級・上級が有るらしい?


(メルメーサ王国軍での、衛兵身分は高いのか?)

(俺は王国軍の体制を良く理解していないが……前世界で言う、軍の警務官並の位か!?)


 俺が心の中で思っていると……リンは気迫の迫った表情で、衛兵に言い始める。


「私の名は、ブルーレイ・リンです!」

「衛兵さん!!」


「ハッ。ブルーレイ・リンだと!」

「……ブルーレイ・リン……ブルーレイ……!?」


「……もしや……あなた様は、亡きブルーレイ師団長の娘さんですか!??///」


「はい! そうです!!」

「私はブルーレイの娘です!!」


 初めの内の衛兵は、馬鹿にした表情でリンの名を吐き捨てたが……リンの正体を気付いた瞬間、仰天の表情を見せる!!

 リンは何時になく、強気の表情で衛兵に言う。


 俺が衛兵に突っ込まれていたので、リンが一肌脱いでくれたのだろう。

 衛兵は平謝りの姿勢で、リンに話し始める。


「こっ、これは申し訳ありませんでした!///」

「まさか……亡き師団長の娘さんで有ったとは……///」


「……分かれば良いのです」

「スズヤは……難民でも、素質が有ったから戦士に為れたのです!」


 リンは真剣な表情で衛兵に言う。

 その時。ゲート左側に立っていた衛兵が変だが、申し訳なそうな表情で俺たち三人に近付いて来て、話し始める。


「……君たち三人の身分は分かった」

「通って問題ないです……」


 ゲート左側に立っていた衛兵は、これ以上の揉め事を嫌ったのだろう。

 リンの父親は戦死しているが師団長で有るし、リンは優秀な白魔法使いで有るから、リンが本気に成れば、衛兵達は自然と不利に成る事を理解しているからだ。


「……」


「……」


「……」


 アスの方も何時の間にか、不機嫌顔に成っていた。

 俺たち三人は仏頂面で『P1』ゲートを通過した……

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