第9話 最悪な状況……

『シュン』


 俺とリン。コハルの三人はコハルの魔法で、教会養護施設に瞬間移動をする。


「!!///」


「!!///」


「!」


 メルコの側には、アスと養護施設の女子が付き添っているが、メルコの周囲には血溜まりが出来ており、俺とリンは大仰天する。

 コハルも驚いた表情を見せたが、俺とリンほどでは無かった。


 メルコは気を失っているのか、アスの膝元で横たわっている。

 アスが俺たちに話し掛ける前に、リンは驚いた表情のままメルコの方に駈け寄る!


『ダッ!』


「ドホラミン!///」


 リンはメルコの側に駈け寄り、メルコに向けて『ドホラミン』を掛け始める。

『スイスイ』では対応出来ないとリンは感じたのだろう。


『キラーン☆』


 メルコの傷は……リンの『ドホラミン』で回復し始める……その途中にアスが、リンに向けて悲しそうな表情で話し始める。


「リン先生……メルコはナツを守る為に身をていして、重傷を負ってしまいました///」

「これは、私の責任です……///」


「そう……でも、あの魔物はアスちゃんが倒したんだよね?」


 黒焦げと成った魔物の死骸をリンは見ながら、アスに困った微笑み表情で話す。

 アスは恥ずかしい表情でリンに話し始める。


「はい……私のブランドで、大型コウモリは焼き殺しました///」


「……細かい事は後から聞くけど、今はメルコちゃんの方だね///」


 リンは複雑な表情でアスに話す。

 メルコの方は傷も回復して、本来なら間もなく目を覚ますのだが……


「…………」


 メルコは傷が回復したのに、目を覚ます気配を見せない。

 リンはメルコに声を掛けて、メルコを起こし始める。


「おーい!」

「メルコちゃん~~」


「…………」


『ゆさ、ゆさ、―――』


 リンはメルコに掛け声を掛けながら、メルコの体も揺さぶるが……一向に起きる気配を見せない。

 アスは顔を青ざめながら、メルコに向けて話し始める。


「……メルコ。もしかして……死んでしまったの///」

「そんな事無いよね。メルコ!///(泣)」


「…………」


『ガク、ガク、―――』


「嘘でしょ……メルコ!//////(泣)」


『にょろ、にょろ、―――』


 アスが絶望の表情で、メルコの体を揺らしながら言う中……コハルは、メルコの方に移動を始めていた。

 コハルはメルコの側に近付き、アスに澄ました表情で話し始める。


「アスちゃん……メルコは死んでいないよ!」

「死んでいたら、ドホラミンは効かないから!!」


「だから、メルコはまだ生きている!!」


「えっ……そうなんですか!?」

「コハルさん……?」


 アスは驚きながらコハルに話す。

 コハルは説明する表情で、アスに話し始める。


「多分だけど……メルコは、深い昏睡状態に入っていると思う!」

「大量出血していた感じだから、脳の方まで血液が巡り切れていなかったのでしょう…」


「本来で有ったなら自然に目を覚ますまで、療養させるのが筋で有るけど……今回は私が居るから、特別にメルコを覚まそう!」


 コハルは言い終えると、頭を下げて舌を出し、何かを考える素振りを見せ始める?


『キラーン』


 すると……コハル尻尾先端が、突然光を帯び始める!?

 王国城の守り神だけ有って、不思議な現象をまた見せてくれる!!


「これで多分……メルコは目を覚ます!」


 コハルは真面目な表情で呟いた後。

 光った尻尾を振り上げて……メルコの頭部に叩き付ける!


『バチン!』


『……ビクン!』


 尻尾の光はメルコ頭部に吸収されつつ、メルコの体は跳ねて反応を見せる。

 しばらくすると……メルコはを目を覚ます。


「……あれ?」

「僕は、何でこんな所で……寝ているの??」


 メルコは寝ぼけ眼で一人しゃべりをする。

 それを見たアスは嬉し泣きをしながら、両腕でメルコの体を包んで話し始める。


「良かった~~。メルコ//////」

「無事に、目を覚ましてくれて!//////」


「??」

「どういう事。アス先生…?」


 メルコは一時的に記憶喪失へ成っているのか、自分が瀕死状態で有ったのが理解出来ていない様だ。

 すると、コハルが俺の方にやって来て、耳打ちにするように話し始める。


「一番酷い所の記憶は少し操作をしているから、メルコは理解出来ないんだよ!」

「太ももに大怪我を負った部分とかを……」


「あぁ、そう言う事ですか。コハルさん!」

「メルコの生死に関わる部分は、敢えて消去したと…」


「~~~//////」


「~~~///」


 俺は納得した表情でコハルに話す。

 アスはメルコに向けて、何かを色々話している。


 細かい事は後からアスに聞くとして、メルコが無事に回復してくれて本当に良かった!


 ☆


 だが、この後の後始末が大変で有った。

 買い物から帰って来た、神父・シスターに顛末を話し、その場にはコハルも居たから事態は大事に成って、また、非常用伝書鳩も神父・シスターで無く、アスが独断で使用したので神父は顔を顰めていた。


「……今回は私が不在でしたし、生死に関わる事ですから、アスのした行為は不問にしますが……参りましたね(汗)」


 神父は、愚痴を言うようにアスへ話していた。

 非常用伝書鳩を使うと、速やかに伝言文が届けられるが、その使い方が後から本当に正しかったか問われる時が有るそうだ。


「メルコは……養護施設の子ですか、平民扱いですからね」

「私が今回はなんとかしますが、次回からは……どうしましょね?」


 神父は『参った』表情で、愚痴を零していた。

 メルコは平民で有るからの命を救うのに、この様なやり方は正しく無いそうだ。


 だが、これでメルコが死んでしまったら、アスは間違いなく自暴自棄に成っていただろう。

 どんな世界でも命は中々、平等に扱われない事を俺は再度自覚してしまった///

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