第2話 ~今日から高校生~
入学式当日を迎えた。爽やかな春晴れだった。
しかしちっともウキウキしない。なぜならクラスも友達もみんな知っているからだ。
俺の記憶が間違っていなければ1年は2組のはずだ。
入学式前のクラス発表をそれでも観てみる事にした。
やはり2組だ。キャラの濃い奴が数名いたのを覚えてる。掲示板の前でため息をつくと一際目立つ子ギャルがいた。
子ギャルと同じクラスになるのを俺は知っている。
勉強ばかりしていた俺だかなぜか強烈に印象に残っている。いつもクラスを引っ掻き回してた奴だ。
俺は関わり合いにならないよう隅で勉強をしてたのを覚えている。
だが今回は別だ。高校のテストや授業内容はちょっと思い出しただけで理解出来るのだ。早稲田卒を甘く見てもらっては困る。
掲示板を後にしてクラスへと向かう。
同じ中学だったやつから軽く声をかけられたがぶっちゃけ俺は覚えてない。
さすがに中学の記憶ともなれば曖昧になるのだ。
でもこの世界では中学から高校まで1ヶ月も経ってない。完全にシラを切り通すのは無理と判断し声をかけてきた奴らと他愛も無い話をする。
そして教室に辿り着くと前から2番目の壁側の席についた。
ご丁寧に机に名前が張ってある。
しばらくすると先生が入ってきた。自己紹介と簡単な雑談をしていた。
この先生俺が学校を辞めるとき猛烈に止めて来たのを覚えてる。
そしていきなり俺を指指すと
「お前なんだその頭は! 高校生らしくしろ!」
やはり言われた。さすがにピンクは目立つ。
そして他の生徒もガヤガヤとざわめき出した。
「別に勉強さえ出来れば何やってもよくないですか? 勉強が出来る事はこの後にある実力テストで証明してあげますよ」と俺は言った。
「常識というのを考えろ!」先生は言ったが無視をした。
チャイムが鳴り全生体育館に移動となった。
もちろんピンク色の髪の毛なんて全生徒みても初めてだった。
多分上級生がイチャモンつけてくることは予想していた。
この学校には数少ない暴走族のリーダーがいるのだ。
そいつが黙っておくわけがないだろうが、今はそんな事気にしないで校長の話を眠そうに聞く。
高校の1生徒として恥じぬようにうんぬんかんぬんはお決まりの台詞だ。
俺もサラリーマンで幹事をよくしてたが言う事は毎回ほぼ一緒のお約束というわけだ。
そんなくだらない話が終り校歌斉唱、だが誰も歌わない。
上級生が校歌を覚えてないのだ。なぜならこの学校は稀に見る偏差値の低さで有名だったから校歌を覚えて無くてもしょうがない。猿に何を言っても無駄なのだ。
そんな偏差値の低い学校なのに留年は滅多にいない。
よほどのゆとりなのだろう。
体育館でのイベントが終りクラスに帰る時、たまたま前のやつに話を振ってみた。
「どうしてこんなクズ学校に入ったの?」
「クズ学校はあまり知らないけど家から近かったし歴史がある学校だから、それとあまり話しかけてこないでくれる? 問題ごとに巻き込まれたくないんで。」
「それどーいう意味だよ! 俺が問題児だとでも言うのか? 言っとくけど俺超優秀だからな?」
「そんな頭して優秀だとかは思えないですよ」
最後はなぜか敬語になっていた。ヤンキーだと思われたんだろう。
クラスに戻るとコミュニケーションの時間ということで皆自己紹介が行われた。
壁際から順に自己紹介をしろというわけだ。
俺は壁側前から2席目、つまり2番目となるわけだ。ここでは序盤は空気を盛り上げて後に繋げるという重要な使命がある。
1人目の奴は出身中学と名前、それとよろしくお願いしますだけで終わった。
次は俺の番
「俺はこんな見た目だけど性格は、根は真面目だけどお調子者で能天気。かつ、グータラで空気を読まない。おまけに、威勢が良い割りには打たれ弱く泣き虫で寂しがりやの構ってちゃん。ですがよろしくお願いします」
ずばりこのすばのアクアだ。だけど誰一人として笑わなかったし盛り上がらなかった。ネタのチョイスを間違ったか?滑った・・・・・・と思ったが拍手が来た。
こうして順番に自己紹介が次々と行われた。
その中で子ギャルの出番が来た「あたしは沢渡亜由美。出身は和泉中学校。ピンクのやつが言ってたけど根は真面目で勉強も出来るわ。みんなあたしの事は『あゆ』って呼んで仲良くしてね|(はぁと)」
一瞬場が凍りついたが拍手が起こった。
見た目通り変な挨拶をすると思ったが案外普通だ。
友達になったら面白そうだ。と内面考えていた。
一通り挨拶が終わるとチャイムが鳴った。絶妙なタイミングだ。
先生は「これから1年間同じクラスで過ごす事になるので仲良くするように」といって教室を去った。
いきなり40人近くの人から自己紹介をされて覚えられるはずがない。バカなのか?とおもいつつ周りの人達と仲良くなっておこうと次の時間までの休み時間周囲の人に話しかけてみたが反応は冷たかった。
中にはもうグループが作られているとこもあった。
このままでは孤立してしまう。誰か1人でも友達を見つけないと。
仲間を作るということは重要だ。ライアーゲームでも仲間がキーになってくる。
まぁライアーゲームやってるわけではないのだが。
あゆはもう女子の人気になっていた。
なぜ同じようなポジションで人気の出る出ないの差が出るのだ。
子ギャルは珍しいが高校生では受け入れやすい存在なのか?
前の人生ではこの時点でグループに入れたような気がする。
しかし前の人生で同じグループに入れてくれた人も冷たい眼でこちらを見ている。
ピンクの髪とピアスが原因か?ここでなぜなぜ分析をしてみる。
しかし答えが出ることはなかったのだ。なぜなら、なぜなぜ分析は物が壊れたやらそうしたら改善するのかという時に用い人間関係には当てはまらないのだ。
次の時間は部活紹介だった。2時限潰して体育館で新入部員に部の紹介をするというものだった。
当時俺は吹奏楽部に入るかどうか真面目に考えた。
結果勉強の邪魔になるので入らない事にした。
けいおん部があれば入りたいところだがけいおん部は無かった。
内容的には体育館で各部が待っており新入部員候補の1年生は自由に行動して入る部を決めるというものだった。
この時覚えているのが余った時間で女子に告白されたということだ。
今回も同じような事が起きた。
女子3人組が俺の方に歩み寄ってくる。
そしてその中の1人多分同じクラスで見たことある女子が
「ちょっといいかな、話があるんだけど」
黒髪でストレート、体型は深田恭子くらいの女子生徒が話しかけてきた。たしか名前は塩沢。
俺は結果が解ってるので。
「うん、無理!」
と先手で断ったのだ。なぜなら小柄なブスが俺に告白しようとしたが勇気がなくて女子2人連れて告白にきたというわけだ。
「まだ何も言ってないんだけど!」
「言われなくても分かってるんだよ! そいつが俺に告白しようとしてるんだろ?」
「なんでわかったの?」
「本能で、俺を甘く見てもらっては困る!」
塩沢は少し戸惑ったようにようにみせて「話だけでも聞いてくれない」と言い返してきた。
俺はNoといえる時にはNoと言える人間なのだ。
「愚問!その子と付き合うのは無理だ。塩沢なら考えてやらなくてもいいぞ」
塩沢は少し顔を赤らめた。
「今は私じゃなくてこの子の告白の手伝いに来たの」
「説明しなくても知ってる。だから無理と言ったんだよ」
ぶっちゃけブスに告白されても嬉しくない。こちらにも選ぶ権利があるというものだ。
小柄な女の子は今にも泣きそうだ。
「俺は部活見てくるからじゃあな」
「ちょ・・・・・・まっ」
そういってその場を後にした。
女子を思いっきり振るってのは気持ちがいいもんだ。
部活紹介に2時限もとっているのだヒマといったりゃありゃしない。
ためしに色んな部活を観て回ることにした。新鮮な気持ちで観たら心が動くかもしれない。
あれこれ30分位観に回ったがやはり心が揺れ動かされる事は無かった。
面白かったのは部活のブースに俺が行った時の先輩達の反応だ。
どうか入らないないで下さいというオーラがビンビンに伝わってきた。
ピンク色のエイリアンはどこもお断りのようだった。
ヒマになってきた頃体育館をうろついてるとあゆがヒマそうにしてるのが見えた。
ちょっとからかってやるかと思いあゆに近づき声をかけた。
「いい部活は見つかったかい? どっかはいるん?」
あゆはエッとした表情で言葉を切り返してきた。
「部活なんて時間の無駄じゃん。遊びたいよ。ってかなんでアンタが話しかけてきてるわけ? 目つけられるとウザイんで消えてくれない?」
「なんで俺といると目をつけられるんだよ。お前子ギャルじゃん。誰の目を気にしてるわけ。お前の方が目立ってるよ」
あゆは驚いたように俺の声を聞き入れた。
「誰の目も気にしてないんだから。あたしはあたし。誰でもないわ。どうせあんたも高校デビューなんでしょ?ダッサ」
「そういうお前もどうせ高校デビューだろ? ダサイのはお前だ。ところでおっぱい何カップ? まな板のように思えるんだけど。ギャルって巨乳のイメージがあるんだ・・・・・・」
パァーーーン!俺は頬を引っぱたかれた。
「あんた本当に常識ないのね。その下品なピンクの髪といい普通じゃないわ」
子ギャルに常識説教されるとは思っていなかった。
でも前の人生ではこう言う事は無かったはずだ。
徐々に違った人生を歩み始めてる気がする。
「ピンクのどこが下品だ。高校生活は1度しかないんだぜ? お互い楽しもうや。社会人になればしがらみだらけで何もできないんだぜ?」
俺は諭すように言った。
「社会人なんて想像がつかないわ。今を楽しく生きてればいいだけ、未来なんて誰にも分からないじゃない」
「お前も就職活動や大学に行く時にその格好はできないんだぜ?」
あゆは妙に納得した顔になった。
「あなた未来を見てきたかのようにいうのね? なぜ?」
タイムリープしたとは言えずちょっと困った。
「少し考えれば分かる事だろ? 常識的に物事をいってるんだよ」
「あなたみたいな人に常識を語る資格はないわ。じゃあね。またね」
たしかにピンク色の頭をしてる奴に常識を語らせるほうが無理だというものだ。
これが黒髪だったら変わるのだろうか。そのまえに『またね』というあゆの言葉が印象に残った。
あゆが去った後女子達が近づいてきた。
「あなたあゆちゃんに告白でもしたの?」
そんなつもりは全く無いんだが。
「雑談をしてただけだよ」
「あなたほっぺたをひっぱたかれてたじゃない。振られたんじゃないの?」
「それは俺が調子に乗って失礼な事を言ったからだよ」
他の女子が続ける。
「あなたなんてあゆちゃんのキープにもなれないんだからね」
別に彼氏になる気もキープになる気もない。クソガキに興味はないのだ。
うかつに女子高生に手を出したら淫行条例違反になりかねん。
いやまてよ?俺も高校生だから問題ないのか。
ちょっと吹っ切れた気がした。
「俺は誰のものにもなんねーよ。あゆだって例外じゃねえ。んが決して勘違いするなよ。俺はゲイじゃないかならな」
勘違いされると困るので伝えておく。
まだ時間は20分位ある。
また塩沢が近づいてきた。
俺は伝家の宝刀の言葉を用意しておいた。
「あの~」塩沢がテレたように話しかけてきた。
「無理です」
すかさず切り替えしたわずか0.5秒位の間合いで。
「まだ何も言ってないじゃん」
「無理なものは無理なんだよ諦めて部活紹介でも見とけ」
「そうじゃなくて、さっきあたしの事なら考えてもいいっていってましたよね?」
「どういう意味?」
ちょっと頭が追いつかなくなってきた。
「あたしと付き合うのはOKなんですか?」
「なんで敬語なのか知らんがタメ口でいいよ。同じクラスだし先輩でもねえし。ま~お前なら考えてやらなくもないかな~。なんちゃって」
「じゃああたしの事ちょっとは考えておいて下さい」
「お友達が告白した相手にそれ言う?」
友達が振られた後すぐさま擦り寄ってくるなんてなかなか肝の座った女だ。
「今すぐなら無理というが考えておいてやるよ。言っておくが俺はNoと言える男だ」
塩沢が顔を赤らめて去っていく。
こんな展開は無かったはずだぞ。そもそも塩沢が俺の事気にしてる?たしかに在学中は彼氏が居なかったみたいだし、告白してきたブスは違う男とすぐにくっいたのは知ってる。
こうして全校生徒の間にピンク色の髪の1年生の噂は広まってゆくのであった。
部活紹介で2年3年生が集ってる場所でこんな髪してたらすぐに噂は広まるであろう予想はついた。
教室に戻るといくつかのグループが出来上がっていた。
弾かれ者が何人かいるが、体育館でよほどヒマだったのだろう話の談義に花を咲かせていた。
どこの部活に入る?なんて会話も聞こえてくる。
俺は今度の人生も部活に入らない事を決心した。
吹奏楽部や合唱部あたりは女子もいてウハウハなような気がしてちょっと入ろうか迷ったのは秘密だ。
ちょっとして先生が入ってきた。
全員席に座って先生の話を聞くことになった。
「楽しい高校生活部活に入って青春するのも悪くはないぞ。尾崎そして沢渡お前らは部活に入らないよな?」
なんか悪意のある質問が俺の元に飛んできた。
「どういう事ですか? 髪がピンクだから部活にはいっちゃいけないという決まりでもあるんですか? 先生は人を外見で差別する傾向があるようですね?」
人は中身だ。外見なんてものは話せば吹き飛んでしまう程度のものだ。
「お前らみたいなのが入ると部活にも迷惑かけそうだしな」
「そんなの先生に関係あるんですか? 本当に部活に興味あるならはいってたかもしれませんよ。ま~興味は無かったんですがね」
あゆも続けてこういう。
「人を見た目で判断できないってのは真吾に同情します。人を外見だけで判断しないで下さい」
なぜかあゆに名前を呼び捨てにされた。ちょっとムカつく。
体育館でチラッと話しただけなのにいかにも仲がいいですよアピールがウザイ。
先生はもう何も言い返せずホームルームに移った。
今日は初日だから特にやることもないのだろう。
会社だって同じだ。初日はまず間違いなく定時で帰らされる。仕事がまだ覚えてないってのもあるんだろうけど。
あゆとの絡みがこのあと想像も出来ない事になるとはこの時の俺はまだ知らなかった。
とりあえず大検はやめて高校生活を送ろうと決意した。
どうせ成績もトップだろうしセンター試験も、早稲田の入試試験は今でも覚えてる。
たいして勉強することなく高校生活を満喫できるのだ。
商社で東大卒の同期が言ってた事を思い出した。
「テストって実は学校の授業で習った分しかでないから、授業聞いてれば誰でも満点採れる様になってるんだよ」
授業だけは真面目に聞いておこうと思った。
元の世界の俺は学習塾に通っていたし家庭教師が居たが今の俺には必要ないだろう。家計の負担も減るし。
そうして初日の学校生活は幕を閉じた。
家に帰ると原がすでに部屋にいた。こいつは初日から学校をフケてたという。
相変わらずヤンチャだ。
そしていつものようにゲームをしながらタバコを吹かす。
ちょっとタバコを吸ってみたが気持ち悪くなるだけで、やっぱり体がニコチンを受け入れなかった。なんて健全的な身体だ。
酒も毎日呑んでいたが今は必要ない。
俺はアルコール依存症じゃないかってくらい毎日呑んでいたのだ。
呑まなきゃ正直やってられないこともあった。部下の責任と上司の尻拭いを毎回やらされてた訳だから酒に溺れるのは当たり前だろう。
良かったのはドラッグに手を出さなかった事だ。
脱法ドラッグとかが一時期流行っていたが俺は手を出さなかった。
チャラついていたが根は真面目なのである。
今日1日で俺の噂は学校全体へと広がりさらなる激動を向かえる事となる。
Coming soon!!
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