KAGUYA
ぴこちゅ
タイムリープ・・・そして・・・横浜編1
第1話 ~序章~
俺、尾崎真吾は何の考えも無く大検を取り、早稲田大学を卒業し現在住友商事の課長43歳だ。
不満があるわけではない。しいていえば彼女と別れて5年、その間彼女を作らなかった事位だ。決してブスではない。彼女をあえて作らなかったのだ。
毎日の仕事は激しく忙しく上司と部下の板ばさみな生活はそれほど悪いものではなかった。残業もザラである。定時退社したことなんて記憶にない。
今日は渋谷で会社の飲み会。夜空を見上げると大きな月が出てた。
同僚の福地もかなり酔っ払っている。普段は寡黙なのだが酒が入ると一気に楽しい人に大変身。酒って怖い・・・・・・これでも親友なのだが親友の壊れっぷりに泣きそうになる。
「でっけ~月だな~ぉぃ」とか呟きつつ宴会の二次会はキャバクラに行こうと渋谷のスクランブル交差点で程よい酔いの中で信号が青になるのを待っていた。
その時!後ろから誰かに押されたような気がした。
「ちょ!待っ・・・・・・」一気に酔いが覚めた。
スクランブル交差点の1番前にいた俺は体勢を崩し道路に投げ出された。
その時運悪く猛スピードで走ってくるトラックがいた。
ドンッ!俺はトラックにはねられた。
死んだな。短い人生だった。次に生れ変れたら結婚でもして幸せに暮らそう等と薄れ行く意識の中で思った。
周囲には沢山の会社の仲間達。あっけない終わり方だった。俺がトラックにひかれ皆動揺の色を隠せない。
あまりにも一瞬の出来事だった。
そしてしばらくすると目が覚めた。
「ここは病院・・・・・・じゃないな」どこかで見覚えのある部屋。でも決して現状の俺の部屋ではない。実家に住んでいたころの家だ。
トラックにひかれた外傷はない。
ここが天国という所なのだろうか。それにしては現実的過ぎる。
俺は鏡の前に立つと絶句した。15~16歳の少年が立っているのだ。
少年というより自分の学生時代。
訳が分からない。いったん整理しよう。俺は会社の同僚達と渋谷で飲んでて、スクランブル交差点で誰かに押されトラックにひかれた。そこまでは覚えてる。
次の瞬間が今のこの現状だ。
「タイムリープでもしたのか?」まさかな、時をかける少女じゃあるまいし。
そんな事を考えてると遠くから声が聞こえてきた。
「真吾ご飯だよ! 早く起きなさ~い」
紛れもない母の声だった。
着替えてリビングに行くと20数年前にあった実家がそこにあった。
古臭い4LDKのマンションの1F。まさにそこだったのだ。
リビングには弟と妹もいた。
「おにーちゃんおはよう~」
小学生位か?いやに小さく感じる。
前の世界での俺達兄弟は冷え切った仲だった。
「あんたもうすぐ高校生なんだからしっかりしなさい」
ちょっと若返ってる母が言った。
リビングで新聞を読んでる父親から新聞を取り上げ何年の何月何日か確認した。
「何するんだよ真吾返せよ」
「ちょっとで済むから」
そういい新聞欄の日付を見た。
1996年3月25日。俺は確信した。渋谷でトラックにひかれ何かの原因でタイムリープしてしまったということ。
それでも不思議とパニくらなかった。
今日から俺は第二の人生を始められるんだという期待で胸がいっぱいになった。
俺は高校1年の時に大検を受けて、受かって高校を中退したから高校の思い出があまりない。
というかガリ勉学生だった。
「今度は高校に行ってやる~やっほ~!」と叫び朝飯を食って部屋に戻った。
「真吾どうしたのかしら?」
「変な夢でもみたんじゃないか?」
父と母のそんな会話は耳に入ってこなかった。
今度の高校生活は楽しく愉快に過ごそう。
そう決めたのだった。
まずはイメージチェンジからだな。美容室にでも行って髪を染めるか。
の・・・・・・前に今財布になんぼ入ってるのかチェックしないとだな。
俺は机の上にある財布の中身を見た。
「22000円・・・・・・」なんでこんなに少ないんだ?
まぁ学生の身なんだから無くてもしょうがないんだろうと強引に納得させた。
多分お年玉の余りであろう。
早速美容室に向かった。今はどうしてるのかわからない担当美容師さんがいた。
とても懐かしく感じる。
「尾崎君今日はどうするんだい?」
「髪をピンクにしてください」
「!! いいの?」
「やっちゃって下さい」
俺は髪をピンクにすることにした。なぜなら俺はX-JAPANのHIDEが大好きだったからだ。まだ1996年のHIDEは長髪で頭が爆発してる状態だったから時代の先駆けってヤツだ。
美容室でのどうしようもない会話が流れる。俺はこの美容師とのなんでもないやり取りが大嫌いなのだ。温泉雑誌見てたら温泉いいですよね~とか関係ねーだろ!みたいな。
タバコを吸わなくていい体とは実に健康的だった。
前はヘヴィースモーカーだったのにタバコを吸おうとも思わない。
髪に色が入り鮮やかなピンク色になった。これでHIDEの先を越せたぜ。
「髪型はどうしますか?」
美容師が聞いてきた。
「ふわっと立ち上げる位で!」
ちょっとムカついた。空気読めよって話である。
こうして午前中は美容室で潰れた。
「午後から何しよっかな~」
なんて思って髪をかきあげたらピアスが無い。
そう、ピアスを空けたのは社会人になってからの事であった。
さっそくドン・キホーテにGOとか思ったけどこの時代まだドン・キホーテは数店舗しか存在しない。
しょうがなく病院でピアスを開ける事にした。
病院でのピアス開けはサクッと終わった。
「3日間位はウミが出るので消毒して下さい」と医者が言ったので消毒薬をドラッグストアで買ってきた。
これで所持金は11000円になった。
ピアスを開けたんだからピアスを買おう!というわけで安物のアクセサリーショップに入って円柱のピアスを探した。
どことなく店内がざわついてると思った。
原因は俺。ピンク色の髪をしたヤツがピアスを探し回ってるのだ。
「ねぇねぇ何あのピンクの子ぉ」
女子高生らしき人が友達と話してる。
俺はすかさず側に言って文句を言ってやった。
「髪がピンクで何が悪い、ハイキック喰らわせんぞゴラァ!」
というと悲鳴と共に女子高生軍団と思われる奴等は去っていった。
お目当てのピアスを見つけた。
2個セットで980円だった。
左耳しかピアスをつけてないのでぶっちゃけ1個はいらないが予備として持っておくのもアリだろうと思い買った。
残りは1万円。さてどうしたものか。
「無駄に使わなくてもいいっか~どうせ収入のアテなんてないんだし」
そう言って家に帰る事にした。もう日が暮れてる。1日というものは早いものだ。
今日1日でずいぶん雰囲気が変わった。あとは服装なんだが1万じゃどうしようもならないだろうと思って諦めた。
家に帰ると母親が俺を見るなり叫んだ。
「あんたどうしたのその頭!」
「ん?染めた?」
「染めたじゃないでしょ! あなた高校生なのよ!」
「社会人になったらもっと染めれなくなるから今のうちにね」
「それでもピンクはないんじゃないの? 頭おかしくなったの? そんな子じゃなかったのに」
予想通りの反応である。まぁ想定の範囲内なので気にせずにしておく。
問題は親父だ。どういいわけしよう。
弟と妹は兄ちゃんピンクカッケーっとか言ってくるし。
間もなくして父親が帰ってきた。
そして俺を見るなり
「なんだその頭は! 自分がどういう立場か分かってるのか?!」
「ハイハイ。高校生前ですよ。自由にやらせてくれてもいいじゃん?」
「物には限度ってもんがあるだろう!」
「社会人になったらこんなふざけた事出来ないんでいまのうちにしとく、以上質問は受け付けません」
といい部屋に戻って行った。
これで学校行ったら目立ちまくりだろうな~とか思いつつTVを観ていた。
しばらくしたら窓をコンコンと叩く音がした。
カーテンを開けると懐かしい悪友がそこに立っていた。そう原弘樹だ。
俺は窓を開けると一言言い放ってしまった。
「原ぁ~元気か? お前なにやってたん?」
原はキョトンとしたような眼で見て
「昨日も会ったやん」と言った。
中性的な美少年の原は中学校時代からモテていた。
「今日はどうしたん?」と俺が言ったら
「茶髪にしてきたんだけどお前みてると霞んでくるわ」と言われた。
なにせ俺は髪の毛がピンクである。
「ピアスも開けたんだよ。ホラ!」というと
「真吾に何があったん?」って問いただしてきた。
まさか未来からタイムリープしてきたとは言えず話を誤魔化した。
原が続けて
「お前の髪エゲツないな~出鱈目やん」
と言ってきた。まぁこの時代にピンクの髪なんてしてる奴見たこともないからそういえばそうかもしれない。
俺は昔出来なかった事をしている訳だが。
さすがにサラリーマンでピンクの髪は無いだろう。せいぜいうっすい茶髪程度だ。
それでもセミロングのピアスだったわけだが。
「今日は何しに来たん? まさか茶髪をひけらかすためだけ?」
「そうだよ。でも真吾には負けたわ」
そう言って原は窓から家に入ってきた。
覚えたてのタバコを吹かして一緒にゲームをやってそれが朝まで続いた。
途中タバコを貰ったのだけど、どうも体がタバコ受け付けないらしく吹かして終わった。
当時流行っていたFF7のスノボのミニゲームでタイムを競うというのが俺達の中で流行っていた。
原の家は貧乏でゲームも無くしょっちゅうウチに来てはゲームをしていた。
FF7のスノボゲームのタイムアタックは前に出した記録のゴースト(半透明)キャラが出るのだ。それをいかに抜くか2人でよく競っていた。
ちなみに俺と原は別々の高校に行く事になっていた。中学時代の親友もこれで終りかなとは思っていたが実際は高校に入ってもよく遊びに来ていた。
原はヤンチャだったので高校生になったら暴走族に入るとも言っていた。
そのために中型免許を取るため中学時代から新聞配達のバイトもしていた。
今思うと涙ぐましい努力である。
原はそのままお泊りとなった。家が近所なんだから帰れよって話も無視して。
次の日の朝目覚まし代わりに窓をトントンと叩く音が聞こえた。
カーテンを開けてみると向井真也だった。
長身で美形。まずイケメンだろうというこの男はなぜ俺とつるむのだろうといつも疑問に思っていた。
真也もまたイケイケで高校に入ったら原と一緒に暴走族に入るとかトチ狂った考え方の持ち主である。
そういうとうちは暴走族予備軍のたまり場だったのかもしれない。
結果から言えば2人共暴走族に入った。
真也も俺を見るなり
「ピンクの髪なんて尋常じゃねえよ。何かあったん?」
と聞いてきた。しかし、のらりくらりと質問をかわした。
X-JAPANのHIDEがのちにこういう髪型になるんだよって言っても理解できないだろう。
所詮は中坊卒業したての高校生前の人間である。
その日は3人で行動しカラオケに行ったのだが曲が古すぎて覚えてないのだ。
AKB48もモー娘もいない時代である。
安室奈美恵と浜崎あゆみがちょっとTVに出た位の時期だった。
取引先との接待でスナックで歌う曲よりもさらに古い。
時代錯誤を感じるのであった。
ちなみに近くのカラオケボックスは1時間1部屋500円(ドリンク別)と中学高校生向きには有難い存在であった。
春休みも残り数日、学校に行くのがワクワクしてきた。
まさかピンク色のエイリアンが入学してくるなどとは誰も思っていないだろう。
母親と父親は諦めたせいか髪の事は気にせず普通に接してくれている。慣れとは恐ろしいものだと実感した。
ピアスも別に咎められる事は無かった思春期の男子と言う事で方付けられたのだろう。
まぁ~学校に行くまでは原と真也と遊ぶ事になるだろう。
俺の思い出もそうなのだから。
俺の記憶違いでなければ高校行ってもこの2人は家に遊びに来てた気がする。
こうして怒涛の3月末はあっという間に過ぎていった。
もう明日は入学式。なんだかこの髪で行くのは気が引けてきた。
高校の制服も合わせてみたのだがピシッとするとなんか間抜けに見えるのでYシャツは表にチラッと出す事にした。
前の人生では考えられない出来事だ。
さてさてどのような高校生活が待っているか楽しみである。
っていっても高校には行った記憶があるのであまり期待は湧かないだろうとは予想していた。
しかし!
Coming Soon!!
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