第34話 別れ話

「もう別れよう。」


そう言ったのは僕の方からだった。

同じ高校の同学年の女の子と付き合っていたのだが、彼女の束縛がきつくて別れを告げることにした。

僕が女子と話しているだけで嫉妬してヒステリーを起こしたり、会えない時も長時間電話しないと怒る彼女が面倒になったからだ。


「そう、分かった。でも、あなた以外の人と付き合うなんて想像も出来ないな。」


それだけ言うと、彼女は踵を返して帰って行った。僕にあれだけ執着していたのに、やけにあっさりと別れを承諾したので肩透かしを食らった僕だが、これで肩の荷が下りたと安堵した。


それから数日後、彼女は高架の上から落ちて自殺した。


別れ話をした僕が悪かったのだろうか?そんなに他の人と付き合うことが苦痛だったのだろうか?彼女はどうしてそんなに僕のことを愛していたのだろう?

彼女が死んでしまっては、それらのことはもう藪の中だ。

酷く気分が落ち込んだ僕は、一ヶ月後、彼女が死んだ高架の上に立った。

楽に死ねるかな?と下を覗き込んでみたが、あまりの高さに身が縮みあがった。

この高さを彼女は飛んだのだ。僕にはそんな度胸はまるで無い。

彼女は一生僕の重みとなるだろう。こんなことになるなら彼女を将来の伴侶として幸せな家庭を築いていく未来もあったかもしれないと頭を巡らせてみたが、何故だか僕が血まみれで倒れている映像ばかりが出てきてしまうので、耐えきれなくなった僕は高架下に向かってゲロを吐いてしまった。

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