第33話 ベストマッチ

私はマッチ売りの少女。寒い雪の中、マッチで幸せな幻覚を見ながら死に行く運命。

あぁ、お祖母ちゃん。今すぐ行くからね。


「もし、そこのマドモアゼル?」


雪に倒れ伏していると、何だか男の人の声がして顔を上げると、奇怪な格好をした人が私の前に立っていた。見たことも無い格好なので表現するのが難しい。

すると男の人はこう言うのです。


「キビ団子あげるから、僕と鬼退治に行きませんか?」


キビ団子に鬼退治?意味の分からない単語のオンパレード、第一何で彼の喋っている言葉が分かるのかすら私には分かりません。

まだマッチの火で幻覚でも見てるんでしょうか?


「キビ団子と鬼退治って何ですか?」


「キビ団子は岡山の特産品で、鬼退治はオーガを一狩りしようぜってことです。」


「へぇ。」


岡山は何処か知りませんが、オーガは角の生えた大きな化け物ということは知っています。オーガを倒しに行こうとしてるなんて凄い人ですね。


「私なんて連れて行っても何も出来ませんよ。火で相手を燃やしたり、火で相手に幻覚を見せたり、その程度のことしか出来ません。」


「充分ですよ。鬼が島を火の海にしてあげましょう♪」


「それは楽しそうですね。」


楽しそうに笑うその人の名前は桃太郎というらしく、東洋から来た若者らしいです。

かくして私と桃太郎の旅が始まりました。


「桃太郎さん、犬、猿、雉がお供に居たそうですが、彼らは何処に行ったんですかね?」


「彼らはの肉体と精神は、いつでも私と共にあります。」


そう言いながら彼はお腹を擦っていたので、私は全てを察しました。

所詮この世は弱肉強食ですからね。仕方ありません。

かくいう私も昨日は桃太郎さんに食べられてしまったのですから♪・・・きゃっ♪

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