第7話  ごんぎつね その後を妄想中

これは兵十がごんを撃ってしまった後の話。

兵十はごんを撃ってしまった後、罪悪感から抜け殻の様に生きていました。

そんな兵十の元に金の長髪美人の女の人が訪ねて来たのです。立派なな紺色の着物を着て、目鼻立ちの整った、この辺では見ない感じのべっぴんさんの登場に兵十は大層驚きました。

金髪の美人は戸惑う兵十を前にこう言います。


「アンタに惚れた、おれ・・・いや私を嫁に貰ってくれないかい?」


「な、何言ってんだ?急にそんなことを言われても・・・。」


あまりに突然の申し出に兵十は断ろうとしましたが、金髪の女の人は無理矢理その日から兵十の家に住むことになりました。

金髪の美人の名は紗阿(さあ)と言い。紗阿は毎日食事の用意や風呂焚き、家の掃除などをしてくれました。

兵十は最初こそ怪しんだりしていましたが、自分に良くしてくれる紗阿のことを有難く感じる様になりました。

しかし、ある日のこと。

床に入って寝ていた兵十は物音で起きました。辺りはまだ暗いというのに台所の方から何やらガタゴトと物音が聞こえるのです。

気になった兵十はそっと引き戸を少しだけ開き、台所の様子を窺うと、紗阿が汗をぬぐいながら釜戸に薪を入れて、それを竹筒をフーッと吹いて米を炊いていました。


アイツこんな朝早くから朝飯の準備をしてくれていたのか


兵十は大層感心し、紗阿に対する疑いの心が一切なくなりました。

そのまま引き戸を閉めようとする兵十。けれど、ある光景を見てその手は止まります。なんと紗阿の頭からモフモフの獣の耳の様な物が飛び出したのです。その耳はまるで狐の様です。


「ふーっ、米炊きも大変だぜ。でも兵十の為だ、うんと美味しい米を炊いてやらねぇと。鰻も食べさせてやりてぇなぁ。」


兵十はその時、全てを察しました。すると引き戸をバーンと開けて、再びあの台詞を言うのです。


「ごん、お前だったのか。」


突然現れた兵十に驚いて耳がピンとなる紗阿でしたが、すぐに兵十の方を向いて、笑顔で頷きました。

兵十はごんがまた自分の所に来てくれたことが嬉しくて、涙が止まりませんでした。


ごんは転生して人間の女として蘇り、兵十の傍に居ることを選んだのです。

狐だった頃の名残で、時折頭から狐の耳が飛び出してしまいますが、兵十はそんなことは一切気にしません。

二人はその後、仲睦まじく暮らしましたとさ。

めでたしめでたし。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る