雨が来なきゃいいのに
輝 三毛
第1話 起きない人
私の恋は、隣の席だった。
出会いは中学一年生。
偶然にも隣の席になった男の子。
退屈な授業に眠ってしまうその横顔も、起こした時のふにゃりとした笑顔も全部、全部私の一ページなのだ。
中学一年生
新しい教科書に、新しい先生。知らない授業に知らないリズム。
なにもかも新しい生活にふと飛び込んできた。
今までの私の生活にいなかった君。
真面目に授業を受けている視界の片隅で、穏やかな顔で寝ていた。
つついても、声をかけても、何をしても起きなくて。
起きたかと思えば、目を合わせてにこりと笑うずるい君。
どんなに怒られても起きないし
最初からさいごまで真面目に授業は受けないし
それでいて、目が合うと笑ってくれる。
おぼこい私がおちないわけがなくて
虜にならないわけがなくて
いつか私だけに笑ってくれたらなんて都合のいいことをおもったり。そんな詮無いことを思ったり、先生や周りに人のいない時間を思い描いたり。
そんな君は、どんなにわたしが君を好きでも
どんなに君を見ていても、気づいてもらえないだろう私に。
精一杯のエールを。
今すぐ起きて、気づけばか。
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