——外出できたんかい

 祖父を弔いながらも葬儀に参加できない歯痒さがあり、そんなセンチメンタルな週末が明けた月曜日。

 夕方に診察のため看護師が呼びに来た。


 診察室に向かう途中で、看護師が私に尋ねてきた。

「そういえば雨季うきさん、外出はいつにします?」

「……?」

「あれ、何も聞いてない? お祖父さんの件があるから御葬儀とかで外出希望出せるけど、どうするかって先生が言ってて……」


 ——え、ここ、外出とかできるの?


「あの、お葬式……今日でした……」

「え、そうだったの……」


 何とも言えない気まずさが流れてしまった。

 私は一体何のために甘んじて……。


 外出制度について全く説明してくれない病院も病院だが、私もすっかり囚人気分で “何があっても外に出ることは絶対に許されない存在” として過ごしていた。


 というか、いつ亡くなったと思ってるんだ。

 もっと早く言ってくれよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る