1章 永遠の生命か、限りある命か

1-0 死喰い人の旅

 ――不思議な夢を見た。

 葉月が何故か私を見て泣いているんだ。


「葉月、大人になったらお父様とお別れだ。葉月はもう大人になったから、お父様がいなくても大丈夫」

 

 そう言った私に、あの子は酷く怒ってしまっていた。

 

「うるさい! それもう何回も聞いた! 大丈夫じゃないもん! 葉月は『死喰い人』だから、大人になれないんだよ! なのにお父様はもう二回も死んでる。もう死なないで! 葉月をひとりにしないでよ! 」

 

 ただの夢の出来事だ。

 現実の記憶でもないのになぜか頭に残る言葉。

 諦めようとする私を何度も引き止めた。

 でもなぜなんだろう。

 

 ――葉月はどうしてこんなことを言ってるんだ?

 

 それは大正五年の四月十五日。

 桜が散り始めた春の日のこと――。



 

 パチン!と軽快に指を弾く音がする。


「僕はいま彰人兄さんに呪いをかけた。放っておいたら死に至る呪いだ。期限は一年後の四月十五日。阻止したければ『始祖の血』を探してきて。それが呪いを解く鍵だ」


 月の色の髪をした青年は、そう言っていたずらっぽく笑っていた。



 

 これは私の一年間の物語。


 私の息子が大人になるまでの道のり。

 

 ――終わりと始まりに至るまでの旅の記憶。


 

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