帝mikado 昭和100年(2025年) 終わりへ向かって行く世界

KKモントレイユ

第1話 タイムマシンと宇宙~酔っ払いの話(一)

 年末の不思議な経験から一ヵ月。まだ、その時のことを忘れることができない。

 神谷京介かみやきょうすけは久し振りに会う高校時代の友人たちとの飲み会だった。帰りの電車の中はサラリーマンやOL、まばらな乗客が疲れた表情で座っている。


 ふと気が付くと少し離れた席に大学の同じ学科の久木哲也ひさきてつやが綺麗な女性と一緒に座っている。彼女なのだろうか、年上の女性のようだ。何か親し気に話していて、こちらには気が付かない様子だ。


 静かな電車に酔っ払ったサラリーマン風の男が二人乗ってきた。何か機嫌よく話しているのが聞こえてくる。


「でも、さあ、もし未来にタイムマシンができていたとしたら、今の時代に未来からたくさんの人がやってきているんじゃないの」


「いや、それはないんだよ。今の時代だって、もしタイムマシンがあって過去に行けるとして、その時代の人に接触すると未来を変えてしまうかもしれないと言うじゃない。だから未来からタイムマシンでやって来ても、今の人にはできるだけ会わないようにするんだよ」


「なるほど。じゃあ、未来にはタイムマシンができてて、今の時代に来てるの?」


「来てるんだよ。これが」


「どうして、そう思うの」


「いいかい。ちょっと、違う話から説明するぞ」


「ああ」


「この地球は太陽系の中にあって、太陽系は銀河系の中にあるよなあ。宇宙は広がっているというから、よくわからないけど、広大な空間の中を移動してるんだよな。銀河系も太陽系も、その中の地球も……ずっと未来には、宇宙の、この場所より遙か遠いところへ地球も移動しているわけだ」


「ああ」


「そうすると遙か未来の地球は、遙か宇宙の彼方にあることになる」


「まあ、そういうことか」


「遙か未来の地球では今より遥かに文化が進んでいる。当然、その頃は今の人類ではなく、次の世代の人類になっているんだ」


「ええ?」


「今まで地球にも、アウストラロピテクスとかジャワ原人とかいて、そこから今のホモサピエンスになったじゃないか、歴史の教科書の最初の方で勉強する。つまり、遙か未来には次の世代の人類になっているわけだ」


「ああ、そういうこと……で、その人類が、この時代に来ているの?」


 どうでもいいと思っていた酔っ払いの話が、やけに興味深いと思いながら京介きょうすけは耳を傾けていた。

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