他人の評価が職業名になってる妙な世界へ転生してしまった
プリオケ爺
剣聖誕生
前世というものがあるとしたら、それは過去の血の連なりだろう。
父母、祖父母、曾祖父母・・・
手繰れば、それは恐ろしい数の人生となる。
その人々の全ての記憶を継承?
沙汰の限りであろう。
あれ?沙汰の限り、て沙汰の外と同じ意味の慣用句よね。
「はぁ~~~」
前世の記憶、日本語言語での思考を止め、今世の言語に切り替える。
そう、前世持ちはバイリンガルにはなれないのだ・・・
「次、これへ」
白い僧衣のお兄・・・おじさんに促され、絹やらモールやらで大仰に飾られた座布団に鎮座する白い結晶の前へと歩み出る。
僧が水晶に手をかざすと、その水晶に青い勾玉のような紋が浮かび出る。
「剣の紋に聖の輝き・・・剣聖です」
感嘆と好意的な騒めきが広がる。
白々しくなるばかりの気分を押さえ、口元を緩めながら下マブタを薄く上げ笑みを作る。
「さすがベルティエ家、名門の血か」
おもわず緩ませた口元から飛び出そうになった舌打ちを、寸で怺えた。
壇上に立つ父に目をやる。
クソガキが高慢なまま大人になった人間、その見本のようだった父。
つたなくこちらのコトバを操れるほどまで成長した幼少時、何かをわめきながら仲が良かった侍女を嬲る姿を目の当たりにしたあたしはその場で躾を行い、以後父と会うたびにそのアタマとカラダに十分な因果を教え込んだ。
前世における子育ての失敗であたしは学習したのだ。
理解と尊重だけでは、生まれながらの聖人でもないかぎり、社会性をもつ人間としての成長はないということを。
目があえば鼻を折り、視界内に立ち姿があれば脚を折った。
反抗心が見えれば蹴り、諂いを感じればまたそれ以上に蹴った。
そしてようやくあたしを認めれば顔を伏せ、寄れば膝をつき、言葉をかければ肯定を返すだけの最低限の常識を持った人間に矯正できたのであった。
いけない、今だ日本語言語で思考している。
はやく切り替えなければ明日のパーティには片言で出るハメになってしまう。
片言で行う社交など想像するだけで憂鬱になる。
一体何人縊り殺すハメになるのか・・・
「フン、剣聖か。順当なだけではないか」
―――――ミハイルきゅん!
クセっ毛をふわり短くまとめた金髪、クールな青い瞳に白磁の肌、永久に見続けていたい桜色のうすい唇、そこから紡ぎ出されるベルベットのように滑らかな歪の乗った美声・・・あぁ、見ているだけでお脳がぽわぽわしちゃうよぉ・・・
「のけ」
「あんっ」
すげなく肩をおされ、段を踏み外し床にナヨナヨ~~~て倒れる。
女アピールやぞ!カレの前では弱くて内気な少女を演出したいにょ・・・
「フ、よい恰好ではないか。そこで我に齎せられる最高の権能に震えるがよいわ」
褒められた!姿形を!!ぁたしのタマシイが想い人からの肯定にめちゃくちゃ震えちゃってるょお・・・おもらししちゃいそ・・・・・・
でも、だめ。
ぃとしぃカレにとって、ぁたしぃは並び立つことぉ許されなぃ敵対派閥の雄(雌だにょ・・・)なのょ・・・前世でゆぅロミジュリエッタぁて悲恋そのまま(読んでない)ぢゃなぃい?ステキ・・・
「む、これは・・・」
僧衣のお兄・・・おじさまの眉間がけわしくひそめられてるにょ・・・ミハィルきゅんどんなスゴィい権能を手にしたんのぉ・・・
「無・・・か。ゴミだな」
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