タバコはなかった!
羽弦トリス
第1話タバコが無い!
神宮寺音彦は朝、起きるとタバコに手を伸ばした。
ベッドから起き上がると、直ぐに喫煙するヘビースモーカー。
だが、タバコが無い。
「チッ、朝、出勤途中にタバコを買おう」
と、思い妻が作る朝ご飯を食べた。
子供は高校生の長男、中学生の長女がいる。
神宮寺は早くタバコを吸いたいがために、早目に出勤した。
コンビニへ行く。
「セブンスター2箱」
コンビニ店員は、キョトンとしている。
「タバコだよ!セブンスター」
「たばこ?何ですか?たばこって」
「ここに、タバコはないのか?」
と、神宮寺は声を荒げたが、
「うちでは、たばこと言うものは置いてありません」
「チッ」
神宮寺は諦めず、コンビニを梯子したがタバコは無かった。
区役所の同僚を見つけたら、声を掛けた。
「和田〜、タバコ一本もらえないか?」
「たばこ?何だそれ?」
「からかうなよ!タバコだよ、タバコ」
「お前、今日は早退した方がいいぞ」
「何故だ」
「朝から意味の分からない事言い始めるからさ」
『まさか、健康推進法でタバコが販売中止になったのか?』
神宮寺はニコチン切れでイライラしていた。
その晩は、部下を連れて居酒屋に行った。
ビールを飲み、喫煙したくなった。
「おい、誰か、タバコを持ってないか?」
「課長、たばこって何ですか?」
と、部下の笠寺が言うと、
「知らないのか?火をつけて煙を吸うタバコだよ!」
全員、「タバコ」を知らなかった。
帰宅すると、長男の歴史の教科書を借りてタバコの歴史を探した。
江戸時代、鹿児島に煙草が大陸から渡り、徳川家康が初めてタバコを吸ったのだが、そんな歴史は載って無かった。
国語辞典で、「タバコ」を探した。
しかし、そんな言葉は見当たらない。
神宮寺は夢の出来事だ!と思い、早く目を覚ます様に、自宅マンションの屋上から飛び降りた。
神宮寺は、即死した。
駆けつけた警察は、神宮寺は自殺と判断して、事件性はないと判断した。
タバコはなかった! 羽弦トリス @September-0919
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