2月21日

 朝目覚めると、強烈な倦怠感に襲われた。寝ぼけた頭で在宅勤務に切り替えようかと考える。別に会社でしかできない仕事はないものの、体調不良というほどでもないので、大井町線に揺られることにした。


 東京は空が狭い。どんよりとした空を突き抜こうとするビル群を通り抜け、自分もその構成員になっていく瞬間は、案外嫌いじゃない。


 パソコンを開けると、そこにはおびただしい数のメール。これでもかというほど、仕事が降ってきていた。中には急ぎの仕事もあり、そしてそういうものは常習犯から来ていたりする。スタッフ部門はいつでも暇していて、仕事が来たらすぐに取り掛かってくれると思っている層は一定数いるものらしい。しかしこれはあまりにあまりなので、その部署の管理職にクレームを入れておいた。


 どこまでやって帰ろうかと思案していると、飲みの誘い。迷わずに乗って、2時間ほどあーでもないこーでもないと、話をする。


 帰り道、何人かがいわゆるキャバクラに行くと言い出す。あしたも出社だからなと思って別れたものの、やっぱり行けばよかったかなと思い始める。そういう夜の遊びはしたことがないが、そういう流れにならないと行けないものでもある。でも、この歳になって初めて行くような芸当をすると、ガチ恋して貢いでしまうことになりそうだなとも思い、少し思い直す。


 ただ、酒も大して飲まず、女遊びもギャンブルも煙草もやらない自分は、何が楽しくて生きているのだろうとは、こころの何処かで思ってしまう。

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