2月11日

 目が覚めたら11時半だった。出かけようと思っていたのに、出遅れてしまった。起き上がらないままスマホを見ていると、天気予報は曇り。夜には雨が降る予報になっている。


 出かけるのは明日にしよう。そう思ってそのまま1時間ほど寝転んで、ようやく起き上がってカーテンを開けると、青空が広がっている。完全に騙された。


 なんか悔しいので、出かけることにした。ばたばたと身支度をして、電車に飛び乗る。大井町線から乗り換えて東急の蒲田へ。食べログでおいしいとされていたとんかつ屋に向かう。昼営業のラストオーダーぎりぎりの時間なので、駅から小走りで向かう。店のある角を曲がると、そこには長い行列。回転は速くないだろうから、ざっとみて1時間ぐらいかかりそうと判断して、すぐに諦めた。


 結局近くのラーメン店に入った。ここも、昼営業終了の30分前。夜まで連続して営業しないのは、蒲田という場所の商慣習なのだろうかと思いながら、麺をすする。


 京急まで歩く。どうやら東急・JRの蒲田と京急の蒲田の間のメインストリートではない道を通ったらしい。ラブホテルの目の前を通過するときに、意地の悪いことに、出てくる不倫カップルはいないものかと目を凝らしてしまう。


 蒲田要塞ともいわれる京急蒲田駅の3階ホームまで行き、羽田空港行きの列車に乗る。特急と言う名前がついているのに、各駅に止まるらしい。車内には、大きなスーツケースを抱えた旅行者たちがひしめき合っている。そんな人たちの半分ほどは国際線の第3ターミナル駅で降りていく。こんな人数が日々羽田から世界に向かって飛んでいくのかと思うと、関西と東京をたまに往復するだけの自分がとてつもなくちっぽけな存在に思えた。


 第2ターミナルの展望デッキに向かう。C滑走路から離陸する航空機が見られることを期待していたが、どうやら着陸機に割り当てられている時間のようだった。降りてくる飛行機に向かってシャッターを切り続ける。


 1時間ほどで飽きて、寒空の下でセブンティーンアイスを食べた。何年振りかに食べるこのアイス、前回食べたときには、まさかこんなに手をかじかませて食べることになるとは思わなかったはずだ。


 建物に戻ると、その暖かさにほっとする。エスカレーターを降りていくと、そこにはずんだ茶寮。就職する前に、仙台に旅行に行ったときに食べたずんだシェイクを、もう一度飲んでみることにした。さっき、どこでも食べられるアイスを食べたことを少し後悔しながら、生クリームとずんだの味わいに舌鼓を打った。


 京急で都心へ戻ろうとしたところに、「第1ターミナルへの連絡通路」という文字を見た。1タミのデッキからの写真を見たことはない気がするなと思いつつも、一応行ってみることにした。


 「北ウイング」という看板に中森明菜を感じながらデッキまでのぼると、そこにはA滑走路がある。第2ターミナルのデッキより滑走路が近いので、離陸していく飛行機が大きく見える。結局ここでも1時間ほどカメラを構えて、手足がすっかり冷えてしまった。


 第1ターミナルには結婚式場があるようで、前撮りをしているカップルがいた。恰幅のいい男性に、超小顔の美形な女性。こんな嫁さんもらいたいよなあ、俺のほうがもうちょっとおしゃれなのにな、とつぶやきそうになるのをこらえて、空港を後にした。


 なんとなしに五反田まで出て、歩いている間に見つけたカレー屋に入った。おいしいとは思うのだが、最近、食に感動しなくなった自分がいることに気づいた。正月に実家で食べたおせち料理や、母の作る食事などはおいしいなあと思うものだが、それ以外は、想定の範囲内か、それをやや下回る味のものを、ただひたすらに、生きるために口へ運んでいるだけのような気がしてしまう。


 いつからこんなに幸せを感じられない体質になってしまったのだろう。

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