駆くんとダンジョンとゆかいな仲間たち
マツダ
第1話 駆くんとゆかいな幼馴染ロリ1
三年前。
二◯××年、東京。
ついでに、世界。
突如として発生するようになった異界、通称ダンジョン。
世界のあちこちで無作為に発生するダンジョンゲートは当初、人々を大いに困惑させる。
だが、物こそ持ち込めるものの、ダンジョン内のあらゆる物質・現象はダンジョン外に出ず、ダンジョンで死んでも自動でゲート前にリスポーンすることがわかった。
しかもダンジョン内では個人の鍛錬(適当)次第で魔法とかが撃てるようになる。
それ以降、ダンジョンは世界最大かつ最高の遊び場となった。
なお、大通りのど真ん中でも構わずゲートが発生することから、ダンジョンへの意図せぬ侵入を防ぐためにゲート周辺はポールとかが置かれている。
ここ東京でも観測されているだけで数千から数万のゲートがあるらしく、ポールの数もウン万を超えるわけだが、意味不明なクソ路上工事で迂回に慣れている東京都民は「似たようなもんじゃね」と言う具合で、間もなく適応した。
民とは所詮そんなもんである。
そしてとある春の日――
「今日は僕、主人公のかがみんこと各務原駆が、幼馴染のつくしちゃんと五年ぶりに再開する日さ」
「お前は地の文か?」
「楽しみだな~」
ゆるい天パの黒髪でヘラヘラとしたイケメンが本作の主人公、十五歳高校一年生の各務原駆である。
柔和な表情は天然のスケコマシであり、女性のゲート(直球)を即開かせられるヒモの才能持ちだ。
そしてその隣を歩く冷徹フェイスの黒髪メガネが駆の幼馴染、友崎友也。
三白眼でキツイ目つきのくせに姓名に同じ漢字が入っており、どうにもバカ臭い。親の顔が見てみたいもんだね、とは幼馴染の駆の弁である。なお当然駆は友也の親と顔なじみである。
「つくしちゃん遅いな~。待ち合わせから十五分過ぎてるよ。一発楽しんでるのかな?」
「逆ピンサロかよ。普通に迷ってんじゃねえの? ごちゃごちゃした新宿の中でも新宿駅南口ってわかりにくい部類だろ」
「今の新宿はもはや魔界都市〈新宿〉と言っても過言じゃないからねぇ」
「現代ダンジョンの開祖たる神作の名を出すな」
すると改札から、平均的な成人男性に前後を挟まれて苦しそうにしながら一人の少女がはみ出てきた。
「ぷは、人いすぎ……」
「うお、つくしちゃん」
「駆くん! ごめんね駅で迷っちゃって」
「いいよいいよ。それにしても男の人の間からボロっと出てくるんだからビックリしたよ~。あの兄ちゃんが脱皮したのかと思った」
「虫の世界観を直で人間に当てはめるのはやめろ」
「あ、友也くんも。二人とも久しぶりだね」
少女がにこりと笑う。
一四五センチになった小学五年生をピークに、背も胸も一切成長していない彼女は星崎つくし。ハイエースまっしぐらな茶髪ツインテールロリは、五年の月日を空けてもなおその健気な可愛さは健在であった。
「それにしても、本当につくしちゃん……?」
「え、そうだけど?」
「いや小学生じゃんもしかしてつくしちゃんタイムカプセルに入ってグオァ」
「何学生だって?」
「ひょ、ひょーがくせムゴァ」
「何学生だって?」
「ど、どーみても高校生でしゅ……」
「よろしい」
「再会三十秒で顔面パンチかよ。しかも二発」
「うん……この威力……成長を感じる……」
「他のことで成長を感じられねーのか」
そう言ってじっと見つめる友也。
「無理か」
「死ねぇ!」
「ほがぁぁ!?」
ギャグ漫画よろしく蹴りが顔面に炸裂し、ボレーシュートの如き勢いで友也は転がっていった。恐るべき威力。
つくしはミニスカだが、ギリギリでパンツは見えない。
「うん。蹴りの時にパンツ見せるべき派と見せないべき派がいるんだけど、僕は基本見せないべき派だね。だってパンツは他の時に見れば良いんだよ。蹴りの時にパンツが見えたらパンツに目が行っちゃうでしょ? それじゃあ本末転倒なんだ」
「新手のセクハラやめてもらえる?」
「それにつくしちゃんのパンツは子供パンツだから、見えると余計に犯罪臭いよね」
「誰が子供パンツじゃあああ!」
炸裂する顔面パンチをひょいと避ける駆。
「仏の顔も三度までってね」
「じゃあ残り一発当たりなさいよ」
「え、てか子供パンツじゃないの?」
「そりゃそうよ。今日だってばっちり黒のTバックなんだから」
「なるほど。涼しそうだね」
「うん。ほらっ、久しぶりの再会、でしょ? わたしのあ~んまりの魅力にぃ駆くんが即オチしちゃったらぁ……って考えるとその後のことも見据えてぇ準備しとかなきゃだし? って聞くなバカああああああっ!」
「褒美ッ!」
もじもじくねくねしていたかと思ったら突如繰り出されるアッパー。格闘技と見紛うほどの緩急に、駆は為す術もなく宙を舞った。
――
「で、KOってか」
友也が戻ってくると地面で伸びている駆と肩で息をしているつくしがいた。
「はぁ、はぁ……なんか駆くん、バカに拍車かかってない?」
「久々だからそう見えるだけだろ。あいつは変わらずだ」
「え、真顔なのに涙流れてるよ?!」
「PTSDだな」
駆がむくりと起き上がり、爽やかスマイルを浮かべる。
「友ちゃんと僕は二人三脚だからね」
「切り落とした方が自由に動けそうな足だな」
「ところでつくしちゃんも来たし、そろそろ行こうよ」
そう、三人はここ新宿南口――正確には国道二十号にはみ出た場所――に出来た超邪魔なダンジョンを『破壊してほしい』と言う依頼を受けて来たのである。
最も、依頼を受けたのは駆の運営するサイト『かがみんのダンジョンおうち制作請負部』通称建築の依頼フォームから来たものであり、友也はいつもの付き添い。つくしは今日東京に戻ってきたのだが、ついでに一緒に行きたいとせがんできたのを駆が許可した。
この意味不明なサイト名だが、ダンジョンでおうちを制作したいがそれを代行してほしいと言う酔狂はなかなか居ないため、実態は何でも屋である。
「確かに邪魔だよねぇコレ。ルミネの前だよ? もう入口かと思っちゃうよね」
「歩道を挟んだ車道側に入口があってたまるか」
ダンジョンの入口があるため車道の一車線が規制されており、中途半端なところで車線が減少しているため渋滞が止まない。
今もクラクションがパーパーと鳴っている。
「つってもなぁ……ダンジョンの破壊……うっ胃が」
友也が心労をフラッシュバックし、顔面が青白くなる。
「まぁ今日は初日だし、テキトーに中見て回ろうよ。つくしちゃんはダンジョン初めてだっけ?」
「うん。愛知にいる時は、危ないからやめなさいって」
「じゃあ僕がつくしちゃんの初めてか~。光栄だねこりゃ」
「そそそそそそうなんだよだからししししし下着も気合ををを」
「何の話してんだお前ら」
「あ。わたし3Pの趣味はないんで。貴方は帰ってください」
「勝手にやってろ! 大体駆一人でまともにダンジョン回れるかよ」
「そ~だよ~。友ちゃんは俺の右足だからね」
「まだその二人三脚続いてんのか」
駆がゲート横の警備員に近づく。何でも屋を営む駆は色々な意味で有名であり、ここの警備員とも顔見知りだ。
「二人とも~、行こー」
「はーい」
「……」
軽くスキップするつくしとは対照的に、友也の足取りは重い。
その理由は後ほど明らかになる――
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