誰かに求められたい

凪風ゆられ

自身をエンタメとして摂取

 彼女にフラれて自分について考える時間が増えた。

 

 きっかけは気持ち悪いもので、未練がましくも臆病な僕はただ彼女とのやりとりを見返していたことにある。

 

 lineの画面をゆっくり過去を思い出すようにスクロールしていた。

 最後まで読み終わって自分は気付いてしまったのだ。

「自分って、こんなに気持ち悪いことしてたんだ」って。


 話の途中で既読が付かなくなり、何十件とメッセージを送りつけている自分。

 興味なさそうな態度で返事する自分。

「嫌いになってほしい」と本人に送り付けた自分。

 相手のことなんて結局考えてなかった自分。


 メンヘラの才能あるかもね。ハハハ。

 誰かと一緒にいるにはあまりにも醜い性だよな。


 そんなことを考え続けて約一年。

 正直、気が狂いそうだった。

 

 自己分析、あるいは現実逃避を続ければ嫌でも自分の醜い部分が見えてくる。

 その度に欲と性格の乖離を思い知らされた。


 日常生活であれば特に問題ない。ふとした瞬間に考えてしまうだけで済む。

 問題なのは、元カノ(と呼べるような関係にあったとは思えないが)を遠近問わず目視したときだ。


 あれこれ考えた後、自分が悪いという結果に着地する。その事実は当たり前すぎて言い訳もできないのだが、精神状態のほうがイカれてしまうのである。


 感情に支配されやすい性質を持つ自分としては、心の平穏を保つのは義務である。

 しかし、視界に一瞬でも入れば、未練がましく相手のことを考えてしまう。

 気持ち悪いね。

 

 そんな日常を過ごしていくと、やがて自身の在り方にまで疑いの目を掛けるようになっていった。


 性格。思考法。態度。感受性。言葉。存在意義。


 考え始めればキリがない。それでも、考えて考えて考えてしまう。

 あるのは自己嫌悪と後悔だけ。


 全てを愛して欲しかった。

 肯定してもらいたかった。

 受け入れてもらいたかった。


 その無意識がこのざまだぞ。

 

 今さら自覚したところで遅いのは分かってる。

 でも、考えちゃうんだ。


 もしあの時、自分自身について理解していればって。

 

 学生のうちに知れてよかったじゃないか。

 心の中で思ってみるけど、やっぱり浮かんできてしまう。

 

 気が付けば僕の中は「なんで?」で埋め尽くされている。


 誰かといたい。誰かと話したい。誰かに好かれたい。誰かに求められたい。


 「誰かに」あたる部分は誰でもいいわけじゃない。

 だいたい頭の中で浮かんでる。


 なんかそういうとこも嫌だな。


 そして、ここに至るまでのことをメモに残し後で見返す自分。

 自分のことなのに、まるで似ている他人の経験談を読んでいる気分になるの。


 それもまた嫌悪する。

 

 思考 嫌悪 思考 嫌悪 思考 嫌悪 思考


 小学校の男女一列みたいに交互に永久に続いていく。


 いくら時間が経っても、考えても、嫌悪しても、終わりが見えない。

 自分が生きている限り終点に着くことができない。


 年相応の思春期的思考に陥っているような気がするけど、これが精一杯。


 自身の価値が分からなくなって、路頭に迷いたくないから取り敢えず描いてみる。

 誰かに知ってほしくて描いてみる。


 でも、誰にも見られず、埋もれていくんだろうなぁ。

 まるで、人生みたいだね。

 自分の行いが他人の行いの下敷きにされていくの。

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誰かに求められたい 凪風ゆられ @yugara24

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