恋、ひらり

とろり。

第1話 ため息



 シャボン玉はすべてを虹色にうつし出す。

 それなのに――


 校舎の屋上で山田真理やまだまり中村彩花なかむらさいかはシャボン玉を飛ばしていた。

「ねぇ、真理」

「何?」

「ううん、何でもない」

 彩花は少し俯きながら言った。真理はそんな彩花を心配そうに見つめる。

「気にしなくていいよ。私、好きで彩花と一緒にいるんだし」

「でもさ、私って評判悪いでしょ? 私と一緒にいたら真理までいじめられちゃうよ……」

「それでも私は――」

 1時間目のチャイムがなった。真理は言いかけた言葉を飲み込んだ。

「私、行くね。彩花はどうする?」

「私はここにいる」

 彩花の居場所は数ヶ月前からこの屋上になっていた。いつもひとりぼっちだった彩花に声をかけたのは真理だった。小学校が同じで、中学校も同じ。そして今、同じクラス。幼馴染みと言えばそうかも知れない。

「放課後、また来るね」

 真理は彩花にさよならをして教室に向かった。

 彩花は空を見上げ、移り行く雲を目で追い、ひとりぼっちの屋上で小さくため息をついた。



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